ライシャの皿
今日は昼から上層区画を回っている。
事前に用意していた買う物一覧で該当しそうな店をハンナから聞いていたので順調に買い揃えることができた。
ここまでのアメーヨの印象はなんと言ってもお茶だ。
ジャスミン茶や甘味の感じる上品なお茶など、この世界で初めてみたお茶がたくさんあった。とりあえずいっぱい買った。みんな待っててほしい。
さあ、お土産にハンナにお菓子でも買って帰ろう。
お菓子、お菓子ー!スキップしそうな上機嫌なコゼットであった。
何か美味しそうなお菓子がないか探しながら道を歩いていると鑑定眼が急に起動した。
びっくりしていると雑貨屋のなかの皿を自動でロックオンした。
ライシャの皿 本物・金貨10枚
え?1皿100万円ってこと?アメーヨって陶芸の産地なの??
店内に入ると黄緑色の美しいお皿が10枚あったので合計銀貨1枚で購入した。
全部を1万円程度で買ってしまったんだがいいのだろうか?
このお土産は、きっとアルバートが喜んでくれるに違いない。
通り道にあった揚げパンを浮いたお金で多めに買って宿屋に戻った。そろそろ、エリックさんとの会食の時間だ。
ロビーで待っている間にハンナに手土産を渡した。喜んでくれてよかった。場所は宿屋かと思ってたら、馬車が来てお店に案内された。
大通りから上層区画に向かい、中に1本入ったところに可愛らしいお店があった。
お店に入ると貸切だった。エリックさんだけが店内にいる。
「わざわざここまですみません」
「いえ、私こそ急なお願いでご迷惑をおかけしました」
エリックさんは常識人なんだよな。
席に座るとコースが始まった。
「コゼットさんが商人とは知りませんでした。資源の再利用をされていると聞いて驚きました」
先日の守護との会議で出た話を切り出した。
「ええ、捨てるのが勿体無い物もありますので一部ですが商品化しております」
「社会的な意義は大きい素晴らしい事業ですね。私は宿屋以外には陶芸品を製造販売しております」
ん?さっきの雑貨屋じゃないよね。。
「アメーヨって陶芸も盛んなんですか?」
「アメーヨの近郊にグラン村という陶芸の里があります。キングストン王国内では高級品のブランドの1つとして有名です」
「それは凄いですね。エリックさんも工房をお持ちなんですか?」
「はい。グラン村で代々陶芸をしている家系でこの地域の土が良質なのもありますが、先祖から培った技術の高さが売りの商会で品数を増やすことにチャレンジしています」
「ぜひ行ってみたいです!」
コゼットは目をキラキラさせてエリックに訴えてみた。
「来週だったら行く用事があるから一緒にどうですか?」言わせてしまった、申し訳ない。
この後も陶芸話で盛り上がった。聞いてばかりで申し訳なかった。
◆
コゼットはグラン村で陶芸体験に苦しんでいた。
自分で思い描いたデザインの通り形が作れないでいたのだ。職人が隣で簡単に形にしていくのに自分にはできないのがすごく悔しかった。
当初は1時間の体験のはずが気がついたら1日やっていた。途中、エリックさんが帰りの連絡をくれたがここの村に残って修行したいと訴えた。
何度かの押し問答の末、エリックさんが折れてくれた。自分の家があるから自由に使っていいと鍵を預けてくれたのだ。
そこからは修行である。他の工房の人と同じ扱いで雑用も懸命にこなす。
全ては思い描いた器を自ら作り出すために。
修行服姿にも慣れてきた3ヶ月目ようやく納得できるものができた。
師匠が横から器を取り、色々な角度から見てくれる。
合格であった。
これまで厳しいことも言われたが、無事に師匠が認めた者にだけ渡す名入りの黄緑色の器を授かった。
感無量である。エスクバードに戻ったら絶対工房を作りたい。
師匠から貰った器の美しい色を見て、何かが引っかかった。
ライシャの皿だ!
「師匠、ライシャさんってご存知ですか?」
「お前ライシャを知らねえで免許皆伝か?修行をやり直すか?ああ?」
めっちゃ怒られた。この白髭ジジイ覚えてろよ。
「鬼才ライシャは早世の人だ。この村の名を広めた代表的な作家のうちの一人だ。未だに彼女を超える奴は出ていない。こだわりが強く、この世に残され流通した作品は少ないが見つかった品はキングストン王家が国宝として管理している」
なんですと!なんか凄い品だったんだ。
「師匠は持ってないんですか?」
「村で管理している皿が1枚ある。お祝い事や職人が自分の至らなさを知る機会として鑑賞する目的で特別に国から許可を得ている。お前も見ていけ」
「はい、貴重な物なので後で拝見します。ところでライシャの皿を私が持ってるって言ったらどうしますか?」
「は?お前には宝の持ち腐れだ。俺が預かっといてやるよ」
そんなはずはないので師匠は冗談っぽい返答をする。
収納袋からとりあえず1枚皿を取り出す。
「師匠、世話になったお礼です」
手に取った皿を見て何の冗談だ?とか言ってたけど、さすが師匠。違いが分かる男だ。
コーヒーでも淹れてあげようか?この世界ではまだ見てないけど。
プルプル震えて、皿を落としそうになっている。本物だと分かったようだ。
「お前、何者だ?」
「名はコゼット、ただの勇者であり商人さ」
どっかの決め台詞っぽく言ってみた。
コゼットはこの後、グラン村にあるライシャの皿を見て村を後にしたのだ。
陶芸って心を無にして打ち込めるのがいいよねって、通っぽいことを言ってみるのであった。




