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huntingーハンティングー  作者: Lotus
【STAGE1】
10/13

【STAGE2】「ターゲット"百足"」ペナルティ


ドクンッドクンッと心臓の鼓動が自分でも聞こえるくらいに感じた。


捕らえられた俺の顔の目の前に"百足"が覗き込むように顔を近づけた。


近くで見ると余計に気持ち悪い。

青白い顔色をして目の奥がぽっかりと空いているのだ。

長い舌を出したり引っ込めたりする口元はニヤリと口角が少し上がったようにも見えた。


だが、この時の俺に焦りはなかった。

心臓の鼓動とは反比例し自分でも驚く程、頭は冴えきり冷静でいられた。

打開策がある訳ではない。

死を受け入れている訳でもない。

目の前の"百足"に恐怖を感じていないと言ったら嘘になる。


だが、冷静でいられたことで

状況を把握することが出来た。

中庭を挟んで対面する廊下に"アイツ"はいた。


百足が俺の顔に向かって1本の手を伸ばした瞬間、


バンッビチャビチャ


伸ばされた手が弾け飛んだ。


「がぎゃぁぁあ!」


言葉では言い表せられないような叫び声を上げた"百足"は咄嗟に俺を握る手を緩めた。


この隙に!


もがいている百足から距離を取ると銃を構えた。


バッと振り返った百足は俺の方を向くと勢いよく走り出した。


バンッバンッバンッ


「ぐぎゃぁぁ!!あぁぁぁぁああ!!!」


対面する廊下にはスナイパーライフルのような銃を構えるタツヤがいた。タツヤはそのまま引き金を引くと百足が軸として使っていた下半身部分の腕を吹き飛ばした。


今のところ百発百中のタツヤはきっと「狙撃手」のスキルを活かしているのだろう。


俺は怯んだ百足の頭部に狙いを定めた。

乱れる百足に対し、頭部を撃ち抜くのは困難だ。

先程のように1発も当たらない。

だが、俺に迷いはなかった。

冷静になって的に対して集中すると

動き回る百足の次の行動が読み取れたのだ。


ここだ!と言うタイミングで俺は引き金を引いた...。


バシャッ


見事に弾丸は百足の頭部を撃ち抜いた。


その場に横たわる百足はピクリとも動くことは無かった。


「終わったのか...」


俺は離れた場所にいるタツヤにガッツポーズを送る。

タツヤもそれに答えてくれた。


これで今回のゲームもクリアすることが出来たのだ。


後はアナウンスが終わりを告げるのを待つだけだ。


ザザッ


アナウンスの電源が入る音を聞くと安堵した気持ちが一気に込み上げた。

だが、このアナウンスが俺達を絶望へと突き落とすのだった。



「制限時間残り15分となりました。ターゲットの殲滅を確認できていません。よって、ペナルティが与えられます。」


「は?」


ザザッ


「ペナルティ内容は"ターゲットの凶暴化"になります。では、頑張ってください。」


ザザップツッ


理解出来なかった。

ターゲットは死んだはずだ...。

だって、ほら...


俺は先程まで"百足"が倒れていた方を確認した


「!?」


そこに百足の姿はなかった。



視界の端の方にタツヤが慌てて窓を開けたのが入った。



「上だ!!!」

タツヤが俺に向かって精一杯叫んでいる。


俺は慌てて上を見上げると、

天井に張り付く"百足であったであろう"者が俺を覗き込んでいた。


その姿は先程の形状とは程遠く、胴体は真っ赤に変色し、

無数に生えていた人の腕は骨状に白骨化している。

そして、顔があった部分は横一線に割れ、不規則に並ぶ鋭い歯が沢山付いていた。



俺は慌てて銃を構えようとした瞬間、


ブチッ


「え...」


銃を握っていた右手に正確には"右腕"に焼けるような激痛が走った。


「ぐぁぁぁああ!!」


左手で右腕を押さえる。

血がドバドバと流れ出す右腕を。

右腕は"百足"によって肩から下が引きちぎられたのだ。


バンッバンッバンッバンッ


タツヤは百足めがけ何度も引き金を引いた。

その銃弾は全て百足の胴体に命中した。


「ギチッギチギチッ」


だが、百足は歯を鳴らしながら何事も無かったかのようにタツヤに注目することは無かった。


逃げないと......。コイツには勝てない。そう俺の直感が語っている。


俺は床を這うように百足から遠ざかった。


そんな格好の的を"百足"は逃がさない。

這いずっている俺に百足は勢いよく噛み付いた。


「がァァァァあ!!ぁぁああ!!」


きっと言葉にならない叫び声を上げていただろう。

身体中が焼けるような激痛の後、途中からは痛みも感じなくなってしまった。

グチュグチュと"百足"が俺の身体を貪っている音が自分にも聞こえる。

そして、次第に俺の意識は薄れていった...。


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