表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/130

VS ベリアル ④

決着です。

ベリアルはゆっくりと、後手に手を組む。


「最後は私のオリジナルの魔法で終わらせてあげましょう。それがあなた達に対する礼儀でしょう」

「「そんな礼儀はいらないな!!」」


ダミアンとデトレフさんが同時に仕掛けるが、途中でベリアルの身体から膨大な魔力が迸り、足が止まってしまう。

王国の冒険者の中でもトップクラスのデトレフさんと、王国騎士団隊長のダミアンが気圧されて、足を止めたのだ。

ベリアルが後手から再び両手を開き間に差し出す。

両手の親指と人差し指を使い丸く輪の形を作った。

その輪の中に、ふっと息を吹きかけると、そこに漆黒が生み出され、一瞬で部屋全体が真暗になった。


「ライトが発動しない!?」


真暗闇の中、誰かがライトを発動させようとして、気付いたらしい。


「その通り!!この闇の中では、あらゆる魔法は発動しません。しかも私にはあなた方の姿は見えます。これでゲームセットです!!」

「いいえ!!そうは行きません!!」


エリーが叫び、暗闇がエメラルド色の光に照らされる。


「!?」

「魔法が使えなくても、灯りは私が光ればいいだけです!!」


横たわったエリーの身体がエメラルド色に発光していた。

部屋全体ではないが、俺達の周囲だけは、エリーを中心に視界が戻る。

ベリアルに向かって、ダミアン、クラウス、デトレフさん、ディートリッヒが切りかかる。

だが、ベリアルが腕を横に薙いだだけで、弾き飛ばされ、こちらへ転がって来た。


「灯りがあっても、魔法が使える訳ではありませんよ。魔力を纏えない剣では意味がありません」


エバートンがスクロールを取り出し、魔法陣を広げる。

それを見たベリアルが不思議そうな顔をした。


「魔法陣を広げても、魔法は発動しませんよ」


そう言われて、エバートンはにやりと笑い、


「魔法を使うわけではありません・・・」

「?」

「エリー殿!!この魔法陣に触れて下さい!!動けますか?」

「え?は、はい!!」


エリーはゆっくりと立ち上がり、魔法陣へとよろよろと歩き始める。


「一体何を?」


ベリアルの疑問は全員の疑問を代弁していた。

魔法が発動しないこの空間で、何ができるのだろう?

敵味方が注視する中、エリーは魔法陣へと到達し、右足が魔法陣へ触れた。


「あぁぁぁぁーーー!!!」


エリーの身体が震えだし、爆発するような白い光に包まれる。

と、同時に空間を包み込んでいた暗闇が発光するエリーの身体へと吸収され始めた。


「なっ!?一体何が!?」


直ぐに暗闇は消滅し、エリーの身体が漆黒に染まっていた。


闇黒龍(ブラック・ドラゴン)!!」


ベリアルが驚愕の声を上げた。


「エメラルド・ドラゴンがブラック・ドラゴンへ変化するなど有り得ない!!」

「そう、自然界ならば、絶対にありえない。だが、このエリーは違うのです。私の最高傑作・・・対魔族用に作り出したキマイラ・ドラゴンなのです!!」

「作り出した・・・」

「そしてこの魔法陣は、魔法を発動させるものではありません。キマイラ・ドラゴンが戦っている魔族に対して、最も有効なドラゴンになるための鍵なのです!!」


エバートンの答えに、皆の視線がエリーに集まる。

エリーはその視線に動じることなく、身体中から闇黒のオーラを放出していた。


「力が漲って、押さえ切れません。皆さん、防御結界と防御態勢を最大に引き上げてください!!もう魔法が使えますから!!」


全員が個人結界を張り、全員の結界も多重に張り巡らされる。

同時に、エリーが未だに信じられないという表情のベリアルに、闇黒のブレスを向けた。

小さな稲妻を纏いながら、闇黒のブレスはベリアルを直撃した。


「ぐわぁぁーー!!」


初めて聞くベリアルの悲鳴だった。

エリーのブレスは、蛇のようにベリアルの身体の周りをグルグルとトグロを巻く様に締め付けている。

ベリアルが苦しそうに片膝をついた。


「ま、まさか・・・ここまでの奥の手があるとは・・・予想外のまたその予想外でした・・・」


両膝をつき、両手も床につくベリアル。

エリーのブレスは、勢いが衰えることなく、ベリアルを襲っている。

倒れたベリアルは、エリーの闇黒のブレスに覆われて、完全に姿が見えなくなっていた。


エリーの身体の色が徐々に漆黒から、エメラルド色に戻って行く。

完全にエメラルド色に戻ると同時にエリーのブレスは止まった。


エリーのブレスが消え、ベリアルは床に横たわったままだ。


「倒したのか?」


ダミアンの問いは全員の問いだ。


「ええ、完全ではありませんが・・・」


答えたのはベリアルだった。


「まさか・・・闇黒龍ブラック・ドラゴンのブレスを浴びる事になろうとは思いませんでした。ああ、もう攻撃の必要はありませんよ。私の切り札、魔法無効の闇を逆手に取られて、まさか全てブレスで返されるとは・・・エバートン参謀お見事です」


エリーはいつの間にか、人間の姿に戻ってローブを羽織っていた。

前衛の皆が、油断なく剣に魔力を纏わせて、構えている。

その中でベリアルの身体が徐々に薄くなり始めた。


「せっかく人間界に来ることが叶ったのに、一瞬で魔界へ戻ることになるとは・・・でも、フィロゾ以来の、しかもフィロゾを超える魔法使いに会えたのは、幸運でしたから・・・まあ、良しとしますか・・・」


最後はベリアルの声だけが聞こえ、完全にベリアルは消滅した。


― ― ―


「第10階層の攻略完了です・・・後はダンジョンマスターを倒し、ダンジョンを潰すのみ・・・ですが、奥の手は全て使ってしまいました。後は総力戦で当たるのみ・・・少し休憩を取り、万全とはいきませんが、最善の戦力で挑みましょう」


毎度の事だが、エバートンの指示で皆休憩を取る。

食事を取り、武器、防具の確認、ポーションの補充、ヒーリング、皆、出来ることは全てやっていた。

俺はエリーに魔力を補充してもらいながら、β(ベータ)をエリーにかけている。

これでエリーの消耗が、体力的には完全に回復した。

だが、精神的な消耗はいかんともし難い。

エリーに横になるように言い、俺はエバートンの所へ向かった。


「エバートン参謀、エリーがキマイラ・ドラゴンと言うのは?」


エバートンは新たに魔法陣を制作しているところだった。

手を休めずに、エバートンは答えた。


「エリー殿は、私があらゆるドラゴンの細胞を培養し、合成したキマイラなのです。何度も実験を繰り返し、成功したキマイラ・ドラゴン第1号がエリー殿です。本来なら、人間の姿になれるのは歳を経なければ、不可能なのですが、不思議な事にエリー殿は人間の姿になっていました」


エバートンはここで、魔法陣を書き上げたのか、スクロールを丸めて懐にしまい、こちらを見た。


「ヒデキ殿、エリー殿は最初から、人間の姿に変身できたのですか?」

「ああ、それはですね・・・」


俺は恵理子の事をエバートンに話した。

ウンディーネに襲われ、死にかけた事、昔の恋人の恵理子が助けてくれた事。

俺の意識の中に恵理子が眠っている事。

エリーは恵理子の姿とそっくりな事。

恵理子の意識がエリーと融合した事。

順を追って、全てエバートンに話した。


「なるほど・・・エリー殿が人間の姿になれたのは、そういう理由ですか!!ますます興味深い」


エバートンは、うんうんと頷き、スクロールを取り出し、魔法陣に書き込みを始めた。


いかん、いかん、エバートンに釣られて、納得して戻ろうとしてしまった。

エバートンに頼みたい事があったのだ。


「エバートン参謀!さっきエリーに使った変身の鍵・・・魔法陣を写真に撮らせて下さい」


エバートンが作業の手を止めて、こちらに向き直った。


「ヒデキ殿、この魔法陣はエリー殿に負担を強いる事になります。私がエリー殿に頼んで、私がエリー殿に憎まれるのは、一向に構いません。ですが、ヒデキ殿、あなたはエリー殿に負担をかけ、憎まれてはいけません!!」


エバートンは自分だけが悪役になろうと思っているのか?

確かにエリーはドラゴンの姿に二度と戻りたくないと言っていた。

だがエリーがドラゴンに戻らなければ、ここまで来れなかった。

エリーは覚悟の上でドラゴンの姿に戻ったのだ。

この先も、必要ならドラゴンになってもらうし、エリー自身も覚悟を決めている。

だからこそ、この魔法陣は、俺も持っていなければならない。


「大丈夫です。お願いします」


俺は決意を込めて、エバートンに頼んだ。

エバートンは暫く、俺を見ていたが、懐からスクロールを取り出し、一枚を広げた。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


俺はエリーの鍵を手に入れた。




プロットが99話まで書きあがりました。

目標の100話まであと1話。

なんとか100話までの毎日投稿は出来そうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ