全ての始まり(中編)
昼の賑やかな食堂に足を踏み入れると、空いている席を探す。入り口から一番遠い席が空いていたので、そこに腰を下ろした。
「新汰。何を食べるんだ?」
「俺は生姜焼き定食で!」
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
そう言って優空は一人で席を立つ。
「俺も一緒に行くよ」
「新汰も一緒に来たら席を取られらかもしれないだろ? だから座っててくれ」
「分かった……」
奢ってもらっている上に、品物まで持ってきてもらうなんて、とても悪い気がした。だが、お金を持っているのは優空なので、代わりに買いに行く事も出来ないので、大人しく席にについた。
少し待つと優空は二つのトレーを持って戻ってきた。
「生姜焼き定食お待ちどうさま」
優空は笑いながら言う。
「ありがとう。優空は何にしたの?」
「俺は焼肉定食になった」
なった? 自分で選んで買ったわけではないのだろうか?
「自分で選んだわけじゃないのか?」
「食堂のおばちゃんが無料でくれたんだよ。余り物だからどうぞって。食堂に行くといつも無料でくれるんだよな……だから、新汰の分も無料だぞ」
「優空。どう見ても余り物ではないよな? 湯気が出ているんだが……」
「そうなんだよ。余り物の割には出来立てだよな」
きっと、優空がイケメンだからなのだろうな。結局、イケメンが正義だな。
「余り物でも美味しかったらいいだろう?」
「そうだな!」
優空は妬ましい存在ではあるが、今日のところは許そう。
「それで、好きな人誰?」
俺がご飯に手をつける前に、話を切り出してきた。好きな人を言ったところで何も無いだろうしいいかと、軽い気持ちで答える。
「深澤さんだよ」
すると、優空の顔が曇る。そこで気づいた。昨日振られた人に対して言う言葉では無いことに……。
「へぇー、そうなんだ。新汰は深澤さんと付き合って見たい?」
「う、うん……」
言葉に詰まるが、ここで答えないのもおかしいので、正直に答えた。
「ちょっと俺トイレ行ってくる」
優空は席を立ち食堂を後にする。
何故か嫌な予感がする。まさか、こんな事が起こるはずが無いと思っていたのだが、予想は的中する事になる。
きっと、優空の気持ちが空回りしてしまったのだろう。悪い方に……。




