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湖畔を行く

私は京都生まれなので、滋賀県に行っては琵琶湖で釣りをしていました。

当時はブラックバスとかいなかったなあ。

俺達はダウの森の中にある、湖の湖畔を歩いている。

琵琶湖よりも大きな湖の湖畔は、綺麗な白い砂地で、じとじととズボンが濡れ、足元を取られる森の中よりも、よほど歩き易かった。

湖畔沿いに歩き続けると、時々湖で魚が跳ねる。

湖は大きく、当然木がないので、ここだけは明るい。

今日も快晴だった。

上空を旋回している死肉喰らいが気になるが、俺達は死体ではないので問題ない。

日の光が湖に降り注ぎ、キラキラしている。

とても綺麗だ、有名な観光地みたいだ。

近くで魚が跳ねた。

思わず歩みを止めた。


「魚がいるなあ、なんとか取れないかな?美味しそうだ」

(よろしければ、私が潜って取ってきましょうか?)

「危なくないか?水魔とか水系の魔物がいるんじゃないのか?その辺どうなんだ?ノーマ?」

「う~ん、浅いところなら大丈夫みたいだよ、ただ中央の深いところだけは、絶対に行っちゃダメだって。精霊達が恐がっているわ。」


やはり危険な魔物がいるのか!なんかやばそうだ。

これだけ大きな湖だ、でかい魔物が潜んでいるのだろう。

日本人としては魚を食べたいのは山々だが、焼き魚はあきらめよう。


(浅瀬なら良いのですね。では今から・・)

「エリー、やめておこう!わざわざ危険に飛び込む必要はない。」


エリーが飛び込もうとするのを、慌てて止めた。


(ですがヒデキ様、浅瀬なら大丈夫だとノーマも言っています)

「いや、エリーを危険な目に合わせてまで、魚が食べたいわけではないから。」

(・・・分かりました、ヒデキ様。私のこと案じていただきまして、ありがとうございます。)


エリーは少し残念そうだった。

もしかしたら、俺以上に魚が食べたかったのかも知れない。


「そうそう陸のトカゲは無理に水に入ることはないわよ~」

(むッ!?失礼な!私はトカゲではない!!れっきとした龍族だ!!)

「ごめんね、小さいからトカゲかと思ったわ」

(あなたこそ、ハイピクシーじゃなくて、ただのピクシーじゃないの?馬鹿みたいなことしか言わないし)

「何ですって!?」

「おいおい、喧嘩しないでくれよ!」

「喧嘩じゃないもん!」


ノーマは俺の胸ポケットの中に潜り込んでしまった。


相変わらず、時々跳ねる魚。

森の奥からは小鳥の囀り。

のどかな時間が過ぎて行った。

飽きることなく、上空を旋回している死肉喰らいが余計だが・・・


エリーも水に入るのは断念したようで、森の奥に気を配って歩いていた。

エリーの歩き方は実に優雅だ。

トカゲのような蟹股四足歩行ではなく、猫のような四足獣の歩き方をしていた。

しかも上品。

人間ならば、良家の子女のような気品ある歩き方だ。

さしずめ『歩く姿は百合の花』である。


「エリー、君はどれくらい大きくなるのかな?」

(急にどうなさいましたか?ヒデキ様?)

「いや、ノーマがエリーのことを小さいと言っていたから、エリーって小さいのかな?と思って聞いて見たんだ。」

(どうでしょう?私は自分の種族がよく分かりませんので・・・でも龍族ですから、最低でも今の倍くらいの大きさになるのでは?)

「エッ!?サラマンダーじゃないの?」

(いいえ、私の知識では、サラマンダーの肌は褐色です。私の肌はこの通り緑色ですから、サラマンダーではないかと思われます。)

「てっきり保護色で緑色になっているのかと思っていたよ。それが地肌の色だとしたら、綺麗なエメラルドグリーンだな。」

(あ、有難う御座います、う、嬉しいです)


エリーが照れながら小走りになる。


「そうか、保護色じゃなかったのか。だとすると街に着いてからエリーの肌の色を隠す工夫をしなければな。逃げて来たんだよな?」

(そうですが、逃げて来た屋敷は覚えていますから、近づかなければ良いのではないでしょうか?)

「用心するには越したことはない。街に入るまでに何か良い方法を考えよう。」

(わかりました、肌の色が変えられないか、私も努力してみます。)

「まだ時間はある、のんびり行こう。」

(はい!!)


そうか、エリーはサラマンダーじゃなかったのか?

ファイヤー・ブレスだしたから、サラマンダーだと思い込んでいたな。

自分の記憶はないのに、色々な知識はある。

ドラゴンではあるけども、龍種まではわからない。

なんか人為的なものを感じるな。

エリーを飼っていた人物が、エリーの記憶を操作したとか?

エリーは連れて行けないが、エリーがいた屋敷には一度行ってみないとダメかも知れない。


(ヒデキ様、近くで獲物の気配がします。そのまま進んで下さい。すぐに追いつきます。)


エリーは右手の森の奥に走って行った。

俺から離れるって事は、危険な魔物とかいないのだろうな。

安心して湖畔を歩いた。

暫くすると、エリーがニワトリくらいの大きさの鳥を仕留めて帰って来た。


(お待たせしました、ダウクイナが近くにいましたので、狩って来ました。血抜きもすましていますので、夕食の時に焼きましょう。)


エリーはクイナを口に咥えても、会話ができる。

念話って便利だな、超物理学で言うところのテレパシーって奴だ。

ダウクイナは地球で言うところのクイナと言う飛べない鳥の仲間とそっくりだ。

日本なら沖縄のヤンバルクイナが有名だ。

ダウクイナも絶滅危惧種とか、特別天然記念物じゃないだろうな?

ダウの森で乱獲とかないだろうし、天敵は・・・ゴブリンとかも天敵なのかな?

まあ、エリーが嬉しそうだからいいか。


しかし、ここに来てから、野菜を食べていない。

今はまだいいけど、このままの食生活はさすがにまずいな。

ビタミン欠乏で、壊血病になってしまう。

あまりその辺りの知識はないが、肉だけ食べていては、健康でいられるはずはない。

昔イヌイットとかは、ビタミン不足を補う為にトナカイやアザラシの肉を生で食べていたと言う。

日本人もさしみで、ビタミン補給ができているので、欧米人みたいにサプリメントに頼りきりになる必要はない。

カロリーメイトは出来るだけ、緊急の場合の保存食にしておきたい。

消費期限は1年以上あるからな。


先ほどの例のように日本人らしく刺身とか食べれば良いのだろうが、淡水魚は寄生虫が怖いな。

テレビでアマゾンのピラニアを刺身で食べているのを見た事があるけれど、寄生虫がいた場合は自己責任で!とか言っていた。

淡水魚の刺身は却下だ。

同様に動物の生き血や生肉を摂るのはなしだな。

となると野草一択しかない!明日、野草を探して見よう。

エリーかノーマが野草を知っていればいいのだが。

色々考えて歩いていたら、日が暮れかけたので、ここで休むことにする。

綺麗な夕焼けだ。


エリーが慎重にダウクイナを丸焼きにして、俺がカッターナイフを使って捌いていった。

焼き鳥だ、地球の味だ!

旨い!!自然と涙が零れた。

エリーが俺の涙を見て心配したが、なんでもないと言って、食べ続けた。

人里に出れば、もっと色々な食べ物を味わえるだろうか?

そんな事を考えながら、食事を終えた。


エリーはすでに丸くなって寝る体勢だ。

いつものようにノーマにアラーム結界を張ってもらい、横になった。

ゴブリンの襲撃はあるが、最初の透明スライムのような生死を賭けた戦いはない。


ダウの森は深く広いが、この森さえ越えれば人里に出られる。

人里に出れば、それで全てがうまく行くわけではないが、選択肢は広がる。

エリーやノーマの話を聞くと、この世界、やはり冒険者という職業があるらしい。

何も稼ぐ当てがなければ、冒険者ギルドで冒険者として登録して、依頼を受ければよいのである。

エリーがいれば、ゴブリン等の依頼は楽勝だろう。

まあ、それも人里に出てからのことだ。


明日も夜明けと共に行動開始だ。

早く寝るとしよう・・・

今日もなにもないだろうと、安心していたら、いきなりけたたましい音で目が覚めた。

問題発生だ!!



次回、ようやく事件です。

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