調査
今回はさわりの部分です
レイト村出発当日早朝、俺達はガウラン辺境伯邸の前に集合していた。
緊張からか、なかなか寝付けなかったが、エリーが添い寝をしてくれてなんとか睡眠を取る事ができた。
空が白み始める頃には起きて、出発の準備を整えた。
ローブの内ポケットと腰に巻くポーチには、ポーション各種を詰め込んだ。
当然スマホもフル充電してある。
準備万端で、辺境伯邸へと向かった。
途中シルバーファングの面々と合流。
辺境伯邸に到着という流れとなった。
スレイプニル4頭立ての馬車がすでに停まっている。
俺達はすぐに大型の馬車に乗り込み、出発を待つ。
「出発します!!」
御者からの声が聞こえ、馬車が動き始めた。
グンと加速するのが分かった。
大きな馬車、しかも御者を入れて18人もの人間が乗っているのに、スレイプニルはものともしない。
馬車の覗き窓から、外を見たら馬の倍以上の速度で進んでいた。
魔物の力は半端ない。
馬車の内装は外装に劣らず豪奢なつくりで、椅子はふかふかのクッションが敷いてあり、横壁には金の刺繍で飾られた、レースのカーテンがかけられていた。
冒険者チームは各々自分の装備の点検に余念がない。
いつもは煩く無駄話が耐えないパワーボムの面々も、真剣な表情で装備やポーションのチャックを繰返している。
俺もローブとポーチに入れたポーションの種類を何度も確認して、心を落着かせるように努力をしていた。
そして馬車はレイト村の少し手前で停まった。
全員馬車から降りて、デトレフさんの言葉を待つ。
「この先にレイト村の入り口がある、騎士団到着は昼過ぎだろうから、それまでに索敵は済ませておきたい。この中でこの距離から魔力探知できる者はいるか?」
「おいおい、隊長!!さすがにきついだろう?うちのチームには、いないぞ」
セルゲイが無理だと首を振る。
パワーボム、ゴールド・エクリプスも同様である。
「いないか・・・仕方が、「あのう・・・」
デトレフさんの言葉にエリーが声を被せた。
「ん?どうした?奥さん」
「正確な数じゃなくて良いのなら、ある程度この距離で探知できます」
「まじか!!」
セルゲイが驚きの声を上げた。
「今から始めますね」
エリーはレイト村の方へ向き目を瞑った。
しばらくじっと佇んでいたがが、やがて・・・
「手前に100以上の魔物の気配、多分ゴブリンです。後は・・・・え?どういうことかしら?」
エリーが目を開けて、首をかしげる。
「どうしたんだ?エリー?」
「手前のゴブリンの群れは、存在がはっきりしているのですが、奥にいる魔力の大きな魔物達の位置がおかしいのです」
「位置がおかしいとは、どう言うことだ?」
「奥にいる魔物は地面の下にいるようなのです」
エリーが困惑した表情で、俺を見た。
「地面の下だって!?まさか・・・」
「!!なんだと?」
「地面の・・・」
冒険者の面々も驚愕している。
「キュロス、ローラ、ベッツ!ゴブリンどもに気付かれずに、調べられるか?」
デトレフさんが各パーティの中で探査系に秀でた者達に質問が飛んだ。
「最悪、ゴブリンをトレインして来ていいなら・・・あくまでも最悪ですが」
名指しされた3人を代表して、キュロスが答えた。
「ゴブリン程度なら、100匹や200匹、どうってことはない、行って来てくれ!」
デトレフさんが命令したと同時に3人はレイト村の方へかけ出して行った。
「よし、こちらは全員戦闘準備だ!ゴブリン以外との戦闘もありうる。油断するな!前衛にセルゲイ、エルザ、クラウス!他後方支援体制!」
俺とエリーも含めて、フォーメーションを組む。
緊迫した時間が流れた。
両側の木立の間では、小鳥が囀っている。
そよ風が吹き、陽も上りきって、喉かな昼前の一時を演出していた。
□ □ □
レイト村入り口
「普通に見張り番の二匹・・・居眠りしているぜ!」
「ゴブリンの知能じゃ、長時間の見張りとか無理!」
「ゴブリンリーダーとかゴブリンロードがいなければ、あれが普通よ」
ベッツ、キュロス、ローラの三人はゴブリンの様子を呟いていた。
「魔人とかが仕切っているから、規律もしっかりしているかと、思ったんだけどな」
「たとえ魔族でも無理、ゴブリンはリーダーかロードにしか仕切れない」
「そうなのか?やっぱりほとんど本能で生きているんだな」
「じゃあ、さっさと排除しちまおうぜ」
「ベッツ近くに他のゴブリンや魔物はいるか?」
「いや、いない」
「じゃあ遠慮なく・・・」
ローラとキュロスが投擲用のダガーを投げた。
投げられたダガーは2匹の見張りの喉につきささり、声も出せずにこと切れた。
3人は村の入り口まで忍び寄り、2匹のゴブリンの喉に刺さっているダガーを回収した。
「ベッツ、中の様子はどうだ?」
「今サーチを使う!」
ベッツは目を閉じ集中した。
「ほとんど家屋の中だ、外に出ているのは6匹だけ」
「よし、一人2匹ずつな、速攻でヤルぞ!」
「「了解!!」」
3人は合図と共に村に突入した。
手前にいた3匹のゴブリンはあっという間に喉をかき切られ絶命し、奥にいた3匹は投擲されたダガーとナイフによって、同じく絶命し倒れた。
「気付かれたか?」
「大丈夫だ、何をしているか知らないが、家からは出てくる気配がない」
「やはりおかしいな?ゴブリンだけ?」
「他の魔物や魔人はどうしたんだ?家にいるとは思えないが?」」
「とにかくダウの森の方へ行ってみるぞ!」
3人は音も立てずに、村を駆け抜け、ダウの森への村の出口で立ち止まった。
「これは・・・・」
「すぐに戻るぞ!!」
キュロスが言った。
□ □ □
「お、帰って来たぞ!!」
セルゲイが言うと同時に、探索に出ていた3人が帰って来た。
「モンスターのトレインはなしだな・・・よし、直ぐに報告を!!」
警戒を解いて、デトレフさんが聞いた。
キュロスが息を切らせながら、言った。
「みんなの予想通りだ!村のダウの森方面出口に、でかい穴が開いている。間違いなくダンジョンだ!!」
「この3日間でダンジョンだと!!」
「ダンジョンマスターは魔族だな!それもかなり強力だ・・・」
「やはり魔族か・・」
冒険者パーティの皆がザワつき始めた。
「よし、ダンジョンなら、もうすぐ到着する騎士団を待って、レイドを組んで対処するぞ!できればラスボスの扉の前までは進んで、調査を終えるか、全体の損耗があまりないなら、扉を開けてラスボスの確認まで行くぞ!!」
デトレフさんがまとめた。
そして、スレイプニルの御者に言った。
「御者殿、聞いた通りだ。急ぎブルネルに戻り、冒険者ギルドと辺境伯私設騎士団への報告と増援要請を頼む、途中騎士団とすれ違うだろうが、そのまま止まらずに行ってくれ!騎士団への説明はこちらで行う!」
「はい、急ぎ向かいます!!」
御者は空馬車をブルネルへ向かわせた。
「騎士団とレイドかよ・・・」
「何階層あるかわからないが、途中の階層は各パーティ自由に動いて良い。但し階層ボスが手強い場合、協力する。それでいいな?」
「ならいいか・・・」
セルゲイは騎士団が嫌いらしい。
デトレフさんがうまくなだめていた。
「王国の使者を待たないのですか?」
俺は疑問に思い、デトレフさんに聞いてみた。
「ダンジョンは時間が経てば経つほど、階層が深くなり、攻略が困難になるのでね。なるべく早く潰す必要があるのさ、今回で潰せれば最高だが、ダメでも使者を待たずに、冒険者とガウラン辺境伯私設騎士団を増員して、ダンジョン攻略に挑むことになるだろう」
「なるほど・・・」
ダンジョンは若いうちに潰せってことか。
確かに王国の使者を待ち、王国の騎士団を待っているのは愚作か?
王国騎士団が来ても、待っている間にダンジョンは成長し、戦力が増えても、苦労は同じ。
返って犠牲者が増えるかもしれない。
俺がそんな事を考えていると、騎士団が到着した。
次回からダンジョン攻略が始まります。




