エリーの実力
外出もしなかったのに、投稿が今の時間になってしまいました。
プロットから小説への行程で、かなり書き直しをしました。
久々の苦戦です。
エリーが念話ではなく、勝利宣言を口にした。
「生意気な!!お前ごと溶かしてやる!!」
レインボー・ヒュドラが9つの熱戦を撃つ。
床を溶かしながら、こちらへ迫る9つの熱戦。
「暑苦しいです!!」
エリーの身体の色が純白になり、凄まじいブリザードのブレスが9つの熱戦をかき消し、そのままレインボー・ヒュドラを襲った。
ブリザードはレインボー・ヒュドラを包み込み、凍らせる。
氷に包まれたレインボー・ヒュドラはすぐに氷の戒めを破った。
「我のブレスよりも強力だと?」
7色のヒュドラは信じられないと言う声を出した。
「そんな事はどうでもいいです。私はさっさと終わらせて、元の姿に戻りたいので、終わらせちゃいましょう!」
「思い上がりもいい加減にしろ!!いかにエメラルド・ドラゴンとは言え、齢を経ていない小娘風情に、安々とやられると思うなよ!!」
レインボー・ヒュドラは怒りに身体を震わせ、18個の瞳を真赤に燃え上がり、
その9つの口からは、漆黒のブレスが迸り、エリーへと襲い掛かった。
明らかに闇魔法と分かるブレスはエリーの身体に纏わりつき、握り潰すように覆い隠そうとする。
「無駄です!!」
エリーの身体が一瞬青白く輝くと、その身体に纏わりついていた漆黒のブレスは霧散してしまった。
「エリー殿!敵の首を1つずつ潰してゆきなさい!!」
エリーの戦いを見ていたエバートンが、唐突に助言をした。
「は、はい、分かりました」
エバートンに檻で飼われていた影響だろうか?
エリーは素直に返事をした。
エリーの身体がコバルトブルー色に変わり、その口から何かが放たれたように見えた。
その数秒後、レインボー・ヒュドラの一番左の首が、音も無く横にずれ、床に転がった。
「な、何が?」
他8本の首が疑問の声を上げた。
「ウィンドカッターですね」
「え?威力が桁外れなんですけど!?」
エバートンの解説に、リーナが信じられない風に問い返す。
「エリー殿のポテンシャルなら当然です。対魔族の切り札として育成して来たのですから」
エバートンがエリーの正体を語る。
「本来ならば、あのレベルになるまでには、あと6ヶ月は時間が必要だったのですが、ヒデキ殿と出会い、どういう理由か人型で生活、戦闘を繰返してきた事が、急速な成長を促したのでしょう」
「人型で生活と戦闘・・・ですか」
「偶然の出来事が我々に幸運をもたらしたのです」
確かに幸運だった。
サテラ大草原でエリーと出会わなければ、俺はダウの森にさえ辿りつけずに終わっていただろう。
突然この世界に飛ばされて、死にかけていたエリーを助けて、その後、逆に助けられて・・・
何か大きな意思のようなものを感じる。
感慨に浸っている間に、エリーはレインボー・ヒュドラの5つめの首を切り落としていた。
あと4つだ。
「何故だ?我の実力であれば、なんなく全滅させられたはずだ!!それが・・・何故・・・どうして?」
切り落とされた5つの首の切り口は、血がどくどくと流れ出ている。
その血は虹色ではなく、普通に赤かった。
エリーが再びウィンドカッターを放とうとした時、どうっとレインボー・ヒュドラの身体が倒れた。
残った4つの首が力なく、エリーを睨む。
「まさか・・・この我が・・・同じ龍種に・・・」
僅かに持ち上がっていた首が、力尽きたように床に着く。
「我の負けだ・・・お前達は先へ進み・・・ベリアルに滅ぼされるが・・・よい・・・」
その8つの瞳から光が消える。
まだ首が4つも残っていたのだが、自ら命の灯火を消したように見えた。
「ドラゴン・ゾンビにならないうちに焼き払いますね」
エリーの身体が褐色に染まり、ファーヤー・ブレスをレインボー・ヒュドラの亡骸に吹き付ける。
もはや防御力皆無のレインボー・ヒュドラは派手に燃え上がり、すぐに消し炭に変わった。
エリーの身体は一旦エメラルド色に戻り、その後まばゆい光を放ちながら縮んでゆく。
光が消えた時、人型のエリーが全裸で立っていた。
リーナがエメラルド・ドラゴンに変身する前に脱ぎ捨てていたローブを、エリーに羽織らせる。
「ありがとうございます、リーナさん・・・それで・・・私・・・」
ローブを纏い、エリーは恐る恐るリーナに話しかける。
自分の正体がばれて、どう思われているのか不安なのだろう。
リーナがエリーの肩に優しく手を置いた。
「エリーさん・・・「ヒデキ!!お前の嫁さん!!たいしたもんだなぁー!!」
セルゲイのだみ声がリーナのセリフに被って、打ち消してしまう。
「まさか、ドラゴンに化ける奥の手を隠していたなんて!!先に教えておいてくれたら、ここまで驚きゃしねえのに!!人が悪いぜ!!」
「えっ!?いや、隠していたわけでは・・・」
エリーがドラゴンに化ける?
ああ、そういう見方もあるのか。
「そうよ・・・エリーさん、あなたのおかげで、私たちは生きているわ。ありがとう!!」
「リーナさん・・・」
セルゲイの横槍で邪魔をされたリーナとエリーが仕切り直しをしている。
「皆、エリー殿の能力は極秘中の極秘だ。他言無用でお願いする。この能力はブルネルの将来を左右する力である」
エバートンが皆を見回しながら、極秘を強調する。
そしてダミアンを見て、
「ダミアン殿・・・」
「もちろん私も他言いたしません。ご安心を!!」
「感謝いたします」
「いえ、もとより生還するつもりもありませんし、例え生還できたとしても騎士団は辞めますので・・・」
エリーがエメラルド・ドラゴンなのか?エメラルド・ドラゴンがエリーなのか?
思いっきりエバートンが解説していた気がするのだが・・・
皆にはたいした問題ではないらしい。
大事なのは、極秘事項だってことだ。
さあ、残すは第10階層のみ。
セルゲイ、ベルタ、ゴールド・エクリプス、ナナシ、即死以外回復魔法陣発動者の1部がここでリタイアになってしまった。
回復魔法陣発動でのリタイアは、人族に限られている。
体力的に獣人のほうが、優れているせいだろうか?
シルバーファングはクラウスとリーナ以外リタイア、私設騎士団は半数がリタイアだった。
リタイア組にエバートンが言った。
「先ほど私が描いた魔法陣で5階層の魔法陣まで飛べる。5階層の魔法陣は、このスクロールを使えば、一度だけ発動し、ガウラン辺境伯邸まで飛べる。本来この階層攻略の犠牲者になってもおかしくなかったのだ。それがリタイアで済んだのは幸運である。先に帰還して、朗報を待っていて欲しい!」
リタイア組は皆残念そうな顔をしている。
「奥の手を使ってしまったんだ。分かってはいるんだが、パワーボムの中で俺1人がリタイアとは、格好がつかねえな。ヒデキ、お前の魔法陣でこれを一瞬で直せるヤツ、ないのかよ?」
「ありません!!今回は大人しく帰って、待っていて下さい」
セルゲイの無茶な要望に、即答で否定した。
「くっ、仕方ねえか・・・ヒデキ!ダミアン!屋敷で待ってるから、無事に戻って来いよ!」
「約束は出来かねますが、努力はしましょう」
「セルゲイさん、変なフラグ立てないで下さいよ」
「?フラグって何だ?まあいいや、とにかく待っているぜ!!奥さん!ヒデキを頼んだぜ!!」
奥さんと呼ばれて、エリーはにっこりと笑い、
「任せて下さい!!セルゲイさん!!ヒデキ様は私が命に代えても守りますから!!」
「いや、奥さんの奥の手は、誰も勝てねえよ。俺のバーサクと違って、後遺症もないみたいだし・・・まあ、全裸になっちまうのが、弱点か?」
人型に戻った時のことを思い出したのか、エリーは赤くなってしまう。
「あんた、デリカシーがないわよ!!」
「あ、痛っ!!」
リーナがセルゲイの頭を勢い良く叩いた。
エリーはリーナに手を引かれて、少し下がる。
「エリーさん、あんな無骨なのは放っておいて、こちらでお茶でも飲みましょう」
「え?ええ・・」
リーナがエリーを連れ出し、少し離れたところに座らせた。
「やれやれ、余計な事言ってしまったか・・・ヒデキ、奥さんの奥の手な・・・出すなら、タイミングを間違えるなよ」
「タイミング?」
「ああ、切り札を早く切りすぎると、相手はかならず対応して来て、切り札が無駄になる事が多い。今回のレインボー・ヒュドラに対するタイミングは絶妙だった。だから楽勝だったんだ。わかるな?」
「なんとなく・・・」
セルゲイはやれやれと、肩をすくめ、
「まあいい、帰って来たら、今度こそ俺達とパーティ組もうぜ!!」
だから、フラグを立てるな!!と!!
シナリオの基本のひとつに「ヒネリ」があります。
ヒネリとは、1+1=2のように予想がつく話の展開にしないための用語です。
魔族が3人だと思っていたら9人だった。
9人の魔族だと思っていたら9つの首をもつヒュドラだった。
という部分ですね。
あまりヒネリを入れすぎると、訳がわからなくなってしまいますが、これくらいならば、許容範囲だと思い2段階のヒネリを入れました。




