第6階層の魔族
仕事で遅くなり、今から投稿します。
6大魔法の使用タイミングと選択はエバートンに丸投げの約束を取り付け、少し肩の荷が下りた気がした。
だが、全滅を避けるための課題が残り2つ。
エリーの切り札解除は、なんとかなる・・・はず。
問題はノーマの復活だ。
どうやれば眠りから覚めてくれるのか?
一切目処がついていない。
だが、絶対に目覚めさせてみせる。
それが全滅のルートから外れる条件なのだから。
「これより第6階層ボスの攻略に入る、多様な攻撃をして有効な攻撃を見つけるように!!突入次第攻撃開始!」
定番になった前衛セルゲイ、アイオロス、サラサ、ダミアンを先頭に突入した。
突入するなり、相手の確認をせず魔術師が攻撃魔法を放つ。
だいたい一発目は自分の得意な魔法を選ぶのが定石だ。
俺とエリーはファイヤー・キャノンを選択した。
これで片が付けば楽なのだが、挨拶代わりのようなものだ。
もちろん前衛への援護も兼ねている。
攻撃魔法が止んだ時、部屋の全容と玉座に座るボスが見えてきた。
「何?何故あんなのがいるんだ?」
俺は思わず口に出してしまった。
「ヒデキ殿、あいつを知っているので?」
エバートンが冷静に聞いてきた。
「いえ、私の故郷であの姿を見たことがあるだけです」
「そうですか・・・」
玉座に座っていたのは、阿修羅だった。
そう三面六臂の修羅の王・・・
第1階層のコロシアムで戦ったカーリー像に似ているが、漂う気配が圧倒的に違った。
「おや?この姿を知っている人がいるとは驚きですね。とある世界の像を真似たものですが・・・なかなか使いやすいですよ」
阿修羅王がご丁寧に解説してくれた。
「では相手してもらおうか!!」
セルゲイが突進し、バスターソードで切りかかる。
よく先制攻撃をセルゲイがかけるが「俺が死んだら・・・」の言葉を思い出してしまい冷や冷やしてしまう。
ダミアンも同様だ。
そのダミアンが時間差で仕掛けた。
阿修羅王は一瞬で6本の腕に剣を出現させ対応した。
2本の剣で二人の剣を受け止め、残り4本の剣で二人を切りつけた。
「おわ!?」
セルゲイとダミアンが慌ててバックステップで下がる。
と、剣が長い槍に変化して、前衛に投擲された。
ダミアン、セルゲイ、アイオロス、サラサ、ベルタ、エルザがそれを剣でいなす。
その隙を縫って、デトレフさんが攻撃をしかけた。
同時に弓矢、ダガーが牽制のために阿修羅王に飛ぶ。
2本の腕には盾、他4本の腕には再び剣が出現する。
弓やダガーを盾で弾き、デトレフさんの攻撃を1本の剣で防ぎ3本の剣がデトレフさんを襲った。
「こなくそ!!」
デトレフさんは相手の盾を蹴って足場にし、3本の剣から身をかろうじてかわした。
騎士団、親衛隊が、阿修羅王を取り囲み、一斉に攻撃を開始した。
三面六臂を有効に使い、その全ての攻撃をいなしてゆく阿修羅王。
そこで前衛が一旦さがり、後衛の魔術師が多種多様な属性の魔法攻撃を仕掛け始めた。
阿修羅王はその攻撃を避けもせずに全て受け止める。
「うん、そろそろ身体が温まったかな。本気で行くよ!!君達が全滅するまで止めないから、そのつもりでね」
阿修羅王は剣や盾を消し、六方向に手を伸ばした。
そして各2本の腕から、凄まじい光線がを放ち始めた。
3本の光線はそれぞれ種類が違った。
1本は赤い熱線。
1本は白い冷凍光線。
1本は真黒な光線・・・あきらかに闇属性だ。
さらに阿修羅王は上半身だけを回転させ始めた。
つまり360度の攻撃を開始したのだ
しかもランダムに腕を上下して避けにくくしてくる。
皆致命傷ではないが、前衛も後衛も負傷し始めた。
「皆一旦下がれ!!」
エバートンが叫び、スクロールを取り出して魔法陣に魔力を込める。
3つの結界が同時に発動した。
そして見事に3本の光線を防ぐ。
結界内に避難した皆は負傷した箇所の治療を始めた。
「見事な結界ですね!この短時間に防がれるとは予想外でした。しかも一人も脱落者が無しですか・・・」
阿修羅王はそう言っている間も止まらなかった。
結界が少しでも破られれば、なし崩しに犠牲者が出るだろう。
そろそろ6大魔法の出番なのだが・・・何が有効なのかさっぱり分からない。
エバートンの指示を待つしかないのか・・・
「埒が開かないな・・・この姿がお気に入りだったけれど、仕方ない」
阿修羅王の動きが急に止まり、光線も止まった。
どうやら、かなりせっかちな敵らしい。
全滅するまで止めないと言ったのを、あっさり撤回している。
そして阿修羅王の体の中心に縦線が入り、左右に割れた。
中から出現したのは・・・
「何故?」
誰とも無く出た言葉が全員の気持ちを代弁していた。
その姿は、さっき倒した領域ボスの姿だった。
赤いスーツ姿の上位魔族・・・滅びたはずだ。
「ああ、この姿に驚いた?あいつは俺の兄貴だよ。階層守護者が嫌で領域守護者になっていた変わり者さ」
あいつの弟か・・・能力も同じなら勝てるかな?
「では今度こそ全滅するまで止めないから」
魔族の身体が真赤に光り始める。
やはり同じ能力?
と思ったら、全く違った。
徐々に気温が上がり始め、ゆらゆらと陽炎が立ち昇り始めた。
「各自、耐熱対策を取り高熱に備えよ!!」
エバートンの命令に魔術師達は耐熱結界を張り、氷系の攻撃魔法を魔族に向けて放った。
攻撃魔法は魔族に届く前に消滅してしまう。
もうもうと水蒸気が上がった。
魔族の体は灼熱に光輝き、近くのものは全てどろどろに溶け始める。
これは早急になんとかしないと、かなり危険だ。
「エバートン参謀!俺に命令を!!」
俺は6大魔法のフォルダーを呼び出して、エバートンを見た。
「倒せなくても、この灼熱地獄を止めなければ!」
エバートンは暫く熟考して言った。
「ヒデキ殿!!γ(ガンマ)を発動!!」
「了解!!エリー!!」
「はい!!」
俺はγ(ガンマ)のフォルダーを呼び出して、スライドショーをセットする。
エリーと手を繋ぎ魔力を込め始めた。
急激に魔力を吸い取られ始め、貧血を起こす感覚にとらわれ、気を失うぎりぎりのところで魔法が発動した。
発動した魔法は上空に冷気の渦を起こしながら魔族へと近付いて行く。
俺達を圧倒し全てを溶かそうとしていた魔族の魔法が徐々に打ち消されてゆくのが、目に見えて分かった。
「な、何だ?この魔法は?」
耐え切れない暑さだった空間が徐々に冷えて行く。
「まさか・・・この魔法は・・・いや、ありえない!!お前達の中でこの魔法を発動できるだけの魔力の持ち主はいないはずだ!!」
冷気の渦が魔族の上空に来た時、轟音と共に渦が弾け、冷気がこの空間全体に広がった。
床まで溶かし始めていた熱気がイッキに消失し、魔族の発光までおさまっている。
俺の発動した魔法は、あれほど高熱を発していた魔族からも熱を奪い去っていたのだ。
「今だ、攻撃開始!!魔術師は炎系以外の魔法攻撃」
氷、闇、風、水、雷の魔法が乱れ飛ぶ。
「くっ・・・おのれ・・・人間の分際で・・・」
魔族は被弾する度に後退する。
よろよろして、辛うじて立っている感じだ。
俺とエリーは魔力回復ポーションを飲み、魔力を回復させたが、エバートンの支持で待機していた。
「魔族があの1発で倒せるとは思えない、もう1回6大魔法が必要だと思われます」
「またγ(ガンマ)ですか?」
「いや、もうひと波乱あるとすれば、違う魔法になる可能性が高いです」
エバートンは、以前レッサーデーモンを狙い撃ちした氷魔法の魔法陣を出して攻撃を連発しながら、予想した。
後衛の魔法攻撃が一段落した時を狙い、前衛が波状攻撃をかけた。
ヒットアンドアウェイ・・・一撃離脱を繰返す。
「まさか失われた魔法を使いこなすとは・・・仕方ない・・・私の最後の手段を使うしかないか・・・私も滅びるが・・・お前達も全滅する」
「こいつ何かやるぞ!!その前に止めをさせ!!」
セルゲイがはでにバスターソードを振るいながら言った。
キンッと、金属的な激突音が響きわたる。
「うっ!?」
魔族の周囲に魔法陣が浮かび上がり、攻撃が当たらなくなっていた。
「しまった!!遅かった!!」
魔術師の攻撃魔法をぶつけるが、当然のように弾いてしまう。
「何が起こるかわからん!皆こちらへ下がれ!!」
前衛が下がり、再び多重結界が張られる。
魔族の方は自分が展開させた魔法陣の中で長い剣を持っていた。
「・・・地の底より我の呼びかけに答えよ!汝は死を司る者・・・○△▼□●」
魔族が呪文を唱え始める。
「まずい、召還魔法だ・・・凶悪な魔物が召還される・・・」
「妨害できないのですか?」
「今からあの召還魔法陣を妨害する術式を組んでいる時間はない!!」
「攻撃魔法で吹っ飛ばすことは?」
「あの魔法陣の結界は破れない・・・ああなる前に倒しきらなければならなかったのだ!!」
エバートンが苦悶の表情を浮かべる。
魔族が召還するとか・・・予想外だ・・・一体何を召還しようと言うのだろう?
俺達は魔族の召還魔法をただ眺めることしか出来なかった。
続きます




