VS ベリアル ②
帰宅が遅くなり、今の投稿になりました。
ガウラン親衛隊のリラは即死だった。
リラは命と引き換えに、別の次元に姿を消していたベリアルを引きずり出したのだ。
だが、ベリアルは借りの身体だ。
リラの命と等価とは思えない。
恐らくリラは喉を締められた時に、もはや助からないと思い、奥の手を使ったのだろう。
覚悟はしていたが、騎士団の1人とリラが犠牲になってしまった。
だが、これが第10階層・・・最終階層だと思えば当然の出来事なのかも知れない。
これまで俺達が、数少ない犠牲者でここまで来られたのは、即死以外で発動するヒーリング魔法陣のおかげと、戦う魔族が皆、俺たちを舐めてかかってきたからだ。
戦闘不能になりリタイアして転移魔法陣で帰還していったメンバーは、全員死んでいても不思議ではなかったのだ。
ベリアルは平然とした顔で、両手を復活させている。
「人間の底力は、本当に凄いですね。フィロゾの魔法を発動させる工夫をしたり、命と引き換えに私をこの次元に引き戻したり」
語っている間もダミアンやデトレフさんが魔力を纏わせた剣で切り付けるのだが、ベリアルは右手だけで捌いている。
「あなた方の底知れない能力に敬意を表して、3回攻撃を受けましょう。それまでは攻撃はしませんので、安心して攻撃して来て下さい」
ベリアルは何事もなかったかのように、こちらの結界を素通りして、最初にいた位置に戻って行った。
「まだ、完全になめていますね」
「だが、本気を出されて、犠牲者が増えるよりは良いさ」
俺が感想を言うと、デトレフさんが返した。
「ベリアル殿、それは私が魔法陣を描く時間をもらえると言うことですかな?」
エバートンが冷静に質問する。
「そうですねえ・・・あまり時間がかからなければ良いですよ。あなたの魔法陣は斬新でわくわくしますからね」
「かたじけない。とはいえ、3回の猶予がある故、一度目はすぐに始めましょう!!」
「それは有難い!ぜひ!!」
ベリアルは両手を広げ、歓迎のポーズを取った。
それに応えて、エバートンは第9階層で9人の上位魔族・・・レインボー・ヒュドラのそれぞれの首だったが・・・倒した魔法陣を並べて、魔力を込める。
第9階層と同じように、ベリアルの周りをぐるぐると魔力を帯びた螺旋回転する風の渦が回り始める。
「ああ、これで油断した訳ですね。で、どのような手段で、9つの首を倒しましたか?」
ベリアルにとっては、完全な余興なのだろう。
俺達の次の行動を、期待を込めて待っている。
前回と同じように、俺達は螺旋の渦に攻撃魔法を乗せた。
一度攻撃魔法が渦に乗れば、自動で発動し続けるエンドレス攻撃魔法陣。
俺は、大サービスでο(オミクロン)を乗せた。
「ほう、面白い魔法陣ですね。一度この流れに魔法が乗ってしまえば、自動的に大気から魔力を補充し、発動し続ける・・・エバートン参謀はフィロゾ以来の天才・・・いや、フィロゾを超える逸材ですね。そして、6大魔法を発動させる事が出来る魔法使い。現時点での人類最強の組み合わせですね。我々など放っておけば、世界を征服できますよ」
ベリアルは攻撃魔法を連続で受けながら、こちらの攻撃を正確に分析している。
「たとえ世界を牛耳ることが出来たとしても、あなた達魔族がいる限り、世界征服とは言えないでしょう」
「だから、魔族を滅ぼすと?魔族を滅ぼした後、世界征服を?」
「いいえ、ただの復讐です。それ以上は望みません」
ベリアルの問いかけに、エバートンは端的に答えた。
俺も世界征服とか興味はないし、不可能だろう。
この問答の直後、発動していた魔法が突然途切れた。
「!?」
「私の周囲から、魔力を消しました。当然魔法の発動は止まります。さあ、次の攻撃を!!後2回チャンスは残っていますよ」
「いいえ!!2回も必要ありません。これで終わりにします!!」
「それは素晴らしい!!楽しみです!!」
エアートンは新たに書き加えた魔法陣を床に広げ直した。
「エリー殿、この魔法陣の上に乗って、ベリアルを攻撃して下さい」
「え!?私ですか?」
急な指名に、エリーが戸惑っている。
「大丈夫です。先ほどのような事をする必要なく、力を発揮できるように、術式を組んであります。さあ!!」
そう促されエリーは、恐る恐る魔法陣の中へ入る。
と、直ぐに魔法陣が発動し、エリーの身体がエメラルド色に輝き始めた。
だが、エリーはエメラルド・ドラゴンに変身する事はなかった。
「おお!?何が起きているのか?なかなか興味深い魔法ですね!!」
ベリアルにも分からないらしい。
「エバートン様、これではブレスが出来ません」
「ブレスは必要ありません、ベリアルに対して、『消滅しろ!!』と念じてください」
「は、はい、分かりました」
エリーは深呼吸して、目を閉じ・・・暫くして目を開き、ベリアルを睨んだ。
「消滅しろ!!」
念じるだけで良い筈だが、エリーは口に出した。
エリーを纏っていたエメラルド色の光が一瞬丸く膨らみ、一条の光線がベリアルに延びた。
「むっ!!これは!?」
ベリアルが光線を両手の掌で受け止めた。
だが、それは一瞬の事で、エメラルド色の光線は膨れ上がり、ベリアルを包み込む。
その光が更に眩しく輝き出し、音も無く消えると、そこにはベリアルの姿はなかった。
一瞬、また姿を消したのかと思ったが、違った。
ベリアルは消滅したらしい。
もちろん、借りの身体4倍体だが・・・
「これで・・・勝ったのですか?」
エリーが一番信じられない顔をしている。
魔法陣から出ると、エリーの発光はなくなり、元に戻った。
「さあ、正念場です。一気にベリアル本体を倒しますよ!!」
エバートンの声に力が篭る。
「そうですね!いよいよ本番ですね!!」
ベリアルの声がどこからともなく響き渡った。
「先に進んで下さい!!但し、私の部屋の入り口には結界が張ってあります。
私が戦うに相応しい力を持っていなければ、入ることは叶いません。心して入って来てください!!」
「なっ、何を勝手なことを!!」
ダミアンが叫ぶ。
「ダミアン殿、落着いて下さい。結界ならば、破れば問題ありません」
エバートンはあくまで冷静だ。
「んじゃ、まあ行きますか・・・」
デトレフさんがゆっくりと歩き始める。
― ― ―
ベリアル本体が待つボス部屋の入り口は、縦10メートル横10メートル(おおよそだが)四方の正方形の形をした入り口だった。
「この入り口に結界がねえ・・・ちょっと試してみますか・・・」
デトレフさんが、床に落ちていた石を入り口に向かって投げる。
何事も無く、石は中へ転がった。
「無生物は反応しないのか?それともベリアルのはったりとか?」
「いや、あそこまで宣言したのです。はったりではないでしょう」
「うーむ・・・ではこれなら?」
デトレフさんがロングソードを抜いて、入り口に差し出した。
剣先が入り口との境界を越えた瞬間、デトレフさんに電撃のような衝撃が走った・
「ぐぅ・・・」
デトレフさんは一瞬ふらついたが、少し多々良を踏みながら堪える。
「合格です!!」
再びベリアルの声が響き、デトレフさんは中へ入ることが出来た。
次にダミアンが同じように剣を差し込むと、やはり衝撃が走り、ダミアンはそれに耐えた。
「合格です!!」
次にリーナがゆっくりと杖を境界に入れる。
「あうぅっ!!」
同じく衝撃が走り、リーナは耐え切れず気絶して崩れ落ちた。
「リーナ!!」
デトレフさんが駆け寄るが、その前にリーナの姿は掻き消えてしまう。
「なっ!?リーナをどこへやった!?」
「彼女は不合格でしたので、第5階層の魔法陣まで送り返しました。ご安心下さい、死んではいませんから。次から転移魔法陣の解除スクロールを持って挑戦して下さい。ダンジョンの外へお送りしても良かったのですが、こちらのほうが帰りは楽でしょう」
「ご親切なことだな?」
「いえいえ、ここまで来ることが出来たご褒美だと思っていただければ・・・」
「どうでもいいわ!さっさと終わらせましょう」
エバートンが転移魔法陣の解除スクロールを受け取るや否や、サラサが無造作に剣を境界に触れさせる。
「合格です!!」
サラサはスクロールをこちらに転がした。
こうして合格したものはスクロールをこちらに転がし、不合格になったものは、スクロールを携えたまま第5階層の転移魔法陣に送られた。
エバートンがガウラン辺境伯邸へホットラインで不合格者の帰還を確認し、ベリアルの証言が嘘ではないことを証明した。
俺やエリーはもちろん合格だったが、ここでかなりの数がふるい落とされた。
合格者はエバートン参謀、俺とエリー、ダミアン、デトレフさん、アイオロス、クラウス、セルゲイを除くパワーボムの5人、親衛隊からはディートリッヒだけが合格だった。
サラサは合格したものの蓄積したダメージの影響か、気絶してしまい、リタイアとなった。
そろそろダンジョン編の終わりが見えて来ましたね。




