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狂人  作者: p-man
嘆き
7/9

篦棒に酷い

知らざあ言って聞かせやしょう。


刻を辿る事数周回。

怠惰も怠惰、泣く子も黙る親泣かせ。

金にがめつい天涯孤独。

連れへの借用八百万。

終いにゃ軒先荒らして輪っぱに掛かる始末。


成人を祝う通過儀礼。

い草ですら偽物の畳の上で執り行う。


金に困った私は、明日食う飯はおろか、今を生きるのも漸との有り体ときた。

ぼんやり見えるあったけえ白熱灯を横目で舌打ち、丑の刻を一人でうろんころん。


目に付きましたるわ行灯もねぇ閑散とした煙草屋。


腹ごなしに出たつもりが、急に紫煙吹かしてぇ気になりやして、腰をくの字に曲げ拾い上げる拳大の石っころ。


性善説など犬にでも食わせろと言わんばかりに、叩きつけるは窓硝子。

見事派手に音を立て弾け飛ぶ破片同様、猫が胡瓜見たみてぇに私もそこから弾け飛び、辺りを見回す事数分。


何も音沙汰ねぇってんで、男は度胸。

鍵位置にポカッと空いた穴から手を差し込み、施錠解いたら勢いついて中へと数秒。


まずぁ逃走経路を先決に、堂々と表口の施錠を解き、あとは悠々自適に中を物色。


慣れたもんってこたぁねえ。

いつ如何なる時もお天道様に顔向け出来ねえ行いは、拍動高くあるもんだ。


先刻までの余裕綽々な願望は真っさらに消え、目指すは会計所。


無ぇ。


昨今の防犯てぇのはしっかりしてやがる。


外と一枚隔てる窓硝子の下。

こんもり積もった煙草の束を両手一杯抱え上げ、これで観念と外へ出た。


昨今の防犯てぇのはしっかりしてやがる。


ものの数分でこの始末。

ほけっとした顔に赤色の行燈。


御用改め。

紫煙は勿論、武勇も吹かせちゃくれねえって顔向けられてあえなく腰縄。


才も金も無ぇ、女も希望も無ぇ。


だがツキだけは明々と、無様に垂れる頭を照らして在った。

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