上位魔族
さあ正念場です。
エバートン視点
デトレフ殿から彼らが選んだ道は罠ではないか?との相談があった。
彼の冒険者としての経験からくる勘は馬鹿にできない。
それにこのダンジョンは何かおかしい。
騎士団と共に300階層のダンジョンを攻略した事があったが、その時の最後の10階層のような威圧を感じる。
このダンジョンは早めに攻略しないと、手に負えなくなるだろう。
私の予想だが、このダンジョンはおそらく10階層。
何が何でも、ここで止めなければならない。
しかも3日以内にだ。
そのために出来るだけの準備をして来た。
私が開発した魔方陣のスクロール100枚。
対魔族用の魔道具を数点・・・本当はこれに最終兵器が加わる予定だったのだが、不測の事態により、それができなかった。
だが、私が20年以上かけて開発した魔方陣と魔道具。
これで充分闘えるだろう。
3日以上経てば、このダンジョンは20階層まで育ってしまう可能性がある。
すでに報告が届いているはずの王国騎士団が到着するまで、あと7日はかかる。
もし3日以上掛かってしまった場合は、できるだけ探索を進め、王国騎士団を待つしかない。
なんとか3日以内に・・・
「エバートン様!前方に巨大な魔方陣が!!」
親衛隊の言葉に思考が途切れ、前方を見た。
私の目の前に巨大な魔方陣があった。
「これは・・・・」
魔法陣に刻まれている文字・・・巨大な転移魔方陣だった。
私はあわてて、アイオロスとサラサにホットラインを繋いだ。
「アイオロス、サラサ、そちらの状況は?」
「これはエバートン殿、今連絡しようと思っておりました。先ほど巨大な転移魔方陣に遭遇しまして、回避ルートを探していたのですが、見つからず、転進するべきかどうか思案しておりました。」
「エバートン殿、こちらも今、大きな魔方陣が現れました」
アイオロスとサラサから同じ報告が来た。
「二人とも、こちらから連絡あるまで、魔方陣の前で待機!」
「「了解!!」」
次に私はホットラインをデトレフ殿に繋いだ。
□□□
ダンジョン第三階層を進む俺達の目の前に巨大な魔方陣が出現していた。
どうやら転移魔方陣らしい。
デトレフさんの勘が当たった。
転進かな?
と、思っていたところに、エバートンからのホットラインがデトレフさんに入った。
「これはエバートン殿、こちらやはり罠でした。今から転進しようかと・・・」
「デトレフ殿、そうではないのです!この第3階層そのものが罠です!!」
「何!?」
「我々どのチームの前にも巨大な魔方陣があるのです。つまりその転移先は・・・」
「魔物溜まり!!」
「さよう!!魔物溜まりを突破しなければ、第4階層に辿り着けない!!」
「なるほど、いかがいたしますかな?」
「確認したいのですが、魔物溜まりは一箇所だけですかな?」
「エリー殿!魔物溜まりはあそこだけかな?」
「え?あ?はい・・・そうです、このルートにはあそこだけしかありません」
いきなり質問が振られて、エリーはドギマギしながら応えた。
「ほう・・・エリー殿が探知を・・・」
「そうですが、何か?」
「いや・・・ならば、我々の眼前の転移魔方陣の転移先は、十中八九その魔物溜まりでしょう!!」
「では・・・」
「今、アイオロスとサラサにも繋ぐ・・・アイオロス、サラサ、その転移魔方陣は魔物溜まりに繋がっている。そしてこの階層には魔物溜まりはひとつしかない。全員同時に魔物溜まりに転移して、第3階層を突破する!!」
「承知した、エバートン殿カウントダウンを!!」
「お願いします!!」
「では、総員戦闘準備!!5、4、3、2、1、突入!!」
エバートンのカウントダウンで、俺達は転移魔方陣に飛込んだ。
一瞬周りが真白になり、無重力状態になった気がした。
『石の中にいる』とはならず、コロシアムよりも広い空間に転移した。
魔術師が相手も確認せずに、攻撃魔法をぶつける。
俺は連続攻撃魔法、コロシアムで使った、ファイヤー・キャノン、ストーン・キャノン、アイス・ピラーの5連続、合計15連続魔法をぶっぱなした。
多数いる魔物に攻撃魔法が当たり、閃光と共に大爆発が起こる。
爆発に余波を防ぐ防御魔法を、親衛隊のメイドさんが唱えていた。
爆発の閃光が収まり、敵の全体像が見えて来た。
前列にレッサーデーモン多数、そのうち死体が20ほど。
その後ろにグレーターデーモンが・・・多数・・・そして奥は見えなかった・・・
なんだ?この数?デーモンが合計200体以上だと!?
これが魔物溜まりなのか?
こんな所にワンパーティだけが飛ばされたら、あっと言う間に全滅だろう。
恐ろしい転移魔方陣だ。
しかし、こちらには幸いエバートンのホットラインがあった。
全員が別の場所から、魔物溜まりに転移できたのだ!
エバートンはグレーターデーモンを視認する前から、魔方陣を3種類広げて準備していた。
まずレッサーデーモンに第2階層で使った魔法を放つ、しかし、さすがにレッサーデーモン全てに標的には出来なかったようで、レッサーデーモンの半数が健在だ。
そこで、グレーターデーモンから、衝撃波が放たれた。
凄まじい数の衝撃波だが、エバートンは準備万端に味方を防御シールドで守っている。
衝撃波の影響で埃が舞い上がり、砂嵐のように前が見えなくなった。
「エリー、今だ!ファイヤー・ノヴァを!!」
「分りました!ヒデキ様!!ファイヤー・ノヴァ!!」
俺の声に応えて、エリーがすかさず自分の最大魔法を放つ。
砂嵐が収まる前に、広間全体が青白い閃光で包まれた。
二度目の閃光が収まると、レッサーデーモンは全滅。
グレーターデーモンも残り7体となっている。
しかも、7体とも焼け爛れていた。
エリーの持つ最大魔法ファイヤー・ノヴァはグレーターデーモンの防御シールドさえ無効にしたのだった。
よほど魔力を込めたのだろう、エリーは肩で大きな息をしていた。
「仲間を呼ばぬよう、前衛は牽制!!後衛魔術師はこちらに来て、グレーターデーモンにそれぞれ打ち込め!!」
俺と親衛隊、他魔術師がすぐに駆け寄って来る。
一番近くにいた俺が一番左のグレーターデーモンに闇魔法を放つ。
「左から順番に願います!!」
魔術師が俺の指示に従って、左からグレーターデーモンを狙い、闇魔法を放っていった。
7体のグレーターデーモンが闇魔法に包まれ、仲間を呼ぶ咆哮を封じられる。
闇が消えた瞬間に、前衛がグレーターデーモンに襲い掛かり、次々と倒していった。
グレーターデーモンが殲滅された後、奥を見ると、玉座に地球で言う所の軍服を着た男が足を組んで座っていた。
その男は余裕たっぷりに立ち上がった。
「やあ、なかなか手際がいいね。ちょっとびっくりしたよ」
当然こいつが、この部屋のボスだ。
エバートンはすかさず、防御結界無効の魔方陣を発動させた。
紫色の竜巻が、玉座の前に立つ男に向かい・・・ぶつかる前に搔き消えた。
「!?」
エバートンが珍しく驚いた表情をした。
「人間と言う生き物はせっかちだな、挨拶ぐらいさせてくれたまえ。私はデーモンジェネラル、ベリアルと申します」
その男は軍服のくせに、貴族の挨拶をした。
しかしデーモンジェネラル・・・魔将軍。
「上位魔族・・・」
執事のおっさんが、ぽつりと呟いた。
ベリアルという名前は悪魔72柱の1柱だったかな?
まあ地球での話で、この世界では72柱があるとは限らないが・・・
エバートンオリジナル魔方陣の攻撃を何もせずに、無効にしてしまう実力、洒落になっていない。
その実力を見せ付けられて、誰も攻撃をしなかった。
いや、皆、どう攻撃すれば良いか分らなかったのだろう。
「さて、ここでグレーターデーモンを召還して、あなた方を消耗させても良いのですが、時間がかかります。それにあなた方の何人かはまだ実力を隠していますね。せめてそれを使っていただきましょう」
ベリアルと名乗った魔族はたんたんと語った。
「私はあなた方の実力が見たいのです。その代わりと言ってはなんですが、このダンジョンの情報をお教えしましょう・・・」
ベリアルはこちらの判断を待つように、間を空けた。
誰も何も言わず、攻撃もしなかった。
「異論はないようですね。このダンジョンですが、あなた方のご想像通り10階層です。この第3階層は、ここが領域兼ボス部屋です。私を倒すか、私が撤退すれば、第4階層への扉が開きます」
この空間全部を指すようにベリアルは両手を広げた。
「それと恐らくはあなた方が最も知りたい事の1つをお教えしましょう。このダンジョンですが、1ヶ月は10階層のままです」
「1ヶ月だと!?」
エバートンが驚いて聞いた。
「ええ、ダンジョンマスターが1ヶ月ぐらいは10階層で良いだろうと言いましてね」
ベリアルはひょいと肩をすくめる動作をする。
芝居がかった奴だ。
「このダンジョンちょっと異常でしょう?どんどん階層を増やしてしまうと、下層の者たちが退屈してしまうのですよ。ですからここで一度撤退されて、戦力を整えられても良いですよ。その前に一戦はしていだきますがね」
「俄かには信じられないが・・・」
「信じる、信じないはあなた方の自由です。私が伝えたいことは、これで全てです。それでは、そろそろ戦闘を開始しましょう。今から私が僕を3体召還します。それを倒して下さい」
ベリアルが指3本を立てて言った。
「見事に倒せたら、私は撤退しましょう。それで第3階層はクリアとなります。あ、いや、少しだけお相手しますけど・・、召還無効の魔法は無意味ですから、魔力の無駄使いはお勧めしません・・・では・・・戦闘開始!!」
ベリアルそう言った瞬間に3体の敵が召還された。
プロットが今月分までは書きあがりました。
と言うか、ストックがそれしかない・・・もう少し増やさなければ・・・
毎日投稿が途切れてしまう・・・
ブックマークがいきなり増えて、びっくりしました。
皆さんありがとうございます。




