表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/187

出会い

 小さな雨が降る少し肌寒い気候のなか、母親と渋谷の中心を歩いていた。


 今は中学校の入学式の帰り道で普段は少し濡れるくらい気にならないが、新しいブレザーの制服が濡れるのが気になって早く帰りたかった。


 「中学に入ったんだし、新しい塾を見つけないとダメね」

 母親はあちこちに見える学習塾の看板を見てどこがいいか考えているようだ。

 

 小学校の4年生から塾通いを始めて、努力の末にやっと私立の中高一貫校に受かって受験が終わったばかりなのだ。残念ながら親の決めた第一希望には受からなかったが。。


 その間、友達と自由に遊ぶことは出来なかった。せっかく、中高一貫校に入ったのだから青春を謳歌したい。自由に遊びたいそれが本音だった。また塾に縛られるはもう嫌だった。


 歩いて5分だった小学校時代の通学が、中学になって電車で1時間に伸びている。

 1人で電車なんかこれまで乗ったことがなかったのだから、乗り換えですごく緊張する。

 自由になる時間も1日2時間減っているのだ。

 

 同じ小学校の友達は誰もいないので友達はゼロからだ。

 附属小学校があるせいか、教室では半数くらいが既に友達がいて乗り遅れた感を感じさせられて気疲れしていた。


 環境が変わってストレスフルなのにこれ以上ストレスを増やさないでもらいたい。


 天気が悪いせいか、思考まで悪いループに落ちていた。

 

 “あぁ、どこでもいいからこのストレスフルな縛られた世界から抜け出したい“


 こんなことを考えながら、母親から話が振られた時は適当に返事をして帰路についていた。


 家に着くと真っ直ぐ自分の部屋に向かった。

 父親の声が聞こえた気がするが疲れているのだ、許してほしい。


 ブレザーに皺がいかないようパジャマに着替えてハンガーに吊るす。

 初めての制服なので着るのが嬉しくて大事に扱っていた。


 ベッドにダイブして、お気に入りのぬいぐるみに抱きつく。


 私はあっという間に眠りに落ちていた。


 ◆


 私は夢を見ないタイプだ。


 自分が見た夢を覚えていたことがない。

 なのに白い霧のなか、目の前に見知らぬ男性が立っている。


 「初めまして、あまがせひなたさん」


 オールバックに黒いタキシードを着た40代の男性が優しい声で話しかけてくる。


 なぜか私の名前を知っていた。私の名前は天ヶ瀬陽葵。12才の女性だ。


 黒髪を鎖骨くらいまでの長さに伸ばしている。少しずつ伸ばそうとしている。身長は小さめで、女友達からはかわいい系だと言われていた。


 保育園の時が1番褒められた気がする。


 「人には一生で1度、生まれ変われるチャンスが誰にもでも与えられます。大半の人は変わらないことを選択して私との出会いを忘れてしまいます。生まれ変わる選択をした人は異なる世界に行きますのであなたの世界で私を知るものはおりません」


 「私からの質問は1つだけです。異なる世界で人生をやり直すことができますが選択しますか?」


 目の前で起きていることが信じられなかった。どうせ夢なら面白い方がいいだろうと答えた。


 「やり直す選択をします」


 「分かりました。では、あなたには3つのギフトを与えます。希望を仰ってください」


 ギフト?漫画とかでよくある無敵の力とかのことかな?


 「今日、学校に行くときに荷物が重かったことが辛かったの。出し入れ自由で物がいっぱい入る袋とか貰えますか?」


 「では、亜空間に繋がる収納を差し上げましょう。イメージしますと魔法陣が浮かびますので入れたいものはそのまま入れてください。取り出したい時はその物をイメージすれば大丈夫です」


 「言葉が通じないのは困るわ。全ての種族との読み書きの意思疎通をできるようにしてほしいの」


 「基本的にはこれから送る世界の最初に出会う人との話は可能な設定ですがよろしいですか?」


 「はい、後から外国語を学ぶとか大変だから」


 “学校の英語もこれで完璧だ“


 「分かりました。希望どおりにいたします」


 「最後はピンチになったら、呼ぶので3つのお願いを聞いてもらえませんか?」


 「・・・・・」


 「ダメですか?」


 少し涙目になって縋ってみる。これから行く先がどんなところか分からない。

 断られたら仕方ないが言うだけなら無料なのだ。


 「今まで言われたことがありませんでした。反則な気はしますが、出来ることは叶えるのが私の役目ですのでお受けいたします」


 「ありがとう!」

 言ってみるものだ。すごくいい人だ。感謝だね。


 では、早いですが良い旅となることをお祈りしております。


 そう言われた後、ゆっくりと再び眠りにつくような感覚があった。


 やっぱり夢だったのだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ