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西の森の魔物

 私の目の前に冒険者ギルド長のジェイクが座っている。

 あまり見たくない顔だ。このおっさんが絡んで碌なことがない。


 「嬢ちゃん、大変だ。西の森にポイズンキャタピラーが巣を作ってるのが発見された。ズバッとやっちゃってくれ、ズバッと」

 ジェイクは身振り手振り大袈裟に言ってくる。


 奥から最近入った家事代行のウェイドがキラキラした目で見ているのが分かる。勇者への期待が痛い。。


 「だから、騎士団か冒険者の仕事ですよね?」

 コゼットは自分のことで精一杯である。いちいち助けていられない。


 「いや、まあ今回は前提条件が揃えば冒険者でも出来るっちゃあ出来るが勇者様がだな、こうズバッと、ビシッとやってくれると助かるんだが」


 「致しません!」

 コゼットは明確に意思表示する。とても大切なことだ。


 「分かった。じゃ、協力して欲しい。ポイズンキャタピラーの弱点は火だ。油が必要なんだが最近ギルドへの入荷が減っていて困っている。この店に売りにきたら融通して欲しい。樽1つ分くらいだ」


 ん?油??最近うちは在庫がダブついていたはずだ。ここは恩を売っておこう。


 「分かりました。ですが3日ください。頑張って協力しますので。ところで必要な分を集めたらあの樹木の魔物もう1体融通してくれませんか?うちの職人が癒されると大層気に入ってまして」


 「時間をくれるなら当てはある。じゃ、3日後だな。約束したからな」

 そう言うとジェイクは去っていった。


 「キーラ、油は在庫が多いってこないだ言ってたよね?」

 キーラに状況を念のため確認する。


 「ああ、あれなら古くなってもダメなので、いくつかの料理屋に在庫処分で結構な数売りましたよ。思ったよりいい値段で売れました」


 キーラは褒めて欲しいオーラを出しているがちょっと待ってほしい。


 「えっと、じゃ今は油の在庫はあまりないの?」

 なんてこった。かなりやばいんじゃないのこれ?


 「ええ、うちは特に油を在庫しておく理由はありませんから」

 確かにそうだ。しかし、今はまずい。


 「ちなみに冒険者は油をどこで取ってるんだっけ?」


 「確か、西の森の奥に油が取れる木があるんですが魔物が守ってるんですよ。冒険者はなかなか近づけないので、その木からたまたま落ちてくる実を拾ってうちの店に持って来てると聞いたことがあります」


 うーん、行くしかないか。嫌な予感しかしない。


 ◆


 翌日、場所を確認して嫌々出発することにした。フル装備である。


 付き添いにはウェイドが立候補したので一緒に行く。後で文句を言われても受け付けない。


 場外に移動して、下手な口笛で白い鳥であるほむらを呼ぶ。


 すると空から凄い勢いで降りてきた。来てくれるか不安だったので嬉しい。

 ウェイドは目をキラキラさせている。感動しすぎじゃないだろうか。


 乗せてもらって西の森に行きたいと言うとフワッと空に上がって大空を舞った。

 今回は近かったみたいで森の入口まであっという間だった。


 妙に森が静けさに包まれている。

 気持ち良いような、不安になるような不思議な感じだ。


 魔物が出てこないので、どんどん奥に進む。

 30分くらい歩くと目的の場所に着いた。最近はここまで来てなかったのか木の実がたくさんある。

 ウェイドが1つずつ実を割ってなかから油を木の器に移していく。

 それでも欲しい量を集めるのは難しそうだ。


 しばらくすると、奥から巨大な芋虫が出てきた。紫色の禍々しい体が糸を引いてこちらを襲ってきた。

 毒っぽいけど当たったらやばいかな?


 【短時間であれば大丈夫ですが、長時間は影響が出る可能性あります】


 気をつけて戦わないと。

 芋虫は意外に素早くて近づけない。どんどん糸を吐くので周りが毒の沼みたいになっている。

 このままじゃ、間接的に空気を吸ってやばそうだ。

 短期決戦するしかないかと思っていたら、上空に白い鳥の炎が旋回しているのが見えた。


 「逃げろってこと?」


 何かの合図かと思っていたら、上空で白い鳥だったはずが炎で包まれた。


 え?誰かにやられた?って一瞬思ったけど痛そうにしていないので違いそうだ。

 名前からも炎系の鳥だったのだ。


 低空飛行してきた炎は芋虫に向けて火を放つ。芋虫は炎を嫌がっているようだ。

 この隙をついて正義の剣が突撃を開始する。芋虫を切ったところから紫の液体が溢れる。

 芋虫の活動が止まるまで正義の剣は斬り続ける。


 芋虫が焼けた匂いとともに活動を停止した。


 流石に使えるところはなさそうなので死体はそのままにしておいた。


 戦いは終わった。元の白い鳥に戻った炎に乗って街まで戻った。


 ◆


 「嬢ちゃん、西の森でポイズンキャタピラーがやられたぞ。油はいらなくなったんだ。この間の依頼はもう良いからな」


 うちの店に来て言いたいことを言って冒険者ギルド長のジェイクは去っていった。


 え?それってうちが油の在庫を余分に抱えただけってこと?冷静に考えると依頼された油の量にも届いていない。


 やっぱり、あのおっさんには関わってはいけないのだ。今回の収穫はウェイドの尊敬が更に高まっただけだった。


 在庫の件でキーラに怒られないと良いんだけど、とほほ。。

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