休憩
タイトル通りです
第5階層のボス、氷の魔族は毛玉の活躍で、ようやく倒すことができた。
分裂した毛玉はと言うと、今度は互いを吸収し、最後は1つになって、エリーの肩に戻ってしまった。
そのエリーだが、気を失ったままだ。
魔力回復ポーションもほぼ使い切ってしまった。
ヘンドリクは奥の手を使い、魔族の攻撃を受けて瀕死の状態。
セルゲイ、ダミアン、サラサ、アイオロス、エルザは武器、防具の破損。
皆ぼろぼろだ。
「エバートン殿・・・やはり一時撤退しますか?」
デトレフさんがエバートンに尋ねた。
「・・・魔族を倒せずにここから撤退していたなら、それもありでしょう。しかし、第6階層の扉が開きました。ここは進みましょう」
「しかし、武器、防具の破損、魔力回復ポーションの損耗、かなり戦力ダウンしています。この先の攻略は危険では?」
「これから休息を取り、その間に補充を行います。休息は私がこれからこの床に書く大規模魔法陣が書き終わるまでとします」
「大規模魔法陣・・・それは・・・」
「そう、転移魔法陣を今からここに構築します。ヘンドリクの帰還、必要な物資等の補充、ヘンドリクに変わる親衛隊リーダーの補填を行います」
「それは・・・危険では?」
「こちらからの転移はヘンドリクを帰還させた後は封印します」
「なるほど・・・さすがはエバートン殿・・・王国魔法大学首席卒業は伊達ではありませんな!」
「デトレフ殿のほうから皆に指示を願いますか?私はすぐに魔法陣のほうに取り掛かります」
「承知しました・・・せめてこれを口に入れながら作業を!」
「かたじけない」
デトレフさんはエバートンへ小麦粉をベースとした非常食を渡して、皆に通達を始めた。
「皆聞いてくれ!これからここで休息を取る!!各々食事や治療、武器や防具の整備点検を行うように!!」
「武器や防具が壊れているし、ポーションもほとんど残っていないぜ、これ以上闘うのは無理じゃねえのか?」
「セルゲイ殿の言う通りです、これから先、さらなる苦戦が予想されます。一度引くべきでは?」
ダミアンがセルゲイに賛同する。
「今から武器、防具、ポーションの補充を行う。ポーションは大量に補充するので、休憩終了後、皆に配布する。武器防具の補充は申告するように!!」
「補充?今から他を呼ぶのか?第1第2階層はボスまでポップするから、かなりきついぜ!」
「その心配は無用だ。直接ここに補充してもらう」
「直接!?」
ダミアンとセルゲイがエバートンの作業を見た。
「転移魔法陣?」
「転移魔法陣まで書けるのか?」
「納得したなら休憩だ!!二人は武器と防具の補充の申告も忘れずにな!!」
「了解だ」「了解しました」
納得した二人は早速休息を取り始める。
俺は気を失ったままのエリーをそのままにして、その横に座って休息を取った。
非常食を取り出し、口に入れ水を飲んだ。
エバートンは魔法陣を書きながら、ガウラン辺境伯に『ホットライン』を繋いだ。
「無駄な挨拶は要らん!!報告と用件を言え!!」
ガウラン辺境伯の声が響く。
ホログラムはない。
「報告いたします!現在第5階層を突破したところです」
「第5階層!?かなり苦戦しているようだな?エバートン!?」
「ハッ!!第3階層は予定通りの突破でしたが、第4、第5階層とも私の予想を上回る敵が階層守護者で、人的にはヘンドリクが戦闘不能」
「何?ヘンドリクが戦闘不能だと?」
「第5階層守護者の攻撃を阻害するため、奥の手を使用いたしました」
「奥の手を使ったのか!?」
「さらに武器防具とも損壊多数、ポーションも底をつきました」
「うむ?撤退か?」
「いえ!!ただ今転移魔法陣の術式を組んでおります。組上がり次第ヘンドリクを帰還させます。つきましてはヘンドリクに代わる親衛隊隊長の補填。ポーション、武器、防具の補充を願います!!」
「転移魔法陣とな?ウム!!撤退をしないその心意気や良し!!そのまま攻略を続ける事を許可する!!」
「はっ!!有難う御座います!!」
「必要な人材、物資はベルタに用意させる故、直接連絡するように!!武運を祈る!!」
言うだけ言って、ガウラン辺境伯の『ホットライン』は切れた。
エバートンは魔法陣に専念し始める。
その時丁度エリーが目覚めた。
「ううん・・・あれ?ここは?・・・」
瞬きをしながら辺りを見回すエリー。
俺と目が合うと、にっこりと微笑んだ。
「ヒデキ様・・・ご無事でしたか・・・お怪我は?」
「大丈夫だ、エリーのおかげで怪我はないよ、ありがとう」
「いえ、ご無事でなによりです・・・ところで魔族は?」
「ああ、倒せたよ。エリーの援護と・・・」
俺はエリーの肩に戻ってアクセサリーの振りをしている毛玉を指でちょんちょんとつつき・・・
「この毛玉のおかげだ」
「??この子が??」
エリーは不思議そうな顔をして、毛玉を眺めた。
俺の指でつつかれても、毛玉は微動だにしなかった。
あくまでもアクセサリーのつもりか?
それともエリーがピンチにならないと動くことが出来ないのか?
どちらにせよ、こいつのおかげで勝てた事に違いはない。
「それよりエリー、気分はどうだ?暫く休憩だから食事をして休むぞ」
「休憩ですか?撤退ではなく?」
「そうだ、休憩だ」
「でも魔力回復ポーションの残りがあまりありません・・・ヘンドリクさんも、もう闘えませんし・・・」
「その点は大丈夫だ。エバートン参謀が、もう手を打っている」
「エバートン参謀・・・ですか?」
エリーの身体が少しビクッと震えた。
未だにエバートンが恐いらしい。
まあ仕方がないか・・・
「今、エバートン参謀が転移魔法陣を書いている。ヘンドリクさんは帰還。代わりの隊長の招聘、武器や防具、ポーションの補充をすることになっている」
俺はエリーの髪を撫でながら続ける。
「俺達は、まだ戦うことになる。だから今はゆっくり休もう」
エリーを抱き起こし、横に座らせる。
エリーは俺の肩に頭を乗せて寄りかかって来た。
「そうですか・・・まだ戦いは続きますか・・・」
「俺も戦いは嫌いだが、ここで俺が引くと、ここにいる全員が助からない・・・」
エリーが苦しそうな顔をしてこちらを見る。
「私設騎士団とガウラン親衛隊の一部の人とは親交はないが、他は皆色々と俺達の世話をしてくれた人達だ」
俺は再び、エリーの髪を撫でる。
エリーの目が潤んでいる。
「この人達を見捨ててしまったら、俺はこの世界で生きていけなくなってしまう。だから、エリー、あと少しだけ力を貸してくれ」
エリーの瞳が悲しそうなものから、キリっとしたものに変わった。
「分かりました!!ヒデキ様の命は、私が命に代えても守ってみせます」
「俺もエリーを死なせるつもりはない!!二人して生き残るぞ!!でないと今、眠っているノーマに申し訳が立たないからな」
「そうですね・・・さぼりまくっているノーマに文句を言わずに死ねませんね」
「全くだ!!」
俺とエリーは笑い会った。
「よう、いちゃついているところ、邪魔して悪いんだが、ちょっといいか?」
「すみません、ヒデキ殿、エリー殿、よろしいでしょうか?」
セルゲイとダミアンがやって来て、俺達の正面に座った。
二人とも防具の篭手の部分がなくなっている。
魔族の攻撃で粉砕された跡だ。
「良いですよ。いちゃついていた訳じゃありませんし」
「そうですよ、覚悟の確認をしていたんですぅ」
「それは見上げた心がけだ」
「それで御用は?お二人が揃って来るんですから、重要な話ですよね?」
セルゲイとダミアンが顔を見合わせて頷く。
「察しが良いのは助かる」
「ヒデキ殿が第4階層でボスに使った魔法のことですが・・・」
『エクセレントヒール』の事だな・・・
「ええあの魔法が何か?」
「あれは、命がないものに命を吹き込む魔法なのか?」
「ある意味そうですね、最初は死んだ者を生き返らせる魔法だと思ったのですが、違いました」
「やはりそうでしたか・・・ヒデキ殿!お願いがあります!」
嫌な予感しかしない・・・
「何でしょうか?」
「私がこの戦いで死んだら・・・」
「俺がこの戦いで死んだら・・・」
「「あの魔法を私に俺にかけて下さいくれ」」
ほら、やっぱり・・・予感的中だ!!
あやうく日にちまたぎそうになりました。
明日はもう少し早く投稿します。




