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状況

「君たちは電車の脱線事故で死んだ、そこは理解してくれたかな?」

「…信じます。最後にある記憶の通りであれば、もう助かりようがないです。」

「私も同じです。奇跡的に助かったとは思えませんから。」

「…そうだね。君たちが乗っていた車両は特にひどかった。あの車両に乗っていた人たちは…みんな死んだよ。」

「他の車両の人達は生きているよ。君たちは…言い方はあれだけど運が悪かった。」

「……」

「……」



「とまぁ、死んだ原因はそんな感じ。」

「じゃあ第二に、ここがどこか。だよね?」

「…はい。」

「逆に質問、ここ。どこだと思う?はい、そっちの女の子。」

「…」

「…あの世、ですか?」

女の子はためらうように言葉を発した。

「うーん残念。あの世って言うわけではないかな。」

「でもどうなんだろう。人間の中で決められたあの世って曖昧だからなぁ。」

「ほら、よくさ。死んだら土に還るって言ったり、天に還るっていったり。人によっては死って真逆だもんね?」

「はぁ…?そうですね…?」

「ごめんごめん。話がずれたね。」

「あ、そうそう。先に二人の名前聞かせてもらえるかな?

「せっかくこうして会ったんだ。何かの縁と思って、ね?」

(ねっていわれても……)




ちらりと女の子の方を見た。

「…」

(ちょっと戸惑ってるかな…?)

(まぁ、初対面の誰とも知らん人に急に名前言うのって普通嫌だわな。)

(じゃあここは、うん。俺から名乗るか。)

「…双葉成美です。」

「きれいな名前だねぇ…どちらかというと女性よりの名前なんだね?」

「えぇ、よく言われます。」

「名前っていうのは特にどれだけ愛されながら生を受けたかがわかるものだからね。」

「いいおやごさんだったんだろうね。」

「…えぇ、とてもいい親でした。」

「うんうん、はい。じゃあ次。そっちの女の子!」

「…花音。白雪花音です。」

「お~、可愛らしい名前だね~!優しさあふれる、そんな感じがするよ。」

「…ありがとうございます。」

「二人の名前も聞かせてもらったし、僕も名乗ろうかな。」

(僕…か。どっちだろう。男?女?……わからん。)

「僕の名前はね、アトラっていうんだ。」

(アトラ……まじでどっちだよ…気になって仕方ないんですけど……)

「…あの。」

と、女の子、もとい白雪さんが手を上げた。

「ん?どうしたの?」

「えっと、あなたは男性なんですか?それとも女性なんですか?」

「僕?」

(あ、君も気になってたのね。)

「僕はね……どっちだと思う?」

「えっ…うーん……女性…??」

「成美くんはどっちだとおもう?」

「俺は……」

(どうだろう…言動的に男っぽいところもあるしたぶん…)



「俺は、男だと思います。」

「男かぁ…正解はね……」

「……ごくり」

「……ごくり」





「女、でした~。成美くんにはマイナスポイントを進呈します。」

「…すみません。」

「っしゃ!」

(今この子ガッツポーズした?結構茶目っ気あるんやね…クール系だと思ってたよ…)

「じゃあ成美くん、花音ちゃん。ここがどこかだけどね。」

「ここはね。今まで君たちが過ごしてきた地球、もっと広く言ってしまえば宇宙とは違う空間になってるんだよ。」



「……」

「……」

「うん、取り乱したりしない。いいね、君たち。とてもいいよ。」

「そしてもう察しがついてるとは思うけど。僕は神。」

「名をアトラ。」

「こうべを垂れろとは言わない。敬えとも言わない。でも一つ。」

「年上に敬語を使えないような人間ははっきり言って嫌い。そして喚き散らす人間も嫌い。」

「…」

「…」

「あ、ごめん。2つだったね。」

「君たちはその点とてもいい。敬語を使う、喚かない。会話ができるっていうのはなんと素晴らしいことか。そうは思わない?」

「ねぇ、成美くん、花音ちゃん?」

「…はい。」

「…そう、おもいます。」



「だよね。君たちさ、漫画とか小説って読む?」

「…読みますね。結構。」

「私も読みます。」

「僕もさ、結構日本の漫画とか小説とか読むんだ。」

「でさ、たまにあるんだよ。主人公が急に力を持ち始め、イキリ散らかし他者を見下すような言動をするってこと。」

「誰も彼もに敬語を使えとはいわない、年上にだってクソみたいなやつもいるわけだし。」

「そういうやつには敬語なんて使わなくていいとは思うよ?」

「でもさ、誰に向かっても他者を見下すような言動。あれってなんなんだろうねぇ。見ていて気持ちのいいものではないよねぇ?」

「感性があわないとかそういう言葉で片付けるのは簡単だけどさ。僕はそういうのはダメだと思うんだよね。」

「もし僕の前にそんな輩現れたって考えただけで……うん。抑えられる気がしないね。」

「あ、あはは…俺もそう思います。えぇまったくもってその通りですよ!うんうん!」

「私も同感です。」

(…俺、結構その手の主人公、大好きっす。神様すいません……)

「だよねだよね~!って会話に花を咲かせるのは別にいいんだよ!今は重要なお話をしなきゃ!」




「えっと、どこまで話したっけ?」

「…ここは宇宙とは別の空間で、あなたの名前がアトラ……様ってことを。」

「あぁ、そうだったそうだった。あと僕のことはアトラちゃん、でいいよ?」

「……アトラさんと呼びますね。」

「私もそう呼ばせてもらいますね。」

「…いいね、君たち。僕が様付けはいやってことを察して、でも神にはちゃん付けなんてもってのほか。」

「なら妥協ラインのさんづけ。いいね。とてもいいよ。会話がスムーズだ。」

なんか感心されたし。そんな意図があったわけじゃないけど…まぁいいや。

「本来なら死んだら魂は輪廻転生するんだ。」

「だけど、あの事故で死んだ数十人の魂を一度ここ、異空間に呼び寄せているんだよ。」

「数十人…」

「…」

(やっぱりそれだけ死んだんだ。)

「…あれ。じゃあ残りの人達はどうしたんですか?」

「順番。一人ひとり説明してるんだ。君たちは最後から二番目。」

「説明を終えた人たちはどこに?」

「それは後で話す。」

「…一人ひとりと言いますが、私は双葉さんと二人のようですが?」

「それだね。問題なのはそこ。僕は確かに一人ひとり魂をこの場に送り込んできている。」

「僕は今回成美くんをだけを呼んだつもりだった。しかし、花音ちゃんの魂も一緒に来た。」



「…」

「…」

「こんなことはもちろん今まで一度もない。でも、魂と魂が混ざっているなら話は別だ。」

「魂と魂が混ざる…ですか?」

白雪さんが疑問を口にした。

「うん、だって魂が混ざっちゃえば一つだもんね。一方を呼べばもう一方もついてくる。」

「ついてくるっていうか、合体してる状態だから。」

「合体…」

「まぁ魂と魂が性交してる的な?」

「…っ!?まじですか!?」

「…えぇぇ。」



俺、魂で童貞卒業、やったぜ。




(ってなるわけないじゃん…なんやねん魂の性交て…)

(ほらみてみぃ超絶美少女がこっち睨んできとるがな。)

「んっん…冗談はさておき、魂が一つになるとなにかまずいことがあるんですか?」

「あるね。魂が一つってことは命も一つ。どちらか一方が死ねばどちらかも死ぬ。」

「一心同体ってやつだね。」

「怪我とかはどうなんでしょう?私が怪我した場合双葉さんも怪我をするってことは…?」

「いや、それはないはず。怪我をするのはあくまで表面上。魂とはまた違ってくるから。」

「死んだときだけ道連れだね。」

「それといま二人には身体があると思うけど、その中には当然もうひとりの魂も入ってるからね。」

「今二人の体の魂は半々の状態。気をつけてね。」

「…?魂を半分に出来るのなら私の魂だけを取り出したりは出来ないんですか…?」

「無理、出来ない。1度混ざれば分離させるのは不可能。」

「考えても見て、単純に半分にするのと、完全に分離させて半分にさせるの全然違うでしょ?」

「…確かに。」

「…理解しました。」

「うん、いいね。納得するのが早くてとても助かるよ。」

「こうなった原因ってわかりますか?」

「…おそらくだけど。君たち二人は電車の中で近くにいたんじゃないかな?」

「事故が起こった際に魂と魂が合体しちゃうほどお互いがすごい勢いで激突した!てきな?可能性としては一番濃厚なんだけど。」

「…どうなんでしょう。ここまできれいな子なら覚えてると思うんですけど……ちょっと記憶にないですね。」

「…私もです。」

「う~ん。記憶がまだあやふやなのかな…?まぁ、それもおいおいわかると思うから。次のお話ね。」

「はい。」

「はい。」





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