魔物の討伐2
王都の大通りに人影もまばらな早朝。
奴は来た!
「おーい、嬢ちゃん。用意ができたぞ。忙しいんだろ?早く行けよ」
大声の主は冒険者ギルド長のジェイクだ。
何時だと思っている。私はまだ布団の中だ。
しかも、“早く行くぞ“じゃなくて“早く行けよ“ってどういうこと?
自分は行かないつもりじゃないか。
めんどくさすぎて体が動かない。
布団でゴロゴロしているとジェイクが建物に入ろうとして、正義の剣の結界に弾かれる音がした。
“まじでウケる。笑笑“
冒険者ギルド長が正義の剣に弾かれるってどう言うこと?
悪意があるってことじゃないか。これって、私は行かなくていいってことじゃない?
建物に入って来れないんだから、このままじっとしていればやり過ごせる。
布団を被り、2度寝しようとしたところでキーラが部屋に入ってきた。
「コゼット様、早くあのうるさいのを何とかしてください」
キーラの冷めた声が聞こえてくる。ああ、キーラは朝が弱い。この朝の不機嫌モードのキーラに逆らえる人類はいるのだろうか?大人しくベットから出て用意を始める。
入口にはルーカスが正義の剣を背中に背負って、自分の剣は左側に装備している。
剣が重いので昨日のうちに、コゼットはルーカスに同行をお願いしていたのだ。
建物を出て、城外に連行されていく。
場外に出てすぐのところに白銀の大きな鳥がいた。
「よし、じゃあ2人はこれに乗ってくれ。賢いから全部任せて大丈夫だ。名前は炎だ」
なんでこんな綺麗な白い鳥に炎なのかセンスを疑う。やっぱりジェイクとは合わないと確信した。
背中をよじ登って掴みやすいポジションで落ち着くと炎は急速に空に登っていく。
なぜか風圧を感じない。ものの数秒で大空を舞っている。凄い!
王城が米粒みたいに見える。意外に周辺に町が形成されているのが見えた。また行ってみたい。
森や川を超えて、しばらく進むと砂漠が見えた。
「そろそろかな?」
コゼットは砂漠と聞いていたので目的地かと思った。
「いえ、砂漠も何個かあるのですが魔物が出るとなると恐らくもう少し奥ですね」
ルーカスが指を目的地を指さして教えてくれる。
炎の背中から見る地上がどんどん視界が悪くなっていく。砂嵐のようだ。
しばらく進むと炎が同じところを周回し始めた。目的地に着いたのだ。
下が見えないからどうやって着地するのかと思ったら、私が乗っている側を下に傾けて振り落とした。
「NOー!」
さっきまでと違って風圧をモロに受けながら、真っ逆さまに落下していく。
これは死んだと諦め99%になったところで、正義の剣が飛んできた。
剣を掴むと落ちるスピードが徐々に緩まり、地上に着く頃にはタンポポの綿毛のようにふわりと着地できた。この剣の性能凄すぎる。
周りを見渡すといた!目が合った。岩のようにゴツゴツした灰色のトカゲ?龍?がこちらを見ている。
「ゴウゥワアァーーーーーーッ」
魔物の叫び声が戦闘開始の合図になった。
正義の剣が飛んでいく、私を連れて。相手も強いのか1撃では倒せず、何度もツノと打ち合っている。
時折、吐かれる火も正義の剣は真っ二つに切り裂いてダメージを受けない。膠着状態だ。
魔物は私を吹き飛ばした隙に、岩を魔物の周囲にたくさん浮かせて渦巻く壁を作り出した。
すると、その壁から岩がどんどんこっちに飛んで来て近寄れなくなった。やばい、消耗戦だ。
魔物との距離がどんどん開いていく。勇者リアムだったら何か打開策があるのだろうか?
このままじゃダメだ!
「神様ー!」
すると、周りの時間が止まりまばゆい光とともに神様が現れた。
「戦闘しているど真ん中に呼び出すなんて危ないじゃないですか」
時間止まってますよねと突っ込みたいけど今は我慢だ。
「危ないから助けが必要なんです」
「それで御用は何ですか?」
いやいや、見たまんまですよ。
「やられそうなんで助けてください。」
「分かりました。3つ叶えることになりますがよろしいですよね」
「嘘ですよね。2つ、2つでお願いします!」
「おすすめは3つですが仕方ありません。それで最後の最後のお願いは何でしょうか?」
最後強調した?
「ピンチになったら、神様と呼ぶので3つのお願いを聞いてもらえませんか?」
「分かりました。ですが、全宇宙神様協会にルール改定の申請をしています。承認されればルールが変わると思うので楽しみですね」
何ですと!なんだその怪しい組織は。そこまでしなくても!
このお願いが聞いてもらえなくなるのは困る。
そう言うと、神様は消えた。
すると、コゼットの姿に変化が現れる。
騎士の全身鎧を身に纏っていて、白銀の鎧に赤色のアクセントが所々あってかっこいい。
鑑定眼で検索したら、物理攻撃無効が付いている。無効ってすごくない?
しかも、オプションで魔法攻撃無効が付いている。これが2つ目の願いかな。
じゃ、この戦いを終わらせますか。
飛来する岩を避けながら、魔物に接近する。何度か岩が当たったがダメージはない。いける!
正義の剣に身を任せて敵にどんどん迫っていく。コゼットは渾身の一振りでツノを切り落とした。
ツノを切り落とされた魔物は、急に動きが落ちて反撃がほとんど来なくなった。
こうなったら、正義の剣が何度も相手を切り裂き追い込んでいく。
しばらくすると相手の活動が止まった。勝ったのだ。
疲れで地面にへたり込んでいると、徐々に見晴らしが良くなっていき、空に炎が見えた。
炎が地面に着陸するとルーカスが飛んできた。
「コゼット様、お怪我はありませんか?」
ルーカスは両手を掴んで心配してくれている。
「大丈夫です。怖かったですが何とかなりました」
この後、ルーカスとコゼットは敵を収納袋に閉まってやっつけた証拠を残した。
ジェイクに文句は言わせない。
疲労のあまり、帰り道は覚えていない。朝早かったし、すごく眠かったのだ。




