窓ガラス
ルーカスと会議室で試走会の反省と今後の進め方について話をしている。
考える程、影響範囲が広くて最低限の事業が始められる規模をどうするかに頭を悩ませていた。
競技場の設営、賭け事を行うシステム、キングホーンの飼育、騎手の育成等だ。
話しているとあっという間に時間は過ぎて、アシュリーさんが定例の月次会に来てくれた。
「聞きましたよ。また私を除け者にして楽しいことしてるんでしょ」
「そんな訳ないですよ。今回は王妃様からの依頼でどうしようもなかったんです」
試走会のことだよな?アルバートの料理屋の件を事前相談しなかったイメージを払拭せねば。
「今日は新たに始めたい事業があって相談したかったんです」
「コゼットは上手いわね。こんな時のために温めてたでしょ。ちゃんと色々話をしてよ。色々よ!」
「分かりました。今日相談したいのは新たに樹脂の商品を開発しようと思うんです」
「樹脂?元は植物から出るあれよね」
お、さすがアシュリーさん。
「そうです。先日、冒険者ギルドから樹脂が取れる魔物を貰いまして商品開発をしてきました。
建材に活かせないかを優先して考えまして、2つ思いつきました」
1つ目は、今は土を素焼きにして利用している排水管を樹脂製品に置き換えれないかについて。
2つ目は、窓ガラスの縁を樹脂製にすることで断熱性能を高めれないかについて。
「うん、製品サンプルをまずはお願い。イメージを共有したいわ。2つとも面白そうね。特に1つ目は上手くいくと対象はこのキングエスクバードの配管が全部置き換わる話よね。事業規模が格段に広がる話だわ」
「そうなんです。感触を確認しながら事業拡大していきたいです。
2つ目は窓ガラスを2重にするペアガラスとして商品化して暑い地域や寒い地域に売り出せたらと考えています」
「2重にする意味があると考えたのね。試験結果が楽しみね」
なかなか前向きな印象だ。よかった。まずはサンプルのハードルを乗り越えなくちゃ。
この後、いま進めている事業の報告をしてこの場は終わった。
◆
ドワーフのトーマスに会議の結果を共有する。
慌てなくていいから1つずつ事業化できる目処がついた方から取り組もうという話になった。
「嬢ちゃん、それだと窓枠を進めたいな」
理由を聞くとガラス製品を運ぶ際に枠があった方が破損しにくいと考えたようだ。
今も一定の割合で破損した製品が戻ってきている。
「そうね。一般品から高級品に変えることで再利用の商品であっても価値を高めれるかもしれないわ」
「じゃ、効果試験が第一優先でいいな」
「うん、まずは商品としての価値を認知してもらいましょう」
◆
今回は試行錯誤の上、サンプル品が出来上がったのでアシュリーさんとの会議だ。
トーマスも同席してもらう。レポートを渡して試験結果を見てもらう。
「うん、効果も高いし今までにない発想だわ。特許申請した方がいいわよ」
「はい、ガラス面に薄く貼ってる金属膜がポイントで簡単には真似されないと思います」
「素晴らしいわ。うちの高級ラインの家の窓に使うよう話をしておくわ。価格は言い値で大丈夫だから製品の仕上げをしっかりお願い。いつもの通りうちの職人との情報共有もお願いね」
「分かりました。調整しときやす」
トーマスも顧客の反応を見れて嬉しいようだ。
「この商品輸出もできるかもね。キングストンやヴェクスの北側は寒いから喜ばれると思うわ」
アシュリーさんがこの製品の可能性を考えてくれている。
「輸出ですか?アシュリーさんのところを通した方がいいですか?」
「うちはエスクバード内でしかやってないから直接取引して問題ないと思うわよ」
「でも、そうなると例のおじさまが出てくる可能性が」
コゼットは以前、商業ギルドで売り込みを受けた商会長の顔が浮かんだ。
アシュリーさんのところとの専属取引を盾に取引を開始しなかった経緯がある。
実際は無いのだが。
「そっかー、貿易取引まで始めたらそうなるわね。なんでうちはダメなんだーでしょ?」
「そうなんです。断る理由がなくなるんです」
「分かったわ。配慮してくれてありがと。貿易の話はまた考えればいいわ」
とりあえず、今まで通りになったが今後は考えていかないとダメかな。
とりあえず新製品の成功に全力を尽くす!




