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3話 自己紹介


予想外の事態に俺は冷や汗をかきながらなんとかここから逃げ出す方法を考える。


「じゃあ俺はクラスに行くからこの辺で……」


完璧だ。クラスに行くから……何も不自然ではない。

当然のことだからこいつらを不快にさせることなくさらに無難な立ち去り方だから印象を植え付けない。

そしてこのままこいつらの記憶の中から俺は消える!


「あっねぇ! 違ってたらごめんなさいだけどレイって……あのレイ?」


あぁ……やっぱり噂ぐらいは知ってたか……


「どのレイかわからないが噂の才能なしのレイなら俺の事だよ。レイ・オオガミだ」


そう言うと俺は二人の顔色を伺った。

俺があのレイだと知ったらこの二人はどんな反応をするのだろうか。

やはり嫌悪の目で見てくるのかそれとも……


「そうか……」


そう一言呟くとルークは俺に手を差し出してきた。


「?」


そのルークの行動に意図がわからず俺が戸惑ってるとその姿がおかしかったのか二人が笑った。


「ほら、握手だよ。改めて言うぜ、これからよろしく頼む。それとも俺と友達になるのは嫌か?」


その言葉に俺は呆気にとられてしまった。

そしてルークの言葉の意味を理解すると目頭が熱くなるのを自覚した。

今までそんな事を言ってくれる人はいなかった。

ルークはまっすぐこっちを見つめていてその瞳を見れば本心で言ってることがよくわかる。


俺は思わず出てきてしまいそうな嬉し涙を堪えながらルークの手を取った。


「こちらこそ、よろしく頼む」


「ちょっと! 私を忘れてない? 私ともね!」


「あぁ勿論。リズもこれからよろしく」


それでも周りからの目は厳しくなるのだろうなと思いながらも俺は二人と友達になれた事を嬉しく思った。

こんないい奴らと友達になれるのなら周りからやっかまれてもいいかなと思える。

その後はいろいろ話しながら振り分けられたクラスに向かうことにした。

運がいいことにルークもリズも俺とクラスなようだ。


……前言撤回こいつらヤダ。

だって一緒に歩いてると注目されるんだもん。

目立ち過ぎよホンマにアカンて。

特にリズと喋ると周りの男から殺気を感じるし……

ルークがリズと話してたらそんなことはないんだぜ!?

イケメンはええんかイケメンは!?

くそうルークに飛び蹴り食らわせてやる!

とうっ!


「イタッ! 何するんだよレイ!」


「唐突にイケメンにムカついたのじゃ」


「なんでだよ……」


「なに馬鹿なことしてのよ」


ルークは呆れた表情を浮かべるリズは楽しそうに笑ってる


こいつらといると目立つがまぁでも悪くない。


そんなやり取りをしてると教室に着いた。


「ここか……」


そのまま3人で教室に入ってった。

まずルークが入っていき視線が集まる。(主に女子の)

そしてリズも入っていきまたまた視線が集まる。(主に男子の)

そして最後に……俺☆

誰だよと非難する視線が刺さって痛い。

もうヤダこいつら。


席はどう座ればいいんだろうと思ったら黒板に〈席は自由席〉とこれでもかというほどデカデカと書かれていた。

おかしいなー資料には座席表を見て座ってくださいって書いてあんだけどな〜

絶対これ書いた先生豪快な性格してんな。

あぁで、女子はルークを見ながらソワソワして男子はリズにチラチラとアピールしてるのか。

ルークはそれを全く気にせずにちょうど3席空いてる席を見つけ端に座った。

そしてリズは申し訳なさそうな表情をしながらストンとルークの隣に座る。

女子から落胆の声が上がった。

男子どもは慌ててその隣に座ろうとするがそこに俺が座る☆

ハイ男子から殺気ぶつけられまくりですわ。

えーっとこれから何するんだ? 資料に書いてないぞ? と思いながらキョロキョロと周りを見渡したら見つけた。

黒板の端に10:00からホームルームと書かれてるのを。

先生……バランス考えようよ……


そのまま3人でお喋りをしながらルークのイケメンにムカついたり男子どもから殺気をぶつけられつつ10時まで待った。

すると教室のドアが開き俺たちの担任の先生であろう若い女性の教師が入ってきた。


「はいお喋りやめ! 私がお前達の担任になるライラ・リンドだ。よろしく頼む」


キリッと決めてザッかっこいい女性のような印象を受けた。

見かけが少女でなければ。

いやいやいや小さっ! え? 少女やん! 俺たちより年下やん! 嘘やん!


「さて、今私のことを少女と思った奴は名乗り出ろ。しばいてやる。私は25だ」


年上!? ありえないだろこの容姿で!

ハッこれがロリババア……


「今ロリババアって思ったやつは前に出ろ」


ステキなオネーサマ。


ギロリと睨まれて……背筋に悪寒が走る。

てかこっち睨んでね? え? 俺の考え読んでる?


「さて私が素敵なお姉さまということがわかったところでホームルームを始めよう。

まずは自己紹介だ。左端から順に前に出ろ」


なるほどまずは自己紹介……自己紹介……ジコショウカイ?

なんということだ! 入学イベント自己紹介を忘れてた!

やばいやばいやばいこれで失敗したらこれからの学園生活に支障が出るぞ!?

センス溢れる自己紹介を何も考えてなかった!

まずいぞ……どうしようどうしよう……


そう考えてるうちに俺の左隣、つまりリズの番になってしまっていた。

ルークの自己紹介とリズの自己紹介でクラスはどよめいていたがそんなことはどうでもいい。

くそっ……もう時間がない! 仕方がないここは無難な自己紹介で乗り越えよう。

本当はセンスあふれる自己紹介をしたかったが無難にすませれば変な奴と思われなくて済む……あれ? 俺もうすでに変なやつ認定されてね? ……気のせいだな。


すぐにライラ先生が「はい次!」と言って俺の番になってしまった。


「えーっとレイ・オオガミです。レイでもレイちゃんでもレイちゃまでもなんとでも呼んでください。

趣味は鏡を見ながら自分のかっこいい角度を探すことです。

よろしくお願いします」


どうだ! 完璧な俺の自己紹介は!


「お、おう……なかなか変わったやつだな。よし次!」


あるえ? ライラ先生に変わったやつだって言われちゃった。


ライラ先生が次と言ったが次のやつはなかなか自己紹介を始めなかった。

俺の自己紹介でクラスがざわついたからだ。


「レイてあの……」

「オオガミってあのオオガミ公爵家だろ?」

「その息子は落ちこぼれの才能なしって噂だ……」

「てか自己紹介寒っ! あれで面白いと思ってんの? 本当につまんないし気持ち悪い」


あぁやっぱり……まぁ覚悟してからそんなにダメージはないけどな。

まぁその噂が広まってるならこりゃもう友達できねーわ。

俺の学園生活友達はルークとリズで終。

まぁ二人ともいいやつだから悲しくなんて……ないもんね! 本当はちょっと悲しい。

あと最後の人の言葉は純粋にクリティカルヒットした。もう立ち直れないよ……


しばらくザワザワしていたがライラ先生が静かにしろとキレて自己紹介の続きが始まった。

だけども残りの時間は居心地の悪い視線に晒されてあまりいい気はしない時間だった。



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