【STAGE1】「"魚"ゲームオーバー」 変わる日常
暗い校舎に月日が差し込み、
"ソイツ"の姿が鮮明に見ることが出来た。
「なんだよ...コイツは...」
「いやぁぁああ!!」
こちらを見透かすような黒い小さな目。
銃の弾丸のような身体には不気味な三角形の背びれが着いており、
胴体の上部は暗い灰色。腹部は白と特徴的な色をしていた。
体長は約3メートルと大きく、
鋭利な正三角形の牙が無数に生え、その口からは赤い液体を大量に垂れ流しながら、人間の片腕を
ボキッバキッと音を立てながら頬張っていた。
これを俺達は知っていた。
人間にとって海での脅威。人喰いサメの"ホオジロザメ"(ホホジロザメ)だ。
1つ違うところといえば、
このホオジロザメの腹部からは"無数の人間の足"が生えていた。
「これが...サカ....ナ....ですか..」
翔太は踏ん張っていた足から力が抜け、その場に座り込んでしまった。
「嫌!...嫌...嫌...」
ミナミも目を強く瞑り、両手で耳を塞ぎながら身体を丸めていた。
「......はは」
強がっていた俺も他人事ではなかった。
足はガクガクと震え、今にもチビりそうだ。
「ぐぉぉおお!」
次の瞬間、じっとこちらを見ていた"魚"は
大きな口を開きながら、こちらに向かって勢いよく走り出した。
「!?お前ら、逃げ...
俺がそう言い終わるか終わらないかの出来事だった。
全身に激痛が走ると
座り込んでいたミナミと翔太。そして自分が
ホオジロザメの尾によって、吹き飛ばされた。
俺の右腕は逆関節方向に折れ曲がり、
肋骨は折れているのだろう。息が上手くできない。
そして、飛ばされた俺に向かって
大きな口を開けて向かってくる"魚"を意識が薄れながら俺は見ていた。
覚悟を決めた俺はギュッと目を瞑ると
ボキッっと言う鈍い音と激痛の中、意識が途絶えた......。
ザザッザザッ
「STAGE1 ゲームオーバー。ハンティング失敗です。次回は頑張ってください。」
ザザップツッ
静まり返った校舎に機械音声だけが響き渡った。
6/16 AM7:00
ピピッピピッピピッピピッ
いつも通りの決まった時間に目覚まし時計は朝を知らせる。
「うーん。......はっ」
俺は勢いよくベッドから起き上がると
見慣れた部屋。見慣れた目覚まし時計。見慣れた光景がそこには広がっていた。
冷や汗でびっしょりになった服は気持ち悪さすら感じた。
「あらたー?起きてるのー?」
階段下からはいつものように母の大きな声が聞こえる。
「昨日のは、いったい...」
夢だったのか?それにしてはリアルに覚えている。
タツヤ、翔太、ミナミの3人の顔。
身体に負った激痛。それに...意識が薄れていく死ぬ感覚。
バッ
俺は慌てて自分の身体を確かめた。
腕はいつも通り、正常な方向を向いており、
胸に痛みもなく息も通常と変わらない。
昨日、そのまま寝てしまった為か服装も汗で濡れてはいるが制服のまま、汚れも着いていなかった。
「夢...か...」
きっとストレスや精神的なものから変な夢を見てしまったんだ。と
俺は自分に言い聞かせながら、1階へ降りた。
そこには朝ご飯を用意して待ってくれている、いつもの光景があった。。
俺は皿の上に置いてある食パンを口に運んだ。
「そういえば、母さんと父さんは今日は帰ってこないんだよね?」
「何言ってんの?ちゃんと帰ってくるわよ」
「え?でも、今日は結婚記念日でしょ?」
「結婚記念日は明日よ」
「!?」
「ほら。食べたら支度して学校行きなさい。」
おかしい。結婚記念日は6/16の今日の筈だ。
昨日も話したし間違える筈がない。
そんな事を考えながら、俺は家を出た。
学校に着き、自分の席へ座るといつも通り、友人が俺の所へ来た。
「あらた。おはよー。」
「おはよ。」
「この前、教えたゲームの調子はどう?」
「?。昨日、もう辞めたって言ったよな?」
「え!?聞いてないんだけど!もう辞めちゃったの?」
おかしい。昨日、確かにこの場所で話した。
昨日のことを俺が忘れるはずがない。
「辞めたって言って、この場所で俺が見つけたゲームの話をしたよ」
「何?新しいゲーム?なんてゲーム?」
「ハンティング」
「聞いたことないなぁ」
ハンティング...。そういえば、昨日の夢の中でもその単語が出てきたよな。
友人と会話しながら俺はふとその事を思い出し、
自分のスマホを取り出し、ホーム画面にある「hunting」を起動してみた。
「!?」
すると昨日の画面ではなく別の画面に移動した。
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ニックネーム「アラタ」
【STAGE1】
スキル「観察眼」
成績:6/15ー「STAGE1"魚"」生存者なし:ゲームオーバー
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俺の額からは一気に冷や汗が出てきた。
「昨日のは夢じゃなかったのか...」
ボソリと1人呟いた。
その様子を見ていた友人は首を傾げると自席へと戻って行き、
キーンコーンカーンコーン
学校のチャイムが学業の始まりを知らせた。