1話 士官学校
「はぁ……」
憂鬱だ。
青く澄み渡る空。心地よい風とクスノキの葉擦れの音が心地よいいい天気。
こんな素敵な日なのに俺を憂鬱にさせる原因をチラッと見る。
"シェーンベルグ王国立一級士官学園入学式"
そう書かれた大きな看板があった。
そう、ここは学校の巨大な門の前である。
俺は今日からこの学園に入学するのだ。
シェーンベルグ王国立一級士官学園とは名前の通りこの国が設置した士官学校だ。
それも一級、つまりは幹部候補生を育てるための学園。対人だけではなく魔物はもう立ち向かっていける強い人材を絞り込み育てる皆が憧れる学校。
ここを卒業したらエリート街道間違いなし!
実に素晴らしい!
その分入るのは難しくて受験に受かる人の割合は7%! 100人受けたら93人は落ちる! どんだけ〜
ん? そんな学園に入学できるなんて俺のこと優秀だと思った?
残念じつは貴族様は無条件で入れちゃうワケよ。んでもって俺貴族。
受験なんて受けずに顔パスで入学できちゃった。
ずるいと思った人正直に手を挙げなさい。
俺もそう思う。
でもちゃんとした理由があるんだ。
貴族の子供は全員ちゃんと教育を受けてるんだ。
でも平民はそういうわけにはいかない。
ある程度裕福じゃなきゃ勉強するどころか文字すら読めない。
だからちゃんと教養がある平民を入学させるためのテスト。
貴族の子が受験してもほとんどの奴は合格できると思う。
貴族の子が受験してもほとんどの奴は合格できると思う。
ハイ種明かし終わり! それより俺が憂鬱な理由に話を戻そう。
こんないい天気に輝かしい未来が待ってるはずの入学式で俺が憂鬱な理由………………それは……………………………………なんかいうの恥ずかしいな。
え? 早く言えって? ハイゴメンナサイ。
「おいあいつが才能なしの……」
「オオガミ家の恥さらし……」
「早く消えちまえよ」
「生きてて恥ずかしくないの?」
…………。
過去の同年代の貴族の子弟達とのやりとりが脳裏に浮かぶ。
俺さ、才能がほとんどないんだよね。
魔術を使うために必要な魔力がほとんどない。
戦闘をするのに魔術は必須。そして貴族というものは代々魔力を大量に持っている家系ってことだ。
だが俺は貴族のくせに平民にも劣る魔力量しかないんだ。
まぁそれだけなら噂になる程度ですむんだけども俺の生まれた家にも問題があった。
生まれてくる子全員が才能の塊で強力な力を持つ上に固有の能力を代々継承している貴族筆頭オオガミ公爵家。
オオガミ家の当主は世界最強の魔術師と同義語。
そんなオオガミ家の息子なんだよね、俺。
そんなの強力な力を持っていて当然、固有能力も継承している可能性が高い……はずなんだけどなぁ……
まぁそんなオオガミ家の人間が才能なしじゃ噂は広まるってわけ。
全員に見下され中には憎悪の目で見てくるやつがいる。
あぁ学園生活とか毎日そんな目で見られるんだろうな。
そう思うと憂鬱ってワケ。
自分でもわかってる。早く諦めて別の道を探した方がいいってことはさ、でもどうしても魔術師になりたいんだよ。
幼い頃から見ていた魔物に立ち向かう父の姿。それが瞼の奥に張り付いて離れない。
いつか俺も父のような魔術師になりたい。
幼い頃からずっと持ち続けている夢、それが諦められない。
これがもうこれっぽっちも才能がない本当の才能なしだったら諦めがついたんだろうけども生憎ごく僅かにだけ才能があるもんだからタチが悪い。
はぁ……どんな学園生活になることやら。
こんなんじゃ友達できんのかな? できねーよなぁ〜。友達欲しいわ〜
あ〜足取り重いわ〜もう重すぎて地面に埋まるわ〜
あ〜行きたくね〜帰りて〜帰ろうかな〜帰れない〜
足が進まね〜動け俺の足! うぉぉぉぉぉ!
チクショウなんでだよぉぉぉぉぉ
どおしてなんだよぉぉぉぉぉぉぉ
一歩も進んでくれねえよぉぉぉぉぉ
クソッ! まるで足に重りをつけられたみたいだぜぇぇぇぇぇ!
……いやごめんて早く行くて。
気が進まないけど入学式に行ってくるよ。
俺の話を聞いてくれてありがとう。愚痴ったお陰でちょっと気が軽くなった。
あっそういえば俺としたことが自己紹介まだだったね。
俺の名はレイ。レイ・オオガミだ。
これからよろしくな!