エバートンの作戦
文章力の不足はご容赦下さい。
俺はエバートンから貰った魔法陣に魔力を込める。
同時にスマホの魔法陣も発動させた。
そのままベリアルに近付き、その腕に触れた。
「なんだと!?」
ベリアルの驚愕の声と共に、その身体は閃光を発した。
一瞬空間全体が真白となり、それが収まると、ベリアルは消えていた。
ベリアルが立っていた所には、黒く丸い影だけが残っている。
俺が魔力を込めるのを止めると、回りがざわついた。
「止めを刺したのは、ヒデキだったか!?」
セルゲイが驚愕の声を上げた。
周りから見れば、俺の姿が漸く見えたと言うことだろう。
さて、『不可視』の魔法陣は俺だけしか使えなかったはずでは?
と思われているだろう。
そのからくりはこうだ。
『不可視』の魔法陣は確かに、俺しか使えない特定魔法陣だ。
この魔法陣をエバートンが研究を重ねた結果、高次元に自分の存在を置き、それ以下の全ての次元に干渉可能と言うものだった。
エバートンはベリアルが高次元に身体置いて、攻撃をしているのではないかと推測した。
そして俺の『不可視』はその1つ上の次元に身体を置けるはず!
エバートンは『不可視』よりも1つ下の次元に身体をおける魔法陣を開発し、汎用性を持たせることに成功した。
それに姿を消せる魔法陣を組み合わせて、ダミアンとセルゲイに持たせたのだ。
ダミアンとセルゲイで倒せれば、それで良いが同次元ではベリアルを攻撃できても殲滅するのは難しい。
最後に俺が『不可視』を発動、エバートンの用意してくれた改良版『スーパーノヴァ』をベリアルに触れて直接発動。
さすがに自分よりも高次元からの攻撃は全く防げない。
二次元世界に生きているものがいたとして、ががちがちに守りを固めていても、上ががら空きの状態と同じである。
こうして味方に犠牲を出すことなく、俺達はベリアルを倒した。
エバートンの計算通りだ。
俺が魔力を使い切って、ふらふらになるのも計算通りだが・・・
足元のおぼつかない俺をエリーが駆け寄り支えてくれた。
「ヒデキ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。魔力回復ポーションを・・・」
「はい、ヒデキ様!!」
エリーが出してくれたポーションを一気に飲み干す。
魔力が無理やり回復してゆく独特の気だるさが、身体全体を襲った。
これさえなければ、万能なんだけれどなあ。
「お見事です!!あなた方は私の予想をはるかに上回った!!喜ばしい!!」
この広間に声だけが響き渡った。
「!?」
「ま・さ・か」
「倒したんじゃなかったのか?」
全員が当たりを見回すが、姿は見えない。
声だけが響き渡ったのだ。
「ああ、ご心配なく。この第3階層の私は滅びましたよ」
「第3階層の・・・」
エバートンが繰返した。
「そう、第3階層は、私の仮の身体が守護していたのです。当然ですが本来の私の能力からは、かなり劣ります」
「!!」
「あれが仮の身体だと!?」
「能力がかなり劣る・・・」
「王国騎士団を壊滅に追いやった者が・・・仮の身体だと・・・」
全員に動揺が走る。
「皆さん静粛に!!先程も言いましたが、この階層はクリアされました。しかもあなた方にとって、喜ばしいことにこの階層の私は二度と再生しません。ですから、守護獣3体を倒せば、クリアできますので、再攻略も楽になりますよ」
「ずいぶん気前がいいな!気前が良いついでに教えてくれ!お前さんの本体は第10階層か?」
デトレフさんが冷静に質問をした。
「何故?そう思うのですか?」
「仮の身体であの強さ・・・その辺のダンジョンならダンジョンマスターであってもおかしくないからだ!!」
「高評価ありがとうございます。そうですね・・・私の予想を上回る戦力アップの報酬として、教えて差し上げましょう。私は第10階層で皆さんをお待ちしております!!」
「やはり・・・」
「あいつの本体がラスボスか・・・」
「まずは、10階層まで到達する事です。第4階層への扉は開かれています!作戦通り進みます!!」
エバートンの号令で、第4階層へと突入する。
私設騎士団2チーム、親衛隊、冒険者チームは3チームにエバートン、ダミアン、デトレフさん、俺、エリーで1チーム、合計7チームとして攻略開始だ。
道が分岐する度に1チームずつ分かれて進んで行く。
途中行く手を阻む魔物は、前衛が瞬殺するか、後衛が攻撃魔法で殲滅していた。
精鋭揃いのダンジョン攻略は道中にかかる時間が短い。
エバートンにサラサより領域ボスの部屋発見のホットラインが入った。
全チームにサラサのルートへ向かう指示が飛び、俺達もサラサルートへ向かった。
第4階層の領域ボスは、でかい不定形のスライムのような魔物だった。
「なんだ?こいつ?」
セルゲイがぼそっと呟く。
スライムではない証として、ぐねぐねと動く丸い体の中央に大きな単眼があった。
透明でなければ、バッ◎ベアードのような・・・
冗談はさておき、セルゲイが先制攻撃を仕掛ける。
素早い動きで接近し、バスターソードで自分の身長の倍はあるであろう敵に切りかかった。
剣が単眼スライム?に触れた瞬間に、その身体が放電してバスターソードを弾く。
セルゲイは即座に下がる。
後衛の魔術師から、あらゆる系統の魔法が単眼スライムに飛んだ!!
炎、水、氷、風系統の魔法が次々に襲う。
炎は表面を焼くこともできない。
水は俺が選んだ硝酸雨を全くよせつけない。
氷は表面に霜が降りただけ。
風は切り裂くこともできず、こちらに跳ね返って来て、危うくこちらに被害が出るところだった。
闇魔法で攻撃しても、闇がその身体に吸い込まれるだけ・・・
『奈落』さえも受け付けなかった。
こいつ、どうすれば倒せるんだ?
俺は雷獣、翼竜、ロックゴーレムを召還して、単眼スライムを攻撃させてみた。
雷獣がいきなり牙を立て、強烈ば雷撃を直接送りこんだが、単眼スライムは全く意にも介さず、雷獣を己の身体に取り込もうとしてくる。
俺は慌てて、魔法陣に雷獣を呼び戻した。
召還獣は非常に便利だ。
ダメージも魔法陣の中にいる間に回復して、暫くすれば再び召還できる。
翼竜は上空から振動派を浴びせて、単眼スライムの体組織を分解しようとするが振動派に合わせる様に身体が振るえて吸収してしまう。
翼竜を取り込むつもりなのか、単眼スライムは身体の一部を鞭のように細長く伸ばし、翼竜を襲った。
翼竜は旋回しながら、上空から単眼スライムを牽制する。
単眼スライムが翼竜に気を取られている隙に、ロックゴーレムが巨大な拳で殴りつけた。
巨大なロックゴーレムの拳は、単眼スライムを完全に押しつぶす。
さすがに雷獣のように取り込もうとしないだろうと踏んだのだが、驚いた事に身体を極限まで薄くして、ロックゴーレムを包み込もうとして来た。
これは驚いた!!
「ヒデキ殿、ロックゴーレムはそのまま動かないよう命令を!!」
エバートンからの指示が出された。
「分かりました」
ロックゴーレムに動かないよう命じた。
単眼スライムは徐々にロックゴーレムを包み込んでゆく。
暫くすると、ロックゴーレムは完全に単眼スライムに包まれてしまった。
包みこむと言うか、恐らく体の厚みは1ミリもないだろう。
ロックゴーレムが微妙にテカテカしているので、辛うじて単眼スライムに包まれているのが確認できるだけだ。
しかし、ロックゴーレムは雷獣や翼竜のような生物ではない。
魔法陣から召還出来るだけで、本来なら魔術師が魔法で作り出し使役する存在だ。
全体を包み込んだからと言って、溶かせるわけでも操れるわけでもない。
「魔術師は、ロックゴーレムを覆っているスライムを凍らせろ!!」
エバートンの指示で、複数の氷系統の魔法がロックゴーレムを襲った。
一番多かったのはブリザードか?
一連の魔法が収まると、凍りついたロックゴーレムが立っていた。
「動くように命じて下さい」
「はい」
ロックゴーレムに動くように命じると、表面に張り付いていた、氷が粉々になって落ちた。
「・・・これで終わりですか?すぐに復活するのでは?」
「ヒデキ殿、氷の欠片を全て『奈落』で消して下さい」
その手があったか!!
俺は『奈落』を発動する。
今度こそ単眼スライム(の欠片)は暗い孔の中へ落ちて行った。
途中で氷が解けて、欠片が合体し、元に戻っても落ち続けるだけだろう。
ご都合主義もご容赦を。




