2話 入学式
俺が入学式会場に入ると既に人が大勢集まっていた。
当然だ。開始時刻は9時……そして今は8時59分。
俺がくるのが遅すぎたわけだ。
実は遅刻しないように気合を入れて8時ぐらいには到着したのだが行きたくなさすぎて門の前で1時間ぐらいウロウロしてた。
「うん?」
席は自由席なんだが何故か1組の男女の周りを取り囲むようにして空いていた。
なんかよくわからんがラッキーと思って二人の後ろに座ると一斉に周りから注目を浴びてしまった。
おいおいそんなにこっちを見るなよ怖いじゃねえか。
いやん恥ずかしい。
あっお前らが一斉にこっち見たもんだから他の奴らまでこっちを見だしたじゃねえかよ!
クソっ! 俺が才能なしって知ってる奴らか? まさか話だけじゃなく顔まで出回ってるとは思わなかったぜ!
はっ! いやまさか俺が門でウロウロしてたのを見ちて人か? よく見たら視線がどことなく変な人を見る目に思える。
そりゃその目になるのも無理ないわ! 変な人なの否定できないもん!
そんなことを考えてると壇上に学園長と思われる人が上がり皆んなの視線がそちらに集まっていく。
危なかったもうちょっと視線に注がれてたら溶けて灰になるところだった。
「皆さんおはようございます! そしておめでとう! 見事このシェーンベルグ国立一級士官学園に入学することができるのを誇りに思って……この学園は……知識を……」
うむ。話が長い飽きた。
なげーよ爺さん若者の忍耐弱さを舐めんな!
あっヤバイ寝そう立ったまま寝そう。
ヤバイヤバイヤバイ……
[以上で学園長先生の挨拶を終わります]
ホッ……なんとか耐えたぞ爺さん!
残念だったな! 俺を眠らせるのにあとちょっとだったが俺は耐えたぞ!
[続きまして来賓の方々の挨拶]
……あかんわ寝よ…………
「……なのです。それでは皆さん有意義な学園生活を楽しんで学んでください」
はっ!? ここはどこ!? 俺は誰!? 名前はジョニー!
あっ話終わった? 長かったわ〜
さてさてもう入学式も終わり?
それでは皆さん各教室へ行ってください!?
俺どこの教室に行きゃいいか聞いてねえぞ!?
あっ事前に送られた資料に書いてあるって?
あっほんとやご丁寧にこの学園の地図にわかりやすく色付きで書いてあるわ。
んじゃまぁ行きますか……友達できるかな? ……友達……欲しい……できるか……不安……あっ足が……進まない……
俺が教室に向かおうとするが足が言うこと聞いてくれねえとふざけてる時だった。
「よう! お前変な奴だな!」
突然俺の後ろから声がかけられた。
☆
「さて……いよいよか……」
俺、ルークはもうかなりの人が集まっている入学式の会場に到着し空いている席に座った。
かなり後ろの方だからもう先頭の方はほぼ見えないのを少し不満に思うが仕方ないと諦める。
なぜこんな遅く来たのかと言うと騒がれるのが嫌だったのだ。
ナルシストっぽく聞こえてしまうだろうが実は俺はそこそこの有名人で早めに来たら絶対に騒がれてしまっていた。
だからギリギリ10分前に着くように調整してきたのだ。
そして周りを見てたら幼馴染のリズが会場に入ってくるのが見えた。
リズもこちらに気づいたようで笑顔を浮かべながらこちらに小走りで向かってくる。
さすがに周りの人は気づいたようだが開始まで10分もないからか騒がれずチラチラと見られるだけだった。
その程度は仕方ないなと思いながら式が始まるまでリズと話して時間を潰してる時だった。
誰かが時間ギリギリで会場に入ってきた。
おいおいもうあと1分もしないうちに式が始まるぞ! と思わず心の中で叫んでしまった。
それは周りも同じようでチラチラと俺たちを見てるだけだった視線が一斉にそいつに注がれた。
そいつはこんなに見られるとは思ってなかったのか驚いたたような表情を浮かべたがすぐに俺達の後ろへ座った。
それには周りも驚いたようでさらに強い視線を浴びせてそいつもさらに驚くという光景に思わず笑いそうになってしまった。
周りが驚いた理由は俺たちの後ろに座ったからだ。
俺達の近くに座っていたやつも俺たちに気づくと他の席へ移ってしまっていた。
俺は気にしないんだけど失礼になるとでも思ってるのかな?
でもそいつは普通に後ろに座ったのだ。
面白いやつと思って話しかけようとしたがすぐに式が始まってしまうのを思い出して前を見る。
しかし変な奴を見るような視線が多かったがなぜだろうか?
確かに変な奴だとは思うがそこまでか?
そう思ってたら学園長が壇上に上がって式が始まった。
「皆さんおはようございます! そしておめでとう! 見事このシェーンベルグ国立一級士官学園に入学することができるのを誇りに思って……この学園は……知識を……」
ヤバイ話が長くて眠くなる!
俺が眠気に耐えながら何気なくチラッと後ろを見たらそいつも面白い表情をして必死に眠気と格闘してるところだった。
それはもうコロコロと表情が変わって笑い声を上げそうになるのを必死で抑えた。
お陰で眠気が吹っ飛んだ。
[以上で学園長先生の挨拶を終わります]
やっと終わった……そいつのお陰でさっきは眠気は覚めたが再び眠気に襲われるところだった。
[続きまして来賓の方々の挨拶]
ゲッ……まだあるのかよ……
あっヤバイまた眠気が……そうだ!
また後ろを向こう! あの変な顔で再び眠気を覚ますことができるはずだ!
しかし期待してた表情とは違いそいつは無表情で立ってるだけだった。
なんだ? 眠気は覚めたのか?
少し残念に思って前を向こうとした時に気づいてしまった。
グーグー……
こ、こいつ立ったまま寝てやがる……
これには隣のリズも声を押し殺してクスクスと笑っている。
そんなこんなで来賓の方々の話も終わり式も終わろるところで目を覚ました。
あまりにもタイミングが良すぎてこれにはついに俺も吹き出してしまった。
なんだこいつ本当に変な奴だな。そう思いながら教室に移動を始めようとしたそいつに声をかけてみた。
「よう! お前変な奴だな!」
♢
俺は背後からかけられた声に振り返った。
そこには片手を挙げた見事なほど綺麗な金髪のイケメンが立っていた。イケメンが。
イケメンの野郎が。
それとピンクの髪の少女。
あらやだよく見たら可愛い小動物みたい。
ふーん変な奴が居たんだな〜と俺はそのまま教室へ向かおうとしたら
「おいおいおいおい! お前だよお前! 何シレッと教室行こうとしてんだ!」
あっ俺? なんだこいつ初対面の人間に変な奴って失礼じゃないか。否定はしないけど。
俺がジトーっとそいつを見てるとイケメンが笑いながら聞いてくる。
「なぁ名前は?」
「は?」
「お前の名前!」
それに俺は戸惑いつつ
「俺はレイだ。呼び捨てでもなんでも好きに呼んでくれて構わないよ」
俺が答えるとイケメンは嬉しいそうに笑い
「俺はルークって言うんだ! ルーク・フォン・アーベライン!」
すると少女の方も
「私はリズだよ! リズ・ライト・エアロッド! よろしくね!」
と名乗り二人とも握手を求めてきた。
あっどうもどうもと俺は握手をし気づいてしまった。
もしかして……もしかしてだけど……OTOMODATIになれる!?
あっヤバイ初めはルークのことこのクソイケメンがと思ってたのに急にいいやつに見えてきた……
「レイ! お前本当に面白いな! この学園で初めてできた友達がレイで嬉しいよ」
え? 今なんて言った? ねぇねぇルークなんて言った?
友達? ……TOMODATI?……トモダーチ? 友達!!!
よっシャァァァァァァ友達ゲットオォォォォ!!!
ルーク・フォン・アーベライン! リズ・ライト・エアロッド! 覚えたぞ!
人生2人目と3人目の友達の名前! ここにしっかり刻んだぜ!!!
「変な奴だなんてそんな……照れるぜ///………………ん?」
「うん?」
あれ? なんか違和感があるぞ? なんだ? ルーク……リズ……
ルーク・フォン・アーベライン……リズ・ライト・エアロッド……
アーベライン……エアロッド……
「あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!?!?」
「わっなんだよレイ!」
「キャッ! ビックリした! どうしたの?」
「アーベラインて! おまっ! エアロッドって!」
まさか……まさかまさかまさか!
「あぁそうだね。俺はアーベライン侯爵の3男。そしてリズは……」
「エアロッド侯爵家の長女だよ!」
うそやん……
アーベライン家もエアロッド家もオオガミ家に次ぐ強力な力を持った魔術師の家系……
俺なんかが仲良くしてたら何あの出来損ない! ルーク様につきまとって! とかリズ様をストーカーするとか身の程を知れ! この変態! とか言われそう……
そうなったら俺の学園生活いよいよ終わりやないかい……
というかよく考えたらこの2人が俺が才能なしと知ったら……
どうしよう……