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アネット


 香辛料屋のジミーが商業ギルドに提出する書類の打ち合わせでお城に来ている。


 「会長まじで城住みですか。何者なんですか?」


 「気にしないで。仮住まいだから」


 「いや、普通仮住まいもできませんって」

 さっきからジミーが部屋のなかをキョロキョロ見ている。


 「ところで、商業ギルド長との面会はセットしていいですか?」


 「ジミーが説明してもダメだったんでしょ。あなた信用ないのね?」


 「違う違う、外国からの資金を受ける場合は面会を依頼される場合があるんです。

 あと、取扱品目が建材や生糸など香辛料以外の追加があるから確認がいるって言われましてね」

 ジミーは必死に説明している。言い分は分かる。


 「分かったわ。ギルドの閉鎖性は嫌と言う程、理解してるもの。協力するわ、当日は同席してね」


 「恩にきます。日程が決まったら連絡します」

 そう言ってジミーは帰って行った。


 やれやれ、出来れば関わりたく無いな。


 ◆


 今日は来る時に見えた巨大寺院をカルラと観光する。


 前の世界にいた時にテレビで見たミラノのドゥオーモに似た外観だ。なんかツンツンしてる。


 なかに入ると大きな礼拝所があり、天井まで細部にこだわりが見える作りだ。


 「ここは一心教の聖地に当たります。国外からも多数の方がお祈りに来るんですよ」

 カルラが熱心にお祈りしている。


 宗教にこれまで関心は無かったけど、ここに来ると神聖なものを感じる。


 礼拝所の座席に座って建物内を見ていたら声を掛けられた。


 「ここには初めて来られましたか?」

 寺院の服を着た女性が立っていた。


 「はい、特別な感じのする場所ですね」


 「そうですね。日常とは隔離した世界に感じますが、ここで気持ちを切り替えてまた頑張ろうって思えたりする、心の拠り所になれれば嬉しいですね」

 

 素直だから信じてしまいそうだ。心に響く。


 「分かります。素晴らしい場所ですね」

 あれ?あっさりと離れて行った。勧誘じゃなかったんだ。なんか恥ずかしい。。


 「あの、お名前を聞いても?」

 コゼットは自然と身体が動いていた。


 「ここの寺院の統括をしているアネットです」


 「私はエスクバードから来ましたコゼットです」


 「まあ、もしかしてあなたが賢者様」

 また称号が増えたぞ。視線が指輪を追っている。


 「国王様から賢者様に会ってみて欲しいと少し前に連絡があったのよ」

 国王様の推し2人目ですね。


 「そうですか。ちなみにその賢者様と言うのは?」

 賢者様はさすがに呼ばれると恥ずかしすぎる。


 「ああ、賢者の指輪を持つ方の尊称です。前の所有者は中部の守護様でしたが、その前はこの寺院から輩出することが多かったのです」

 おー、そんな歴史が。


 「賢者の指輪の効果を引き出すのに、普段から治療を施している我々は適性があったのかもしれません」


 「勝手ですが我々はあなたのことを私たちの代表のように感じています。辛い時、投げ出したくなったときなど、どうかいつでもここに来て下さい。歓迎します」


 アネットさんは大きく温かい人だった。


 この日から毎日少しの時間、ボランティアに出かけることにした。もっとアネットさんたちを知りたくなったのだ。


 オベリスクでもいい出会いに恵まれた。

 


 


 

 


 


 


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