勇者誕生
私は今、沿道に向けて手を振っている。
恥ずかしすぎるので全身鎧を着て顔を隠している。
この間の砂漠で地龍を討伐した功績により勇者の認定をされたのだ。
大通りを王城に向けて、新たな勇者の誕生を祝して馬車に揺られて進んでいる。
勇者リアムが言ってたのはこれのことか。。
どこで何を間違えたんだろう。ただ、そんなことを考えていたら王城に着いた。
玄関に王様自ら出迎えてくれて、手をエスコートしてくれている。
流石に顔を隠したままだと失礼なので兜を抱えて挨拶をする。
40代くらいだろうか、思ってたよりがっしりした薄紫色の髪をした落ち着いた感じの人だ。
謁見の間に到着すると、真ん中の赤い絨毯を挟んで騎士がずらりと並んでいて、
その奥には文官たちが並んでいるのが見える。
王様が席につき、王妃様が隣に立つと楽器が鳴り始めた。
呆然としていると王様から話かけられた。
「ここに新たな勇者が誕生したことを皆と祝いたい。勇者コゼット、よくも誰もが討伐を諦めるような強者である地龍を討伐してくれた。そのまま、放置していればこの街も砂の影響をどれほど受けたか分からない。この国を代表して礼を言いたい。その功績に報いるために勇者の称号をあなたに贈りたい」
「ウオォーーーッ」
王様が言い終わると謁見の間が歓声でいっぱいになった。
勇者を証明するネックレスを首にかけてもらい式は終わった。
王妃様と目が合うと嬉しそうにウインクされた。後日お茶会で呼ばれそうだ。
文官が近づいてきて、この後の予定を言われた。
王様との食事会と舞踏会が予定されているらしい。勇者リアムの気持ちが完全に分かった。
次に来たら優しくしてあげよう。
控えの間で休んでいたら、食事の時間がやってきた。
何だこの人数は!100人くらいいるだろうか?目が回りそうだ。
王様の前の席を案内されて席についた。
王様の隣に王妃様が座り、私の隣には内務大臣のギャリソンさんがいた。
その他はよく覚えていない。
「以前からこうして食事の場を持ちたかったのだが、このような場になるとは思わなかった」
王様は嬉しそうだ。
「はい、私も以前からたくさんのご配慮をいただいており、1度お礼を申し上げたいと考えておりました」
コゼットは、王妃様やギャリソンさんの手助けに感謝していたが王様にお礼を言う場はなかなか持てなかった。
「しかし、そこまで強いなら商会の運営では勿体ない気もするな」
王様は、別にも何か任命しようとしているのだろうか?、それは困る。
「王様、コゼット嬢はただの商人ではありません。建物の廃材から木材やガラスの再利用して商品化するなど、当国の資源獲得の点からなくてはならない人物になっております」
ギャリソンさんがフォローしてくれている。素直にその評価をありがたいと思う。
「そうか、多才なのだな。そちらの方でも褒美がいるな。いくら用意しても足りなさそうだ」
上機嫌に王様が笑っている。とりあえず問題なくやり過ごせそうだ。
相変わらずお城の料理は美味しい。レベルが高いと感じた。
舞踏会は観る側で了解してもらえた。せっかくの機会なので試しても良かったがもっと小さな場から始めてみたい。恥ずかしいし、失敗したら先生に怒られそうだからだ。
夜遅く舞踏会が終わり、店まで送ってもらうと冒険者ギルド長のジェイクが待っていた。
「嬢ちゃん、本当にやったんだな。すげーな」
「いやいや、無理だと思って送ったんですか?死ぬところだったんですよ」
「いや、悪かった。だから褒賞持って詫びがてら遅くまで待ってたんだよ」
1つ目は炎だ。
口笛を鳴らせば迎えに来るようにしたから自由に使ってくれと言っていた。
使う人は少ないけど、他にも使う人がいるから重なる場合があるらしい。
2つ目は樹液を出す魔物だ。
魔物と言っても人への被害はほとんど考えられなくて工場で使って欲しいと言っていた。
希少な樹液だそうで高性能だそうだ。試してみよう。
「今後は勇者様をいじるのは難しくなりそうだな。また困った時は頼む」
そういうとジェイクは去っていった。次回は無いと思ってもらいたいものだ。
慌ただしい1日を終えて、何だか周りの自分を見る目が変わっていきそうで少し怖い。
無理せず、自分のできることをゆっくりやっていこうと心に誓った。




