新規事業
今日はお店を閉めて新しいオフィスを建てる場所にキーラと一緒に来ている。前からある建物の撤去に立ち会うためだ。
「アシュリーさん、あの方が言われていた魔導士の方ですか?」
「そうよ。建物の撤去は国が認めた魔導士である宮廷魔導士のなかから任命された専属の人だけが出来るの。凄いから見てて」
緑色のローブを着た魔導士が黒い魔法陣を描き出した。なんかかっこいい。
「バニッシュ」
呪文を唱えると薄い黒色の膜が建物を包み込む。
止まったかと思ったら、徐々に小さくなっていって最後は建物ごと消えた。凄い!建物が消えた、どこに行ったんだ?
ん?終わりじゃないらしい。
今度は茶色の魔法陣を描き出した。
「アース」
建物の跡があった地面を茶色の薄い膜が覆う。
止まったかと思ったら、輝いた。
更地に戻っている。ファンタジーだ!
「凄いです。あっと言う間に綺麗になりましたね」
キーラも驚いたようだ。
「何度見ても驚かされるわ。時間をかけず綺麗になるから助かるのよ」
アシュリーさんが魔導士に紹介してくれるようだ。
「こちら依頼人のコゼット。最近、不用品の買取をするお店を始めたんですよ」
「マタイじゃ。おお、聞いたことがあるの。冒険者が受付の嬢ちゃんに熱を上げて通ってるらしいじゃないか」
店の事業よりキーラが有名なのか、まだまだ頑張らないと。
「消えた建物はどこに行くんですか?」
「実はワシにも分からん。しかし、出すことは出来る。どのくらいの期間有効かは分からんが」
収納袋の親戚みたいな魔法かな?
「お願いがあるんですが、実は建物を廃棄する際に出る木材の再利用が出来ないか考えていて、そのアイデアを整理するのを手伝って欲しいんです」
コゼットは撤去だけではもったいなく感じていた。
「新しい事業になるじゃろうから、事前に内務省に相談が必要かの。許可さえ出れば手伝うのは喜んでしよう」
ありがたい。アシュリーさんに手伝って貰おう。
アシュリーさんのお兄さん内務大臣だしね!
◆
アシュリーさんの動きは早かった。
翌日、内務省での昼食の時間で話を聞いて貰えることになった。
コゼットは昨日の建物の撤去を見た感想と木材の再利用について説明した。
「面白い発想ですな。ゴミを資源に変えますか。
景気が良くて木材の供給が追いついていないので、
実現すれば国のためになりそうですな」
お、好感触だ。
「問題はコストと再利用した木材の材質ですか。
それなりにハードルは高そうですな」
そこは分かっている。テストはちゃんとやりたい。
「内務省に企画書を申請して貰えたら、国の新規開発事業に認定しましょう。報告書は出す必要はありますが、補助金が出ますからやりやすいでしょう」
お金は大事だ。これはありがたいよ。
「あ、そうそう外務大臣がコゼット嬢に感謝してましたぞ。ヴェクスとの貿易トラブルを仲裁したとか。会いたがっておりましたよ」
なんか綺麗に言って貰えた。大変だったんだよ。
「乗りかかった船と申しますか、事故に巻き込まれたと言うか大変でした」
コゼットは苦笑いで答える。
この後、アシュリーさんに教えて貰いながら内務省への手続きを完了させて、無事認可された。
さあ、頑張らないと!




