トーマスの悩み
街の外でみんなと木材の再利用の検討をしてから1ヶ月くらいが過ぎた。ドラゴンキラー騒動も落ち着き、平和な日々が戻ってきた。
テーブルにお茶とお菓子を並べて休憩タイムだ。キーラの言うとおり、人数を多めに同じティーセットを買っていて良かった。1人だけ違って疎外感を感じさせるのは嫌だったからね。
アルバートもだんだん仕事に慣れて来た。キーラが持つ層とは違う、マダム層を本人の意思とは関係なく開拓している。
「コゼット様、ドワーフのトーマスのこと聞きましたか?」
キーラが心配そうに聞いてきた。トーマスとは私と会う前からの知り合いだったはずだ。
「どうかしたの?」
前に会ってから特に何も聞いていない。
「木材の再利用の件、上手くいってないみたいで悩んでるみたいなんです。顔も痩けて本業でも失敗を繰り返してるみたいなんです。心配で」
「え?そんなことになってたの。顔でも出してみようかな」
なんか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
仕事を押し付けた責任がある。
早速、トーマスのところに向かうことにした。
最悪の場合、自殺とかしたら大変だ!
ドンドンドン
「トーマスさん、コゼットです。いますか?」
扉を叩いて呼んだが、返事がない。
仕方ないから、勝手に入ろう。
工房にいた!なんか燃え尽きたみたいに座ってる。
確かに重症だ、こりゃ。
仕方ない。これは神様を呼ぶレベルだ。
「神様ー!」
大声で叫ぶと、回りの時間が止まりまばゆい光とともに神様が現れた。
「なんか辛気臭いところですね」
なんだか、この神様会う度に口が悪くなってる気がする。
「で、今回はどうされましたか?」
せっかちな神様だ。
「トーマスの悩みを解消して下さい」
「煩悩の多い男のようで3つでは足りませんよ」
少し範囲が広すぎたか。3つで足りないって、笑っちゃいけないけど笑えてくる。
「依頼している木材の再利用に限定したらどうでしょうか?」
「2つです。。嫌な数字ですね。最近2を見るとイラッとするんですよね」
聞いてないことまで言わないの!
「では、それを叶えてください」
「大丈夫です。承りました」
「3つ目はピンチになったら、小声で呼ぶので3つのお願いを聞いてもらえませんか?」
もうパターンは理解している。コゼットはドヤ顔で依頼する。
「分かりました。聞こえなかった場合は許してください」
そんなことありなのか!無視する気満々だ。
すると、突然神様は消えた。
ちゃんとどっかのタイミングで話し合いを希望する。
トーマスは突然立ち上がり、恍惚な顔をしている。
さっきと全然違う。何かはしてくれたみたいだ。
取り憑かれたように作業をしているので、そっと帰った。多分もう大丈夫だろう。
◆
それからどれくらいたったか、トーマスが店に飛び込んできた。
「嬢ちゃん、俺はやったよ。出来たんだ。この世に神はいるんだな」
出来たのは嬉しいが、あの神様を信仰するのはオススメしない。
出来たのは試作用に3種類だ。
・家具用のボード
・断熱材
・防音材
特に断熱材と防音材はアシュリーさんのところの強みになると自信満々だ。
まずは専用の職人を用意する必要があることで一致した。
「嬢ちゃん、俺をリンク商会で雇ってくれないか?」
突然の申し出にコゼットは驚く。
「私は嬉しいですが、トーマスさんはいいんですか?」
「いいさ、新しいことにどんどんチャレンジしたいからな」
嬉しいが一抹の不安もある。今回みたいになったら、また神様に頼らないといけなくなる。
それでも、腕のいい職人は欲しい。気心知れていたら更によい。
「分かりました。よろしくお願いします」
トーマスと握手をして別れた。手続きはキーラにやってもらおう。
すると後ろで見ていたキーラから話しかけてきた。
「私もお城を辞めてリンク商会で頑張りたいです」
嬉しさのあまり、とっさに抱きついてしまった。
居なくなる不安で怖かったんだよ。
「ありがとう、キーラ。これからもよろしくね」
勝手に涙が溢れた。
コゼットにとって嬉し泣きは人生で初めてだった。
なんとか上手く回っている。従業員も増えて責任がいっそう重くなるのを感じていた。
第1章END




