全ての始まり(後編)
優空が長いトイレからニコニコしながら帰ってきた。
「新汰にいい知らせがある。今日の放課後、屋上に深澤さんを呼んでおいたから行ってこいよ」
「はぁー? それどう言う状況だよ!」
「どうせ新汰は自分で動かないだろ? だから、少しお手伝いしてきた」
駄目だ。優空は少し怒ってるみたいだな。俺を困らせようと深澤さんとの約束を取り付けてきたか。でも、プラスに考えよう。深澤さんと話せるのだから。
「そうだな。ありがとう」
俺は作り笑いで返事を返す。
「余裕そうだな。後、悪い知らせを付けとくと、告白される事を伝えてきた」
その瞬間、俺は作り笑いをやめて真顔に変わる。優空は何を言っているのだろうか? きっと聞き間違いだよな。
「俺が告白する事にしてきたのか?」
「うん!」
優空は力強く答える。これもきっと、聞き間違えだ。一応確認をしておこう。
「俺が今日、深澤さんに告白をするのか?」
「うん!」
確認に対しても力強い返事が返ってくる。
「うん! じゃねぇよ! なんて事をしてくれたんだ」
俺が大きな声を出したため、周りの視線が一斉に集まる。
「新汰、言いたいことはよく分かる。だけどな、俺が正しいと思っていることが一番正しいんだよ」
この言葉を聞いて、パチパチと周りから拍手が起こった。
やっぱり、イケメンが正義なんだね。こんな俺の味方は誰もいないだろう。
「小学生から友達やってるけど、優空が正しかったことなんて、ほとんどないだろ!」
「そうだったっけ?」
優空はとぼけながら下を向く。
もういいや。このままでは拉致があかないので、俺はストレス発散の為、生姜焼き定食にがっついた。
そして今に至る。
「深澤さんの事が好きです! 付き合ってください」
俺は告白の経験が無いので、この間見たドラマのように、右手を前に出し、腰を直角に折り曲げ、頭を深々と下げる美しいフォームを作った。
「告白はありがとう。でも、あなたと付き合うなんて無理よ」
ドラマのように人生うまくいかないみたいだ。
「私はね、人に告白の約束を頼むような方は嫌なの」
深澤さんは、強張ったような表情をしている。
この状況で俺が何を言っても、言い訳にしか聞こえないので、優空の事は話さないでおいた。
「俺が嫌な事は分かった。わざわざ時間作ってくれてありがとう」
俺の淡い期待も破れ、逆に吹っ切れていた。そのせいか、俺の口角が上がっていた。
「そう言う事だから私は帰るわね」
深澤さんは、長い髪をなびかせて屋上を後にした。それを見送った後、俺はその場に尻餅をつく。
告白の後に一人でいる事が寂しいものなのだと胸に刻んだ。




