第2階層
さくさく行きましょう!!あ、攻略の話です。
セルゲイのバーサーカー(奥の手)で第1階層は無事に突破できた。
「デトレフ殿、冒険者チームはここで後続を待って下さい。我々は第2階層の道筋をつけておきますので」
「了解した、よろしくお願いする。ご武運を!!」
アイオロスとデトレフさんの会話を聞くに、俺達冒険者チームはここで後続を待つらしい。
スマホで時間を見れば、昼過ぎだった。
1階層突破に約6時間強か・・・早いのか遅いのか?
持って来た干し肉を齧りながら、デトレフさんに聞いたら、これだけのS級冒険者がいれば、普通だと言うことだった。
「ただなあ、それもパワーボムのセルゲイが奥の手を使ったからなあ。普通なら使う事がない、第1階層と言うのが、問題だな」
ふむ・・・本来ワンパーティで何階層も進めるパーティが1階層でリタイヤすること事態、異常なのだろう。
「まあ、この後は騎士団中心で攻略が進むだろうから、セルゲイのような無茶する必要はなくなるだろう。最初の予定通り遊軍として動く事になる。ヒデキ殿もそのつもりでな」
「分りました。ところで、増援の数はどれくらいだと予想されますか?」
「冒険者は、全く読めないが、ガウラン辺境伯の私設騎士団は中隊をもう1隊と、おそらく、ガウラン親衛隊が増援として来るだろう」
「親衛隊?」
「そう、ガウラン辺境伯の戦力は、街を守る私設騎士団の他にガウラン辺境伯自身を警護する親衛隊がいるのだよ。S級冒険者パーティに匹敵する実力を持つチームだ」
「チームですか?何人のチームです?」
「わからない、誰も実数を知らないんだ」
「何故ですか?」
「実数が分らなければ、ガウラン辺境伯を狙うのがより困難になるからだよ。辺境伯は、敵対する者に対する仕打ちで、恨みを持つものも多いからな」
「なるほど・・・」
ガウラン辺境伯は内政で善政を敷いている反面、外敵は多そうだ。
屋敷の警護を見ても、暗殺者が結構送り込まれているのではなかろうか?
「ヒデキ様、大勢の人がこちらに向かっています」
エリーが増援を探知したらしい。
「エリーさんの探知能力は、この中ではずば抜けていますな」
クラウスが言った。
エリーは褒められて嬉しそうだ。
その5分後にガウラン私設騎士団がやって来た。
「ガウラン辺境伯私設騎士団、左翼隊長サラサおよび、中隊、ただ今到着いたしました!」
隊長のサラサは長く綺麗なブロンドヘアを後ろでポニーテールにまとめていた。
足はスラリと長く、プロポーションはチェインメイルを着ていてもその素晴らしさが分った。
腰にはレイピアを携えている。
顔の形は美人の典型である瓜実顔、瞳は緑だった。
確か、ガウラン辺境伯が口説いているという、夫と別居中の人妻はこの人だったか・・・
後ろには15人の中隊が整列していた。
「サラサ殿!まさか左翼隊長である貴殿が・・・」
「それだけ今回の事件が深刻だと言うことです」
「!?」
私設騎士団の後ろから声がした。
「エバートン参謀!貴殿まで!?」
エバートンが騎士団の後ろから現れた。
その後ろには9人の男女がいた。
騎士団のように同じ鎧とローブではないが、綺麗な隊列を組んで立っていた。
構成は男性5人女性4人・・・この9人がガウラン親衛隊だろう。
よく見たら、辺境伯邸で会った執事とメイドが混ざっている。
この二人も親衛隊だったのか・・・
エリーがエバートンを見て、怯えて俺の後ろに隠れた。
「時間が惜しい、行動開始します。左翼隊長サラサ殿、騎士団が先行で、次に親衛隊、殿を冒険者チームで突入!!」
エバートンの声にサラサが中隊を率いて第二階層に突入した。
全員が足早に進んでゆく。
先に突入したアイオロスが露払いしていたので、モンスターとは遭遇せず、罠も全て潰してあったので、第二階層の行程は尋常じゃなく早かった。
分岐も潰してあり、30分程何事もなく進んだ。
「街の警備の方は大丈夫なのですか?」
「私設騎士団に加えて、冒険者をそちらにまわしました。S級冒険者が皆、依頼で街を出ており、上級冒険者しか街に残っていませんでしたので・・・」
「それで親衛隊とエバートン殿が・・・」
「それもありますが、今回は魔族と遭遇できそうなので、辺境伯に無理を言って、親衛隊を率いさせていただきました」
「なるほど・・・ダンジョン攻略の参考までに、報告しておきます。1階層のボスが真祖でした。このダンジョンは異常です」
「途中パワーボムから報告は受けております。それも踏まえて3日から5日でダンジョンマスター=魔族まで辿り着きたいですな」
俺はデトレフさんとエバートンがダンジョン攻略の展望を語り合っているのを、後ろから聞いていた。
3日から5日か・・・デトレフさんやシルバーファングのアドバイスで、非常食は1週間分を持って来てある。
俺とエリーで半分ずつ、ローブの一番大きな内ポケットに入れて持って来た。
それに加えて万が一のためのカロリーメイトも2ブロック別のポケットに入れてある。
水は魔法でいつでも補給できるから、心配はない。
俺が先の事を考えながら歩いていると、何回目かの分岐点で、片方しか矢印が描かれていなかった。
「アイオロス殿は左に向かったようですな。我々は右に行きましょう」
「デトレフ殿、しばし待たれよ」
「?」
デトレフが言うとエバートンが、自分の懐からスクロールを取り出しながら言った。
エバートンはスクロールを広げ、書き込んである魔方陣に魔力を込めた。
すると魔方陣から光り、ホログラムのように浮かび上がった。
「エバートン殿、ダンジョンに来られたのか?」
浮かび上がったアイオロスがエバートンに話しかける。
「うむ、現在の進み具合はどうなっている?」
「はっ!丁度領域ボスのエリアに突入する所であります!」
「よし、こちらもすぐに向かうので、突入せよ!」
「了解です!!それでは!!」
アイオロスの映像が消えた。
「聞いた通りだ!アイオロスの後を追う!」
魔方陣のスクロールをしまいながら、エバートンが進み始めた。
俺達は矢印に従って、急いだ。
しかし、便利な魔方陣があるものだ。
「デトレフさん、エバートン参謀が使っていた魔方陣は何なのですか?」
「あれはエバートン殿が独自で開発した魔方陣『ホットライン』だよ。予め特定の相手を指定して、離れた所から話せる魔法だ」
ほう『ホットライン』とな・・・偶然だが意味は分った。
しかし、エバートンのオリジナルか・・・なんとか写真に取れないかな?
そのためにはエバートンと懇意になって、俺のスマホや秘密も語る必要がある。
エリーを檻に飼って、実験をしていた男だ。
信用は出来ない。
残念だが、あきらめるしかないか・・・
色々考えている間に、俺達は領域ボスのエリアに到着した。
戦闘は既に始まっていた。
相手は・・・トロール、オーク、オーガの群れ。
それぞれ、20体以上はいる。
そして領域ボスは、双頭のライオンの頭、ヤギの体躯、二股の読破の尻尾。
体長は10メートル、体高は2メートルぐらいのキマイラだった。
トロール等のモンスターは騎士団前衛が苦戦しながら数を減らしている。
キマイラの双頭のライオンがブレスを吐くが、後衛が防御結界で防いでいる間に、別の後衛が攻撃魔法を叩き付けていた。
俺達は魔物達を各個撃破するために、散らばった。
これだけの数がいれば、いくら体力が強大な魔物達でも問題ない。
と思っていたら、それどころではなかった。
エバートンが再びスクロールを取り出し、魔方陣を広げた。
彼が魔力を込めると、無数の白い光線が迸り、魔物に向かって行った。
その光線はそれぞれ魔物にぶつかり、魔物を白い光で包み込んだ。
光が消えた時、そこには凍りついて、動かなくなった魔物達の氷像があった。
氷像は立ち尽くしているように見えたが、一体のバランスが崩れ倒れると、全てが将棋倒しのように倒れ、砕け散った。
「ふむ、次は・・・」
エバートンが再び魔方陣に魔力を込めると、今度は一筋の太い光線が、キマイラに向かって行った。
先ほどと同じように閃光で包まれた後、凍りついたキマイラの氷像が、そこに立っていた。
エバートンの魔法陣・・・恐るべし・・・
エバートンの実力恐るべし・・・
暫くはエバートン無双かな?




