表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂人  作者: p-man
嘆き
6/9

忌まわしい、情動

官能的怠惰。

今や何も手につかない。


私は部屋の中、橙色の灯りを浴びながら甘い唇を舐めていた。


傍らに眠る似て非なる存在。

ソレと重なった過去に私は溺れていた。


私は曲線美に傾倒する節がある。

内果から膝窩にかけて、捻るように舐め回す視線を送る。

露わになった下肢にまたもや情欲が騒ぎ立てる。


なんの予備動作もなく、不意に手を伸ばし触れてみた。

寝息を立て気付く筈も無いと高を括っての所業。

だが、起きたとて何ら責め立てられる事はないだろう。


先程迄それどころでは無い、濃厚を極めていたのだから。


寝息が変わった。

目を覚ましたのかと、私は不安と高揚が綯い交ぜになる。

しかし瞼を開く様相は観測できない。


その変動により、私の神経は萎えた。


急に薄ら寒くなったのだ。


時計の針が音を立てているのがわかる。


冷蔵庫のファンが回り出す。


外気の風から守られているはずのこの空間は、先刻までの橙色から、灰色に変色していく。


何なのかは理解出来ない。

だが今確実に感じる忌避感。


私はそれを消し去りたくて煙草に火を付けた。


まるで時代錯誤な細い紙巻煙草が、チリチリと音を立てて煙を燻らす。


よりにもよってこの行動が拍車をかけた。


私の吐く甘い紫煙が、彼の生理的反応を引き出したのだ。


だが、やっと、理解できた。


私は彼に明確な拒否を見たのだ。



三口も飲まず缶コーヒーに煙草を入れ、ジュッという音と共にベッドから立ち上がり、予想される外気を忌まわしく思いながらコートに袖を通した。


乱雑とした台所が今の私を映している。


不覚にも愛を感じた私には、酷くドアノブが冷たく思えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ