第8階層守護者
通常時間の投稿です
7つの扉へは左から、パワーボム、シルバーファング、ゴールド・エクリプス、サラサ、アイオロス、親衛隊、エバートンの並びで突入した。
当然俺とエリー、運搬役の自動人形はエバートンと一緒だ。
扉の中はまた同じ空間が広がっていた。
当然のように同じ幅の階段が下っている。
違ったのは多数の魔物が襲い掛かって来たところだ。
エバートンの指示で、『ストーンゴーレム』『翼竜』『雷獣』を召還し、襲って来る多くの魔物を蹴散らして進む。
3つの僕が漏らした魔物を前衛のデトレフさん、ダミアンが倒して、それでもすり抜けた奴を、エリーとエバートンが倒した。
魔物のレベルもグリフォンやバジリスク、キマイラやグレーターデーモンなど、かなり高レベルの魔物が多かったが、それ以上に俺の魔法陣とエバートンの術式のレベルが底上げされていて、雑魚を蹴散らすように進んで行った。
よく考えれば、グレーターデーモンを瞬殺とか・・・最初の頃にはありえない事だ。
2時間ほど下り続けると、再び扉が1個だけあった。
幅が10メートルはある大きな扉だった。
「これは我々が当たりを引きましたかな?」
デトレフさんが扉を前に、エバートンの方を振り返りながら言った。
しかし、エバートンは『ホットライン』を使って、他のパーティに連絡をしなかった。
扉に近付き、エバートンは押し開こうと試みる。
しかし、扉は開かなかった。
「やはり・・・開きません・・・」
「やはりとは?」
エバートンの呟きに、デトレフさんが問いかけた。
「この扉は開く条件があるのです」
「条件?」
「壁に、いかにも誂えたように7つの扉・・・おかしいとは思っていました」
「?それは?」
「つまり、7つの扉を行った者達がそれぞれ踏破して来ないと、扉は開かないということです」
「では7パーティいなければ、攻略は不可能だと?」
「いえ、人数に併せて扉が増減するはずです。1パーティの人数で挑めば1つの扉しかなかったことでしょう」
「でも、階段は1つしかありませんが・・・」
「待っていればわかります」
どうやら全パーティが揃わなければ扉が開かないらしい。
俺達が一番乗りで良かった。
他のパーティが先に辿りついいていたら、『ホットライン』で連絡が入って、引き返すことになっただろう。
いや、エバートンが気付いて止めたかも?
などと色々考えていたら、俺達の横にいきなり階段が出現して、パワーボムが下りて来た。
「どういうことだ?」
セルゲイが当然のように質問し、ダミアンが説明している。
その後続々とパーティが下りて来て、7つの階段がそろった。
と、扉が自然に開いたのだ。
「全7パーティが揃ったところで、扉が開きました。この先がいよいよ本番です。突入したと同時に、魔術師は攻撃魔法を・・・その後即座に防御結界を張って下さい。その後敵を確認して前衛が攻撃」
エバートンは皆を見回しながら、支持を出し、最後に俺を見た。
「ヒデキ殿は魔術師の魔法攻撃が終りと同時に『サンダーレイン』を」
「了解しました!!」
俺は即座に指示された魔法陣を呼び出した。
「突入!!」
エバートンが叫ぶと、魔術師は最早慣れたもので、攻撃魔法が乱れ飛んだ。
その後、俺が『サンダーレイン』をぶっ放す。
見た目だけならば、俺の発動する魔法の中でも1.2を争う派手なエフェクトが終了すると、敵の姿が現れた。
そこには、黒、白、赤、それぞれのドレス姿の若い女の姿が立っていた。
その手前にはサンダーレインのせいで、完全に炭になった大きな塊が燻っている。
「ちょっと、最後の魔法は余分じゃないの?」
「そうよ!ドレスに埃がついたじゃない!!」
「まあいいじゃない。多少は相手の実力も分かったことだし、どうせ戦闘になったら、汚れるわよ」
黒、白、赤の意見である。
よく見ると、3人の女はドレスと髪の毛の色を除けば、そっくりの容姿をしていた。
髪の色は、合わせたようにドレスの色と同じだった。
「ちなみそこに転がって焦げているの、領域ボスだから・・・」
白が炭になってしまった領域ボスを蹴飛ばして、こちらへ転がした。
驚いたことに、炭となった領域ボスは転がる途中で、完全に消滅してしまった。
「!?」
こいつ、さりげなく蹴飛ばしただけだと思ったのに、何をした?
「どうせここまで来られるわけがないとか油断して、攻撃魔法全部くらってくたばった挙句に、消し炭とか・・・消し炭らしく消しておいたわ・・・」
白がにやりと笑った。
どうやらさっき消滅させられたのが、領域ボスらしい。
正体は結局分からなかったが・・・
で、この3人が第8階層の守護者・・・上位魔族だろう。
「「「さあ、戦いましょう!!」」」
三人の声がハモった。
そう宣言し、3人の上位魔族は、一歩ずつゆっくりとこちらへ向かって来た。
それに対し。魔術師達が再び攻撃魔法の弾幕を張る。
「確かめたい事があります。υ(イプシロン)をこの後、すぐに撃って下さい。撃ち終わったら、次にγ(ガンマ)、そしてα(アルファ)をお願いします。間は2分ほど開けて下さい」
「はい」
6大魔法3連発・・・今までならありえない注文だ。
しかも倒すための、魔法ではない。
確認のための攻撃なのだ。
それだけ敵の脅威度が分かる。
俺はυ(イプシロン)を用意した。
エリーが俺の腕を掴み、魔力を送る準備をしている。
味方の攻撃魔法が途切れた瞬間、俺は6大魔法υ(イプシロン)を発動させた。
こちらの攻撃を全く無視して、歩みを続けていた3人の上位魔族が、初めて歩みを止める。
「あら?もしかして6大魔法?」
「え?本当?」
「へえ、人間が使うのを始めて見たわ」
黒の上位魔族が言うと、白が問い返し、赤が肯定した。
υ(イプシロン)は闇魔法だ。
闇が3人の上位魔族を襲う。
と、黒の上位魔族が一歩前に出た。
両手を左右に広げ、一瞬止めると、パンッと拍手を打った(柏手ではないだろうが)
途端に闇は消え失せてしまった。
「一瞬で・・・」
味方の数名が驚愕の声を上げる。
かまわず俺はγ(ガンマ)を発動させる。
エリーがポーションを飲みながら、俺に魔力を補充し続けた。
γ(ガンマ)は急速冷却の魔法。
足元から白くなって行く様を見て3人の上位魔族は感嘆の声を上げる。
「まあ、また6大魔法!!」
「へぇ!!」
「でも残念ね」
赤の上位魔族が一歩前に出る。
トンッと右足で足踏みをすると、冷気はたちどころに消え失せた。
「また一瞬かよ・・・」
セルゲイがあきれたようにぼやく。
続いてα(アルファ)を発動させる。
「聖なる光!!」
「凄いわねえ!!」
「ベリアルの誘いで、人間界に来たかいがあったわね」
白の上位魔族が一歩前に出る。
領域ボスの死体を一瞬で消滅させた上位魔族だ。
両目を一瞬閉じて見開くと、予想通りに光は消滅してしまった。
「実に面白い余興だったわ。もう終りかしら?」
「え?もう終わりなの?」
「6大魔法で、攻撃魔法なら、あと2つ残っているはずよね?」
「ここまで簡単にこなしているのだもの。残りも使って頂戴よ!!」
「ああ、せっかくだから、6大魔法の中の回復魔法を使わせてあげるわ!!」
黒の上位魔族の姿が一瞬掻き消える。
「あうっ!!」
「サラサ!!」
サラサが胸を抜き手で貫かれて、持ち上げられていた。
口から血の塊がドッと吐き出される。
黒の上位魔族は無造作にサラサを投げ捨てた。
胸から血が噴出し、ほぼ絶命状態に思われた。
「心臓を握り潰したわ。グレートヒールでは無理。小賢しいスクロールも無効だよ。6大魔法の治癒魔法を使いなさい!」
冷たい口調で上位魔族はつぶやいた。
「ヒデキ殿!β(ベータ)を急いでサラサへ!!」
「は、はいっ!!」
急いでβ(ベータ)を発動させる。
サラサへと意識を込めると、サラサが青白い光に包まれ始めた。
胸から溢れ出るように出ていた血は止まり、傷口は塞がってゆく。
開いていた瞳孔に光が戻り、一度咳をして、サラサはふらりと上半身を起こした。
抜き手で開けられた鎧の穴だけが残り、サラサは死の淵から生還した。
「サラサ!!」
同じ騎士団の女性がサラサに抱きついた。
上位魔族の実力は、相変わらずです。




