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異世界に召喚されて捨てられたら幼馴染もついてきた。

作者: 椎羅巻子

異世界へ召喚されて捨てられる時に

主人公が好きだ!とか言っておきながら周りと一緒になって主人公を見捨てるヒロイン?が多いので主人公を追っかけるヒロインを描いてみました。

「えへへ〜誠くん〜」


 地面に寝そべっているいじめられっ子の俺――神波(かんなみ)(まこと)――の腹の上で学園のアイドルであり幼馴染の(せい)百合子(ゆりこ)が幸せそうに口元から涎を少し垂らしながら眠っている。


 なぜこんな事になっていかと言うと1週間程前まで遡る。


 ★☆★☆★☆★☆

 ガンッ


「あっ、悪いなぶつかっちまったわ。」


 明らかに俺の机を蹴って弁当を落としたくせに白々しく目の前の男はそう言った。目の前の男の名前は悪崎(おざき)英斗(えいと)髪を金に染めた大柄の男だ。


 今は長い午前の授業を終えて昼休憩に入り食堂や、購買等に行くためにクラスの人が減っている時間帯のためクラスに人は少ない。クラスに残っている人も今の様な事は昼休憩には毎日行われているので誰も気にしちゃいない。


 そう、俺は所謂いじめられっ子である。なぜいじめられているかと言えば、俺の幼馴染が学園の人気者で、そんな彼らと平凡な俺が仲がいい事が気に食わないのだろう。


 ちなみにこの時の俺は知る由もない事であったが1度幼馴染の1人の聖百合子がとある男子に告白され、断る時に俺が好きであると口を滑らし、それが広まったかららしい。


 そんな事を考えていると悪崎が俺に向かってこんな事を言ってきた。


「おい!お前の弁当が零れて俺の制服だ汚れちまったじゃねえかよ!これ一品物だから、弁償して貰わねぇとな。」


 そう言うと悪崎は俺を突き飛ばし俺のバックから財布を取り出し、札を抜き出そうとしたが残念ながら俺の財布に金はない。こんな事はしょっちゅう行われているので金は全て俺のポケットに入ってる電子マネーにしている。残念だったな、悪崎よ。


「ちっ、金ねぇのかよ。しけてやがんな。」


 悪崎は俺を蹴ってからクラスをでていった。

 そして俺はあいつに落とされた弁当を掃除し、予備に胸ポケットに入れていた飲むタイプのゼリーを飲んで昼休憩を過ごした。



 そして全ての授業が終わり放課後になり俺が帰る支度をしていると。


「誠、帰ろう。」


「誠くん、一緒に帰ろ!」


「神波っ、かえるよ!」


 俺の幼馴染であり、学園のアイドルの幼馴染が話しかけてきた。


 紹介すると、光野(こうの)正義(まさよし)学園一のイケメンと呼ばれている爽やかボーイであり、学力は上位1桁にいて、運動ではテニスのインターハイに出場している完璧な奴である。


 2人目は聖百合子。特徴的なアルビノである赤目でストーレートの白髪を腰辺りまで伸ばした清楚系な美人だ。学園一の美人で、勉強は常に学年トップであり、それも人気に拍車をかけている。


 3人目は(けん)千尋(ちひろ)ショートヘアで活発な女子、賢そうな名前だが頭は良く無い。身長は低く、美人と言うよりはカワイイ系で人気がある。賢も正義と同じくテニス部でインターハイに出場一歩手前まで行ったが、惜しくもインターハイ出場は逃した。


 ちなみに学園では賢派と聖派で派閥争いが起こっているらしい。


 と、そんな事を考えていると。


「おい!ドアが開かないぞ!」


「そんな冗談いいから開けなさいよ!」


「本当に開かないんだって!」


「おい!後ろのドアも開かないぞ!」


「何で開かないのよ!」


 ドアが開かないようで騒がしくなっていた。


 そして突然目の前の真っ白になり俺の意識が途絶えた。


 ★☆★☆★☆★☆


 目が覚めるとクラスの生徒40人と担任が1人の計41人が全員同じ部屋にいた。


 周りを見ると1面真っ白で目の前にいる金髪美女と俺達以外は何も無い。


 ちなみに俺が目が覚めるのが一番早かったようで少しずつ起きてる人が増えてきた。


「ここはどこよ!家に帰してよ!」


「おい!どうなってるんだ!」


 とほとんどの人が起きると騒がしくなったが、


「皆!1回落ち着いて!騒いでも何も始まらないから状況を整理しよう!」


 正義の鶴の一声で静かになると、目の前の美女が動き出した。


「皆さん、突如及びして申し訳ありません。皆さんが異世界より召喚されたので1度こちらへ案内させて頂きました。皆様は今のままでは異世界へ行っても直ぐに殺されてしまいます。そのため、私から選別として、力を授けようと思いますので順番に並んでくださいませ。皆様がここにいられる時間は長くありません。時間を過ぎると肉体、魂共に消滅しまいますので、なるべくお早めに願います。」


 と美女が言うと、消滅と言われたのが恐ろしいのか我先に美女の元へ群がり始めた。


 すると、またも正義がリーダーシップを発揮し、列の整理を行い、列が形成された。


 そして俺は一番後ろでのんびりさせて貰おうと思っていると百合子がこっちへ来た。


「何が起こってるんだろうね、これ。あの人が言ってるみたいに本当に異世界に召喚されちゃったのかな。大丈夫だよね?」


「さあ、俺にはわかんないよ。本当に異世界があってそこに召喚されたのか、それとも変なカルト教団に拉致られたのかとかはさっぱりね。でも、とりあえずあの人の言うことは聞いた方がいいと思う。ここがどこかも分からないし、異世界召喚が本当だとしたら消滅するのも本当だろうしね。」


 と、話しているといつの間にか俺達以外が居なくなっていた。


「なんで、皆いなくなったんだ?」


「力を与えたのでそのままここの空間から退出して頂きましたので。」


「なるほど、そういう事ですか。あ、先どうぞ、百合子。」


「うん、ありがとう。」


 百合子に先を譲り次は俺の番になったのだが、何も起こらないので美女の事を見て見ると、一目見て慌てている事が分かった。


「あの…あなた達って40人ですよね…?」


「え?41人ですけど…」


 これはもしかしてもう与える力がありませんみたいなやつか…?


「えっ?40人クラスですよね…。」


「いや、生徒40人、担任1人で41人です。」


 俺がそう言うと美女は顔を真っ青にした。


「やばい!どうしよう!40人分しか用意してない!…今丁度人手が足りなかったからアレにするか…?」

 

「あの…もしかしてこれって俺何も貰えないで消滅ですかね?」


「このままでは力は無しになってしまいますので、場合によってはあっさりと死んでしまうでしょう。一応力を手に入れる手はあるのですが…」


 美女は申し訳無さそうにそう言い、複雑な顔をした。力も無しに訳の分からない所に行くか、何かしらデメリットが存在するが力を手に入れて訳の分からない事に行くかどちらかか…。


「その別の方法ってどうやるんですか?」


「私の御使い、いわゆる天使になる事です。丁度私の所の人手が居なくて困ってた所でして…ですが、御使いになると不老となってしまいます。寿命で死ぬことはありませんし、どれだけ疲れていても自殺する事は出来ません。神の許可なく生を終わらせる事が出来なくなります。それでも良ければ御使いにしますが…」


 デメリットとしてはこの人(と言うより神なのか?)がどんな人か分からないがこの人の下につかなければならない事と、死にたくても死ねなくなる事か。


 ほぼ直ぐ死ぬか、死ねないかを選べってか。簡単だな。


「分かりました。是非貴方の御使いにして下さい。」


 そう、生きる確率が高い方を選ぶ。流石に20歳にならずに死ぬとか勘弁だし。少なくとも年金が貰えるようになる年迄は生きていたい。


 俺がそう言うと美女は真剣な顔をして俺の事をじっと見つめた。すると美女の目が今までは碧眼だったが金眼になった。


「あの…その目は…?」


「ああ、これは【神眼】です。この眼で見た人の全てを覗くことが出来ます。この眼で貴方が御使いとなるのに相応しいかを見ています。」


 そんな事が出来るのか…、でも今相応しいか見るのかよ、これでこれで駄目だったら上げて落とすだけじゃん。


「分かりました。貴方は御使いになるのに相応しいでしょう。

--神波誠を我の御使いとなる事を了承する!」


 そう言うと急に俺の体が燃える様に熱くなり意識が再び途絶えた。


 ☆★☆★☆★☆★


「やったっ、成功ですっ。」


 目が覚めると再び金髪美女。前の金髪がロングのゆるふわカールで高身長な美人だったのに対してこちらは肩あたりまで伸ばしたゆるふわカールに低めの身長と庇護欲のそそられる少女だ。そんな少女の前に少女を守る様に騎士の様な鎧を来た人が4人居る。全員顔は西洋の方の顔をしている。所謂イケメンだ。


「この国には女神の加護があるのだ、成功するのも当然でしょう。」


「そんな事より、早くこの者達を陛下の元へ連れていきましょう。」


 美少女の周りの騎士の様な人達がそんな事を言うと。美少女が前に出てきた。


「皆さんはじめまして。私はこの国の第二王女です。皆様はこの世界を救う勇者として召喚されました。詳しいことはこの後謁見の間にて父上である国王様からのお話があるのでその時に。まずは謁見の間にご案内致します。」


 そう言うと騎士を連れてドアから外へと出ていってしまった。


 するとクラスメイト達も慌てて付いていく。


 ドアを出ると豪華なカーペットが廊下に敷いてあり、廊下の端にはきらびやかな像や、絵画等が飾ってある。


 そして廊下を進み、王女が一つの部屋の前で立ち止まった。


「皆さん、これより謁見の間へ入ります。そのまま中央へ進み、ちちう――コホンッ陛下が良しと言うまで跪いて下さい。」


 そう言い王女は門番の様な兵士にドアを開けあせ、中央まで進む。慌てて俺達も進み跪く。


「面を上げよ、まずお主らの人生を変えてしまった事を謝罪しよう。すまなかった。だが、こうするしかなかったのだ、それは理解して欲しい。」


 国王が申し訳なさそうにそう言い俺達が立ちあがると今度は国王が立ち上がり頭を下げた。部屋の端に並んでる人達がざわめき始めた。


「陛下、訳の分からない輩に頭を下げる必要などありません!」


「陛下、そう簡単に頭を下げてはなりません!」


 との声が上がると。


「静まれ!この者達の人生を変えてしまったのは事実だ、それをしたのが余等であるからには頭を下げるのが道理であろう。」


「ですが…」


「余が良いと言っておるのだ、良いだろう。」


 そう言うと周りの人達が黙った。この国王簡単に頭を下げるって事はいい人なのか?異世界召喚の小説は読むけど者によっては召喚した人を良いように使う為に呼んだ場合もあるけれど…。


「では、話を進めよう。今現在我々人類は魔王により滅ぼされつつある。何とか我々も抵抗をしてたのだが…それも限界に来てしまった為に止む無く其方等を召喚する事になったのだ。どうか我々人類を救ってはくれないだろうか、勇者よ。」


 国王がそう言い再び頭を下げると、こちら側から1人前へ進み出た。正義だ。


「頭を上げて下さい、国王様。

 まず、私達の礼儀が足りないことは目を瞑ってください。まだまだ私達は未熟者ですので。そして私達は人類を救うための協力は惜しみません。そのための力もあるのです。私達が人類を救って見せましょう!」


 はぁ?何言ってんだあいつ…そのための力って…女神が力くれた理由は身を守る為だろ…。


 そして正義がそういった時に国王の口元が僅かに上がった気がした。


 そして正義の言葉に反論し、協力を拒む発言をする間も与えない様にか、直ぐに国王が言葉を発した。


「そうか、ありがとう。礼儀が欠けている事にしては特に気にはせんよ。だが、このままでは流石に不味いので其方等に教育係を付けようと思う。そして、まず其方等にはこれに触れて貰いたい。これは解析水晶と言いこれに触れることでステータスの確認が出来る魔道具だ。それを使って其方等のステータスを見てもらいたい。」


 そう言い国王の持ってた水晶を騎士のような人が持ってきた。


「では皆さん並んで下さい。その後に計測を行います。」


 そして計測が始まった、俺は例の如く一番最後だ。そして俺の隣には百合子がいる。正義は一番最初に計測をするみたいだ、賢も正義の横で計測をしている。


 正義が計測をするとおおっ!と声が聞こえて来た。


「EXジョブの【勇者】だ!」


 ステータスがホログラムの様に宙に描かれたので覗いてみると。


 名前:光野正義


 種族:人


 ジョブ:勇者(EX)


 称号:異世界人、勇者


 -スキル-

 言語翻訳


 身体強化Lv7


 回復速度上昇Lv3


 魔力回復速度上昇Lv3


 剣術Lv8


 全属性魔法Lv6


 限界突破


 状態異常無効



 こんな感じだ、いまいち良く分からないが周りの反応を見るに凄いのだろう、そして計測が進んでいく。ちょくちょく計測されて騒がしくなった人達がいたが、その人たちはこんな感じだ。


 名前:悪崎英斗


 種族:人


 ジョブ:英雄(EX)


 称号:異世界人、勇者


 -スキル-


 言語翻訳


 近接戦闘術Lv8


 限界突破


 回復速度上昇Lv5


 状態異常無効


 弱体化無効


 魔法耐性Lv3





 名前:聖百合子


 種族:人間


 職業:聖女


 称号:異世界人、勇者


 -スキル-


 回復魔法Lv9


 回復効果上昇Lv6


 消費魔力減少Lv6


 魔力回復速度上昇Lv5


 結界術Lv6


 弱体化無効


 状態異常無効



 名前:賢千尋


 種族:人間


 職業:賢者


 称号:異世界人、勇者


 -スキル-


 全属性魔法Lv8


 消費魔力減少Lv8


 魔力回復速度上昇Lv8


 弱体化無効


 状態異常無効


 魔法耐性Lv6


 こんな感じであった。


 スキルのレベルは1〜2が素人に毛が生えたレベル

 3〜4で中級者、5〜6で上級者、7〜8で超級、9は達人、10は神の領域らしい。


 そして、最後の俺の番になった。御使いになってしまったのでどれ位強いのかはさっぱり分からない。そもそも御使いがどれ位いるのかも知らないので自分が御使いであると知られるのがまずいかどうかも分からない。1度深呼吸をし、水晶に手をかざした。


「えっ…」


 宙に表示された自分のステータスに心臓が止まりそうになった。


 名前:神波誠


 種族:―――


 職業:―――


 称号:――――、―――――――



 なんだこれ…何も表示されてない…。だが、良く見てみると称号欄はハイフンの数が種族、職業と違うから表示が出来ていないだけで、ある事は分かるけど、スキルは本当に何も無い…。自称女神が力をくれたと言ったのは嘘だったのか…?


「おい!お前なんだよそのステータス!雑魚じゃねぇか。ギャハハハ!」



 悪崎がそう言いクラスメイトもクスクスと笑い出すが、今の俺にはその音も遠く感じる。


「誠君、大丈夫だよ、私が守ってあげるからね。」


 百合子がなんか言った気がするがやはり今の俺には聞こえない。


 そして俺が唖然としている間に笑い声も収まり、王との話が進んで行く。


「素晴らしいステータスであったぞ。これであれば訓練を積めば魔王を討伐する事も可能であろう。改めて其方等に聞こう、我々人類を救うために魔王を討伐してはくれぬか。」


「もちろん協力しましょう。ですが、協力するに当たって、我々の衣食住の保証は最低限お願いします。そして、戦闘を苦手とする人や、何かしらの理由があり、戦闘が出来ない人の衣食住も保証をして下さい。」


「うむ。其方等をこちらの都合で呼び出したのだ。それ位はせねばならぬだろう。そして、其方等には一人一部屋貸し与えよう。それぞれにメイドも付ける。いきなりの事だ、疲れているだろう、もう休み給え。」


 王がそう言って俺達の元へメイドがやって来て謁見の間を出て、その後メイドに従って自分の部屋へと案内された。その時のクラスメイトの馬鹿にしたような顔と、幼馴染の心配そうな顔が頭に残った。


 ★☆★☆★☆★☆


 あれから何日か経った。


 結局自称女神がくれたとか言ってた力は良く分かってはいない。分かったことは体が丈夫になった事位だろう。


 イジメは相変わらず継続されていた、悪崎とその取り巻きだけでなく、今まで傍観していクラスメイトも加わってきた。

 いきなり力を手に入れたから力を試したいのだろう。普通の人だと死ぬような事をされても生きているので自称女神がくれた力は一応あったのだろう。体が丈夫になるだけだが。


 いじめられてボロボロになる度に百合子が心配そうにして回復魔法を毎回かけてくれる。その度にどうしたの?と聞かれるが俺は訓練で怪我をしちゃって…と作り笑いをして誤魔化している。おそらくだが、百合子は俺がいじめられている事には気付いている。だが、百合子はいじめを止めることは出来ないし、俺も止めてくれることは期待していないし、無理してまで止めようとしてくれなくて良い。


 百合子の目はいわゆるアルビノというやつで、赤い。そのせいで昔は彼女がいじめられていた、病的なまでに白い肌、その肌に映える真っ赤な目はそれこそ人形のように美しい子だった。


 人形の様に美しい。それ即ち人から外れた様な容姿を持つと言う事である。動物というものは自らと異なる物を排除使用とする、それは人間も例外ではない。幼い子供など特にそれは顕著だ。


 人並み外れた容姿を持つ百合子は小さい頃からいじめられていた、それも集団から。


 その頃の俺は間抜けだったのか全然気づ付いていなかった。もちろん気づいた時には全力で助けた、だがその時の事がトラウマなのか未だに大多数の意見に対して物申す事が出来ない。流されるだけの人間になってしまった。だからこそ、他人の告白を断ったと聞いた時は驚いたものだ。


 そのため百合子がこうして誰もいない所では治療をしてくれるだけで充分有難いことだ。


 だが、ここ最近治療している時の百合子の表情が暗いのが少し気になった。


 ☆★☆★☆★☆★


 更に日が経ち、初めて俺達はダンジョンと言う所に来ている。


 ダンジョンに入る前に生き物を殺す事に慣れさせられたからかダンジョン上部の敵は強く無くサクサクと進んで行くとダンジョンの中部辺りの広場の様な場所に着いた。そこには中央に半径2m程の穴が空いている。


 広場で休憩をしていると急に俺の周り囲む様に皆が動き出した。


「なあ、神波よ、この穴がなんて言われているか知ってるか?」


 と、悪崎がニヤニヤと聞いてくる、悪崎だけでなく俺をいじめていたクラスメイトや、付き添いの兵士達もニヤニヤとしている。笑っていないのは幼馴染である3人位だろう。


「いや、知らないな。」


 俺がそう言うと悪崎はより一層顔を愉しそうに歪め。


「そうか!なら、教えてやるよ!この穴はなぁ、生贄の穴って言われてるんだよ!このダンジョンに巣つくドラゴンが人肉を求めてダンジョンから出てきた時に、月一で人肉をダンジョンに送り込むから国を襲うなと契約をしたんだとよ。そしてお前がその生贄になったのさ!」


 それを聞いた俺は頭が真っ白になったが、どこかでなるほど、と納得もしていた。クラスメイトからすれば目障りな俺が消えるし、国の人からしたら使えない俺がいなくなった所で損は無い。俺が影て穀潰しなんて言われてたのは知ってたし。


 幼馴染達は別に俺の事は目障りだとは思ってなかったのだろうけど自分の身が可愛いのだろう。いくら長い期間一緒に居たからと言っても所詮は赤の他人だ。なのでここで何も言わないのは理解出来る。出来るが納得は出来ない。なんか言ってくれても良いだろう、俺達の仲はそんなものなのか?


 回転の遅くなった頭で俺はこいつらが俺が無様に喚くの待っているのだろうと考えたので。


「そうか、分かった!じゃあなお前ら!俺が無事に戻ってお前ら全員ぶっ殺してやる!」


 最後に精一杯強がって俺は自分から穴に仰向けに落ちて行った。


 全てがスローモーションの様に感じて、あぁ、俺も死ぬのかと思いながら落ちていたら。


 穴へ百合子が飛び込んで来て笑顔でこう言った。


「死ぬ時は私も一緒だよ!誠君!」


 そんな事を聞いて地面に着く前に俺の意識は途絶えた。


 ★☆★☆★☆★☆


 そして現在俺の上で百合子が幸せそうに眠っている。


 上を見上げるも光も見当たらない、そんな高さから落ちたはずなのに未だに何故生きているのかも良く分からないが生きているのだから良しとしよう。


自称女神が言っていた許可無しに死ねないのは本当だったのかもな。

 

とりあえずどうここから生き延びるかと、考えながら俺は百合子の頭を撫でた。


 その後、目が覚めた百合子に土下座をされたり、無事にダンジョンから脱出したら俺を召喚した国が滅んでいたりもしたが、それはまた別の話である。




読んで頂きありがとうございました。

書けたら幼馴染(百合子)視点と、王国の滅びるまでは書いてみたいとは思ってます…。

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― 新着の感想 ―
[一言] 眼に色素がないだけならサングラスで対応できるのでしょうが、全身となると日常生活が大変そうです。 色素が無い=日焼けしない=必要以上の光でダメージを負うという事です。 長袖、長ズボンもしくはタ…
[一言] アルビノには色素がありません。 なので、毛髪は白以外ありえません。
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