レミントン嫌いの兄弟参上!
「なあ、ここどこなんだ?」
「知るかよ、バグでどっかに飛んじまったかもだぜ」
「寒いのもバグか?」
「さぁな、しかしさっきの救難信号はこの辺りのはずだが……今のところ何もねぇな」
スホーイSu-2、白と黒のペイントを施されたこの航空機に乗ったライオンのような顔をした二人の男。
VRゲームをプレイしていたはずだが、急に目の前が光ったかと思うとまったく見た事のない空を飛んでいた。
その空はVRゲームでは感じないはずの寒さを感じ、耐えられなくなったため高度を下げた。
「どっかに降りようぜ」
「降りられそうな場所がないな、飛行機捨てて落下傘で降りるか?」
「それが良いかもな……ん?なあ兄弟、四時の方向に建造物だ、傾けてくれ」
「あいよ」
機体を傾けてはるか下にある建造物を視認する。
それはとても広い豪邸で、真っ白な屋敷が建ち、前には噴水のある庭が広がり、その周りを柵が囲っている。
馬小屋か物置だろうか、周りにもいくつかの建物が建っている。
しかし妙に何かが多く動いていた。
「ありゃあ……モンスターだな、信号弾も見える」
「ってことは救難信号はここからか?」
「みてぇだな、多くて数がわかんねぇけど」
「うーん……せっかくだ、できるだけ殺すか」
「おう、どうせ飛行機捨てるなら弾使っておこうぜ」
広い草原で唯一発見できた道を歩き続ける一人の女性がいた。
紫と黒のドレスのような仕立ての良い服、首元には緑色の宝石がはめ込まれたブローチを付けている。
上品な服装のはずなのだが、青い色の実用的なトレンチコートとその上から装備しているホルスターやベルトに付いているショットシェルが台無しにしていた。
腰の右側にはエングレーブの入った上下ニ連のソードオフショットガン、腰の左側にはサーベルと銃剣、手に持つのはスコープの付いたスプリングフィールドM1903(A4型)、右利き用だが彼女は左利きのように持っている。
長く綺麗な銀髪は無造作に纏められており、さらに青い三角帽子に隠され、見た者のほとんどはもったいないという感想を抱きそうだ。
彼女は自然では発生しない音に気づき、立ち止まって上空を見上げた。
「あれは信号弾……」
少し帽子を持ち上げ、立ち昇る煙と光を確認した彼女は再び歩き出す。
右手を切り落とされたことに気づいた途端、強烈な痛みが襲ってきた。
「いっ!あ、うそ、えっ、え?」
しかしその痛みを気にする余裕がないほどに焦りに支配される。
そんなシトの胸倉を掴む右手をはなしたクリムはトレンチガンを両手で持ち、フォアエンドを引く。
ガシャという音と共に薬室に弾薬が送り込まれ、腰だめでガーゴイルの照準を合わせ引き金を引いた。
乾いた大きな音が響き、同時にガーゴイルの肩が欠けた。
ガーゴイルは一瞬驚いたように見えたが、冷静に両翼で体を守る。
「このぉ!」
声を上げたクリムは引き金を絞ったままフォアエンドを何度も動かす、するとフォアエンドを戻すたびに発砲された。
これはスラムファイアというもので、引き金を引いたままフォアエンドを動かすと連続で発砲できる、正確には発砲されてしまう。
散弾を連続で射撃できるのは第一次大戦の塹壕戦などの近接戦闘では非常に有効であったため、あえてこの機能を付けた散弾銃もいくつか存在するが、意図的に暴発を起こしているようなものなので安全性を考慮して廃止されている場合が多い。
8.4mmの弾が九つ、それを至近距離で五発受けたガーゴイルは窓枠に突き刺さった剣から手を離して落下する。
クリムは追うことはせず、トレンチガンのスリングに頭を通して背負うとシトに寄り添う。
シトの右手が切断されているのに初めて気づいたクリムは動揺したが、その場でうろたえることはなかった。
「シトちゃん立って!早く!」
まるで叱咤するように話しかけ、シトの体を支えながらウィルマの部屋へと運ぶ。
扉を蹴り開けて部屋に入るとクリムは腰の銃剣を引き抜き、ベッドのシーツを切り裂いて包帯を作るとシトの右手に当てて強く縛った。
「右腕を上に持ち上げてしっかり持つの!」
「痛い痛い!」
「ごめんよく聞えない!」
ゲームでは見た目以外違いがなかったが、この世界でのクリムは半獣人という種族ゆえに聴力が優れており、だからこそ遠くから接近して来る多数のモンスターに気づくことができた。
しかしそれが仇となった、広い家とはいえ室内で12ゲージの00バックショットを連続で五発撃ったため、優れた耳にダメージを与えてしまった。
応急処置をしていると二人の女性と一人の男性が姿を見せた、一人の女性はウィルマ、もう一人の女性はセリカ、執事のような格好をした老人は初対面だが、この人がトールという人物だろう。
「あの音なに?!いったいなにが――」
銃声を聞いて駆けつけたウィルマは言い終わる前に手が血まみれのシトを視界に捕らえ事態を察する。
「セリカ魔法を」
「承知しました」
セリカはシトの右手に手をかざし、呪文を唱えた。
「[ヒーリング][センドロリーギ]」
緑色の薄い光が一瞬シトを包む。
するとシーツで作った包帯からも溢れるような勢いだった出血が緩やかになり、痛みも少しずつ引いてゆくのを感じる。
「完全に癒えたわけではありません、すぐにポーションで回復してから教会の診療所に行かないと」
「トール、外の物置にポーションを取りに行ってちょうだい、クリムはトールの援護をお願い」
「今耳がキーンってしてよく聞えないの!」
「トールの!援護!」
ジェスチャーを交えてクリムに大声で話し、クリムは聞えたのかジェスチャーで理解したのか頷いた。
「待っててシトちゃん、すぐ戻るから!」
クリムはトレンチガンに弾を込め、銃剣を付けてトールの後に続いた。
廊下を慌しく走るメイド服のエルフ、カレンの子ウルスラ。
彼女はウィルマに言われた通り馬車の準備をするため南側の馬小屋へ向かい玄関を出た。
本来なら警備隊の誰かが行う仕事だが、今まで何度かあった襲撃と違いモンスターの数が明らかに多いためそこまで手が回らない可能性がある。
庭に出ると案の定警備隊は門のところで攻防しており、馬車の準備などしていられない様子だった。
そもそもウィルマの姉でリッジウェル家の長女であるロレッタはあまり負担をかけるわけにはいかない状態であるため、脱出という手段は可能な限り避けるべきだと思っている。
しかしこのような事態ではその選択をしなければならないかもしれない。
ウルスラがそんな事を考えていると上の方から聞いたことがない音が五回聞え、反射的に見上げる。
「あそこはウィルマの部屋の辺り……なんだ?!」
全長二メートルほどのガーゴイルが落下しており、コウモリのような両翼はボロボロ、地面に落ちた衝撃でさらに欠けた。
少しも苦しむ様子はなく、ゆっくり立ち上がり自分の翼を見る、どうやら飛行することができないと悟ったようだ。
ガーゴイルやドラゴンなどの翼とは鳥のように羽ばたくものではなく、飛行専用の魔力が溜まっているものであると言われる。
そのため損傷すると魔力がなくなり飛行が不可能になるが、損傷を補うほどの魔力があれば飛行は可能であるらしく、”隻翼の射手ジェイカリスト”というドラゴンは翼が片方だけでも短時間なら飛行が可能だと言われる。
だがこのガーゴイルは少なくとも不可能なようだ。
「ガーゴイルの翼をあんなに破壊するとは恐ろしいな、アウトサイダーの”銃”とやらは」
ウルスラに気づいたガーゴイルは歩いて近づいて来る。
逃げようと思い後ろを振り返るが、警備隊は門から入り込もうとするグールなどのモンスターをギリギリで押さえている。
このまま逃げれたとしてもガーゴイルが警備隊を後ろから襲えば一気にモンスターが流れ込んでしまうだろう。
そうなれば防衛どころか脱出すらも困難になると考えたウルスラはガーゴイルを誘うように後ろに下がり、庭中央の噴水の辺りで待ち構える。
「なっ!」
魔法で準備をする暇もなくガーゴイルは全力で接近し、右腕を振りかぶる。
ウルスラはガーゴイルの右脇から後ろに抜け、背中を蹴り飛ばして噴水にぶつけた。
噴水の中心にあるY字の先にウニが乗っかったような石碑はまるで砂の城のごとく砕け、ガーゴイルは何事もなかったかのように立ち上がる。
「硬いな……[ホァンロンディリーリャン]」
呪文を唱えるとウルスラの体は黄色く輝く半透明の鎧を帯び、弓を引くように構えた右の拳をガーゴイルの腹部に思い切り打ち付けた。
ガーゴイルの体はパリッという明らかに効いていない音を出して僅かに欠ける。
蚊に刺されたほどの痛みすらないかのような態度のガーゴイルは左腕を振り、ウルスラを狙う。
しかしそれは空を切る、たやすくかわしたウルスラは距離を取っていた。
「なるほどな、石みたいな皮膚だが耐久力は鉄以上だ」
ウルスラは前髪をかきあげ、呪文を唱える。
「[ディフレクト][レイズグラビティ][パワーアップ]」
受け流しを補助する魔法を使い、自身にかかる重力を上げる魔法で動かされにくくし、力を上昇させる魔法で重力の負担を緩和。
ウルスラは固めた拳を開き、まるで抱擁でもするかのような構えをする。
ゆっくりと歩いて来るガーゴイルは不意を打つように急な突進をして来た。
(狙い通り!)
高速の突進をしてくるガーゴイルの伸ばした右腕をウルスラは左手で受け流し、右の肘を正面からぶつける。
その衝撃はガーゴイルの胴体を打ち抜き、胸の中心に隕石が落ちたクレーターのような窪みを作り、続いて突き飛ばすように両手で掌底打ちをする。
「[理力衝撃波]」
ウルスラの掌底打ちと共に放たれた衝撃波はガーゴイルの体を噴水まで吹き飛ばす。
噴水に頭を突っ込み動かなくなったガーゴイルを見たウルスラはしばらくの間その場を動かずに警戒し、起き上がる様子がないことを確認した。
「ふぅ……手負いとはいえ強いと噂のガーゴイルを倒せるとは思わなかった……やったよ師匠」
ここにはいない師を思い出しながら安堵したその時だった。
「グゴゴゴゴ!」
「なっ?!」
噴水で倒れていたガーゴイルは口に溢れるほどの水を溜めてウルスラを見据える。
ウルスラは咄嗟に防御をしようとするが[レイズグラビティ]の効果が残っており、それが裏目に出た。
[パワーアップ]で力が増加しているとはいえ動きは鈍かった、そして次の瞬間――。
「まずいッ!」
「ガァァァァァ!」
ガーゴイルの口から大量の水が飛び出す。
ダァン!
放水というよりは落雷という表現が適切なのではないかと思わせる速度で噴射された水はウルスラの真横を通り後ろの建物に穴をあける。
ガーゴイルが水を出す直前、大きな音と共にガーゴイルは顔の右側が欠け、左に頭を逸らしたためウルスラには命中しなかったのだ。
何事かと辺りを見回すとウルスラから見て右側にある玄関からクリムとトールが全力疾走で飛び出して来る。
クリムはガーゴイルからおそよ二十メートルほどの所で片膝をつき、トレンチガンをガーゴイル目掛けて、今度は一発ずつ丁寧に頭を狙って発砲する。
装填した弾を撃ち切ったクリムはすかさず再装填を行う。
「リロード!」
自身が再装填を行うことを言葉に出す。
頭の四分の一が削れているガーゴイルはまだ戦おうと立ち上がった。
装填を行っているクリムは攻撃をできないため、チャンスと思ったのかもしれない。
ダァン!
しかしクリムは発砲していないにも関わらず銃声が鳴り響く。
そこで初めてウルスラは気がついた。
「あれは……」
見上げると最初にガーゴイルが落下する前に張り付いていた窓からシトとその後ろにいるウィルマが姿を見せていた。
ウルスラはクリムの持つ武器とシトの持つ武器が出す音の違いから、ガーゴイルが水を吐き出した時にガーゴイルの頭を攻撃して自分を救ったのはシトだったと気づく。
(あの音で攻撃しているのか?近づかないほうが良さそうだな)
装填が終わったクリムは立ち上がり、ガーゴイルに接近し十メートルの距離から確実に頭部を破壊。
牛の頭蓋骨のような頭部は砕け散り、ガーゴイルは完全に沈黙した。
「その銃って武器、近くだとすっごい音ね……シト?大丈夫?」
「はぁはぁ……M1ガーランドにしてれば良かったかも……」
出血が減り痛みも和らいでいるとはいえ、万全でない状態で右利きなのにボルトアクションライフルを左で撃つのはかなり面倒。
たいした距離ではなくとも手首から先がない右腕にスリングを巻きつけて銃を支え、慣れない左での射撃でよく命中したものだ。
シトはボルトアクションにこだわりがあったし、ゲームなら好きな武器を持って楽しむのが良いと思っていた。
しかし現実となった今ではオートマチックを持ち歩いていればと後悔していた。
(まあガーランドだと制限あったかもしれないけど)
M&Mは”良すぎるもの”は制限の対象になることが多いし、あえて良くないものを使う方が格好良いという風潮がプレイヤーの間にはあった。
シトの仲間にもショーシャ軽機関銃やL85A1などのいわゆる”たまに撃てる鈍器”を好んで使用するプレイヤーがいた。
本人曰く「真剣な戦争でないのなら性能よりロマンを優先するべき」で「つまらないものはそれだけで良い武器ではあり得ない」らしい。
「撃てない銃のどこが面白いんだかなぁ……おっと」
最近会っていない友人を思い出していると、立ち眩みのように一瞬意識が崩れ両膝をつく。
「ちょ!フラフラじゃない、無理しないで横になりなさい」
「右手の恨みはガーゴイル一体でなくなるもんじゃない……殺しつくしてやる」
最初は痛みと焦りで頭が真っ白になった、しかし痛みが引き冷静になると怒りが込み上げて来た。
この<二十八番目の世界>というのが肉体の欠損までどうにかできる可能性もあるが、期待しすぎたくはなかった。
「そう……そうね、思う存分やると良いわ」
ウィルマの手を借りて姿勢を直し、窓枠に小銃を乗せる。
魔法で多少はマシとはいえ重症であることに変わりはなく。
正直もう助かる気がしないし、できる限りモンスターを道連れにしてやろうと思っている。
しかし正面の門は警備隊が抑えているためここから発砲すれは警備隊に当たってしまう可能性があり、なおかつこの距離で動く目標に命中させる自信はないためやることがない。
なので他にやるべきことを考えた結果、下にいるクリムに声をかける。
「クリムさん!」
大声で呼びかけた後左腕で真下を指す。
クリムは布を湿らせて作った即席の耳栓をキツネ耳に入れているし野外なのである程度の発砲音は問題ないが、距離があるため頑張って大声で話しかける。
シトの呼びかけに気づいたクリムはシトの指差す方を見て、なにをさせたいかを察する。
シトが指差すところには、シトの右手とフレアガンが落ちていた。
歩み寄ったクリムは抵抗がありつつもシトの手首を回収して布に包み、チェストリグに結びつけた後フレアガンを拾い上げた。
「上に撃ってください」
「う、うん」
距離が近づいて普通に会話が可能になり、クリムは少し離れてからシトの言うとおりにフレアガンを真上に向けて引き金を引く。
発射された信号弾は赤く発光しながら煙の柱を作りそのまま空中に留まる、これは実在するものではなくゲームシステムのために存在する架空の信号弾である。
NPCがいる村や町などは警戒地帯に設定されていることが多く、警戒地帯で発生する緊急クエストは大抵がNPCを助けるものであるためクリアするために周囲のプレイヤーを呼ぶのが有効。
プレイヤーが増えても報酬は変わないうえに、警戒地帯ではPVPが無効なのでデメリットは嫌がらせ目的のプレイヤーがNPCを殺すことだが、緊急クエストはレアな武器や設計図が出ることが多いので嫌がらせプレイヤーは少ない。
最初は存在しなかったシステムなのだが、いきなり発生する緊急クエストに遭遇してNPCを守るというのは難しく、クリアできないプレイヤーが増加したためアップデートで追加された。
そういった経緯から積極的に救難信号を使用するプレイヤーは多い。
もっとも救難信号はある程度近い距離にある別の警戒地帯か安全地帯にしか届かず、信号弾も警戒地帯専用のアイテムであるため普通は使用できない。
信号弾を撃つとフレアガンは煙のように変化し消えてしまった。
「私は……あっちを手伝おう」
クリムがトールという老人の執事の援護を任されたのはガーゴイルなどの飛行能力を持つモンスターを警戒してのことだったが、空を飛ぶモンスターは確認できない。
そのためトールは援護を必要としなくなり一人でで物置まで向かったので、クリムは門で必死にハルバートや槍を扱う警備隊を手伝うために歩き出す。
馬小屋までウルスラについて行こうかとも思ったが、ガーゴイルとの戦いをみて彼女は一人でも大丈夫だろうと判断した。
「怖いなぁ……痛いのは絶対いやだよぅ……」
クリムが弱音を吐いたその時、ウィルマが大声で呼びかけてきているのに気づいた。
「新手だわ!退いて!」
その声はクリムを含め、外に出ている全員に向けられたような声だった。
指示に従い門の隙間から攻撃していた警備隊たちは全力で退却し、ある門から程度距離とった後に振り返り体制整えた。
警備隊が構えると同時に門が破壊された。
正確に言えば破壊されたのは門ではなく錠であり、乱暴に門は開かれる。
今までは警備隊が邪魔をしたため開かれることはなかったが、退却したため開けれてしまった。
だが次の瞬間それで正解だったと思い知る、先ほどの三倍はある大軍が接近しているのが視界に入ったからだ。
「これは……勝てないな」
「そうだな、しかしまだ勤務時間だ」
「そっすね」
警備隊は引退した帝国騎士団員などが多く、戦闘経験を積んでいるため現状に勝ち目がないことを理解してしまったが、逃げることができるとも思えないので抵抗を決意する。
「弾……足りないよね……」
クリムが携帯しているショットシェルは五十発、既に十五発使ったので残りは三十五発だった。
「あのモンスター達はこんなとこにいったい何の用なのかしら」
ウィルマの疑問には答えず、シトは小銃を構える。
先頭にいるモンスターは油を感じさせる光沢のある灰色がかった肌、ヒキガエルのような体だが人間より大きめで、ヒキガエルで言うなら口の上辺りにピンク色の短い触手が複数生えている。
「ムーンビーストとグールとガーゴイルが同時に、それも手を組んで襲ってくるなんて……」
「むーんびーすと……っていうのねあのマズそうなカエル」
「撃ち殺したら調理してくれます?」
「ウチの料理長でも無理ね、ウルスラならできるかもしれないけど」
冗談に冗談で返されたのだろうが、ウルスラならできるかもしれないという部分に少し興味を引かれた。
「ウルスラが戻り次第、姉さんを脱出させるわ」
「そうですね……それが――」
シトが言いかけたところである音に気づいた。
モンスターの声でも、警備隊の咆哮でもなかった。
「この音……飛行機?」
空を見上げようとした時、爆発の音が聞えた。
突然門の外側に集まっているモンスターが爆音とともに吹き飛んだのだ。
「あれは……!」
「あんなモンスターみたことないわね」
「モンスターじゃない、あれには人が乗る……武器みたいなもんです」
旋回する航空機を興味深く見上げるウィルマ。
シトはその航空機の白黒のペイントに見覚えがあることを思い出す。
「アウトサイダーなの?」
「はい、多分味方です……あの塗装は――」
「ゴースト&ダークネス、交戦開始!」
「焼き殺せ、探し出して殺せ!ヒャッハー!」
信じて良いんだよねグーグル先生