ナナシの実力
私用ででかけていて、休みにしては、投稿が遅れました。
元第4階層守護者ナナシが加わり、戦力はかなり底上げされた。
思うにナナシの参戦はイレギュラーだと思う。
恵理子かイシュタルに聞ければよいのだが、こちらの都合で会える相手ではない。
第4階層のボスが味方について、全滅しか道がないとはどうしても思えないのだ。
頼むから未来よ、分岐していてくれよ!
俺の悪い癖で、また色々悩んでいたら、ナナシが俺のところへやって来た。
「あなた、首に面白いものをつけていますね」
ナナシがノーマの入っているロケットを指差して言った。
「分かるのか?」
「ええ、何か分かりませんが、かなりの力を持つ者が眠っていますね」
「眠っている?」
「ええ、眠っています」
目覚めていて欲しかったが、眠っているのか・・・
俺が落胆していると、エバートンが転移魔法陣を完成させた。
皆の休憩を終了させ、エバートンが説明を始める。
「第5階層魔法陣前へ転移する魔法陣を完成させました。今一度、皆、決断して下さい。元第4階層守護者ナナシ殿が、ここから先は先導してくれますので、時間と労力の短縮も出来ます。
ここで一部の方が撤退しても、誰も非難しません・・・」
やはりと言うか当然と言うか、誰も撤退の選択はしなかった。
□ □ □
「第9階層へ突入!!」
いよいよ正念場だ。
第9階層の守護者は、第8階層で、仮の身体にドレスを着せて守っていた上位魔族の本体だ。
第10階層の守護者は、最終目標、ベリアルの本体・・・
いくら元第4階層守護者が味方についても、苦戦は免れないだろう。
そのナナシは、約束通り先頭に立ち俺達を先導してゆく。
第9階層は通常のダンジョンだった。
幅の広い洞窟がどんどん分岐して行くが、ナナシは何のためらいもなく道を選んで行った。
襲って来るモンスターは、リザードマン、ドラゴニュート、ケツァルコアトル等、地球で言えば爬虫類系のモンスターだった。
ナナシは真黒な両手を使って、そのモンスターを簡単に倒している。
ナナシの手がモンスターに触れると、モンスターの身体が一瞬で漆黒に染まり、崩れて落ちてゆくのだ。
さすが元階層守護者と言うところか・・・
ナナシが無双して、どんどん進んでゆくと、道が分岐しなくなり広い一本道になっていった。
あわせて天井も高くなってゆく。
このパターンでは、その広さに相応しい敵が・・・と思っていると、上空から100を超える数のワイバーンの群れ、地上からは同数のバジリスクの群れが襲ってきた。
地上の敵は前衛が、上空は魔術師が各個撃破してゆく。
俺は『翼竜』と『ストーンゴーレム』『雷獣』を召還し、迎撃させた。
バジリスクの石化攻撃は、エバートンの配った指輪の1つに無効化が付与されており、数が多いだけの雑魚と化している。
セルゲイ、デトレフさん、ダミアン、サラサ、アイオロス、ベルタ、エルザが横一列になって、先頭に立つナナシが倒し損ねたバジリスクを切りまくり、その後ろはストーンゴーレムと雷獣が控えて、後衛の魔術師達を完全にガードしていた。
その鉄壁のガードの中で、エリーも含めた魔術師が上空のワンバーンに攻撃魔法を放つ。
俺の召還した翼竜は、ワイバーンが俺達に波状攻撃を仕掛けようとするのを妨害している。
地上のバジリスクが殲滅されると同時にワイバーンも最後の一体が落ちた。
大量のバジリスクとワイバーンの死体を炎の魔法で焼き払い、完全に灰にしてから、再び進み始める。
暫く進むとさらに大きな空間に出た。
そしてそこには向かって左から水龍、地龍、火龍、3体の龍がいた。
上層ダンジョンにも水龍がいたが、その大きさは比べ物にならない巨体を、ダンジョン一杯に晒していた。
ストーンゴーレムと比べても遜色ない体高だ。
「でかい・・・」
誰かが唖然として呟いた。
真ん中の地龍が、ぎろりとこちら見て、
「よくここまで来た。褒めてやろう」
と言った。
太く威厳のある声だった。
「喋った!?」
いかん、つい声に出てしまった。
俺の声が聞こえたのか、地龍は俺も見て言った。
「我らドラゴン種が、ただ知能が低いだけの魔物だと思っていたのか?」
「何だと!?失礼な奴だな!!」
「全くだ!お前から食ってやろうか?」
地龍の言葉を聞いて、水龍と火龍がいきり立つ。
エリーがさっと、俺を庇うように俺の前に出た。
まさか、ここで切り札を切るのか?
と、思ったが俺を隠しただけだった。
「まあ落着け、我ら龍族は人に負けぬ知能を持っている。知らぬのか?」
地龍が少し黙り、考えて続けた。
「ああ、上層で水龍と戦っていたな・・・あれは我らとは違う。召還された魔物だ。知性は持たない
「なるほど、理解しました」
せっかく説明してくれたのだ。
俺は地龍に応えた。
「ではそろそろ戦おうではないか!!」
「うむ、せっかくベリアルが呼んでくれたのだ、思い切り暴れてやろう」
「お前達!覚悟は良いな!!」
「全員最大警戒!!ブレスに備えろ!!」
前衛のデトレフさんが支持を出し、前衛は俺達の手前まで下がった。
前にいるのは、俺が召還した雷獣、翼竜、ストーンゴーレムだ。
そこへ3体のドラゴンから凄まじいブレスが襲う。
しかしあらゆる防御結界が作動し、ドラゴンが放ったブレスは俺達の手前で轟音を立てた。
翼竜と雷獣は耐えられないと思い、呼び戻す。
「おい!ナナシは無事なのか?」
セルゲイの声で、皆が気付いた。
ナナシは前衛と一緒に下がっていると思っていたのだが、そうではなかった。
結界の外で吹き荒れる、ドラゴンブレスの猛威に晒されているのだ。
数秒の後、ブレスは収まり、視界が戻った。
ストーンゴーレムは無事なのは当然としてナナシも平然と立っていた。
「これは驚いた!!」
「なんだ?お前?」
「我々のブレスの嵐の中で平気だと?」
3体のドラゴンがナナシを凝視して、驚愕の声を上げている。
ナナシは身体についた埃をはらい、静かにドラゴンたちをゆっくりと見回した。
「あなた達がドラゴン種ですか?実際にこの目で見られて光栄です!先ほどの攻撃はなかなか面白かったので、次の攻撃が楽しみです」
「なんだと!!」
「ほう・・・」
「生意気な!!」
最後に叫んだ火龍が右前足をナナシに振り下ろした。
「何ぃ!?」
ナナシは左手一本で火龍の振り下ろした足を止めていた。
「こういう物理的な攻撃は無駄ですから、別の攻撃をお願いします」
「なめるな!!」
水龍が巨大な尾を振り回す。
それをナナシは右手でひょいと、受け止めた。
本来ナナシの体重で、物理的にありえない事だ。
なにかしら物理法則を無視する力が働いているのだろう。
「もしかしてブレス以外に攻撃手段がないのですか?まだ力をお持ちでしたら、これで本気を出してもらえますか?」
ナナシが左手と右手に力を込めたように見えた。
火龍の右前足と水龍の尾が漆黒に染まり崩れ落ちる。
「!!」
火龍と水龍が下がり、崩れ落ちた右前足と尾を即座に再生させた。
3体の龍が押し黙り、ナナシを睨む。
ナナシの周りの埃や小石が舞い上がり始めるが、ナナシはびくともしない。
と、今度はナナシを中心に半径2メートル程が、ぼこっと5センチほど沈んだ。
どうやら重力操作をしたらしい。
それが通じないと分かると、次はナナシの周囲が陽炎でゆらゆらと歪み始める。
明らかに高熱による攻撃だ。
ブレスの何倍もの熱量があるのは、ナナシの足元が溶け始めたのを見ても分かった。
それが一変し、ナナシの周りにブリザードが吹き荒れ、凍りつき始める。
だが、ナナシは後ろ手に両手を組んだまま平然と立っていた。
「ナナシ殿のおかげで、敵のドラゴンの能力がほぼ分かりました。ヒデキ殿、前衛にブーストをかけて下さい」
「あ、はい。分かりました」
急いで前衛にブーストの魔法をかける。
当然のようにエリーが魔力を俺に流し込んでくれた。
前衛にブーストをかけ始めると、エバートンが指示を出した。
「ブーストが終わった者から、剣に魔力を込めて攻撃を!!敵は巨大ですが、物理的な攻撃以外は、指輪と魔法陣で防げます!!」
「おっしゃー!!」
セルゲイが真っ先に結界を飛び出し、龍達の振り回す尾や腕を交わし、切りつける。
次々に前衛が攻撃を始め、龍のブレスも含め、その攻撃を弾き返し、こちらの攻撃が続く。
「我らのブレスが効かぬのか!!」
驚愕の声と供に3体の龍は切り刻まれていった。
「おみごとです!!」
ナナシが切り刻まれた龍の残骸を見ながら、手を叩いている。
こいつ、エクセレントヒールで実体化して弱くなったと思っていたけれど、そうではなかった。
龍族の攻撃を一切受け付けないとは・・・
「さあ、この先は第9階層守護者が相手です。私も助力しますが・・・」
「協力してもらえるだけでもありがたい。この先も案内が必要、もちろん第10階層もお願いする」
「それは、もちろん」
エバートンが再確認して、ナナシが承諾した。
第9階層の守護者は上位魔族3人だ。
今から苦戦が予想される。
皆覚悟を持って第9階層守護者の部屋へ突入した。
だが・・・
そこに待受けていたのは、予想を覆すとんでもない相手だった。
そうシナリオ通りには事は進まないのです。




