襲撃
さて、ここからは戦闘です。
次の日、朝早く目覚めた。
イレーネの母親ルーラにどう話せば良いのか考えていて、あまり眠れなかったのだ。
決して、イレーネの裸が目に焼き付いて興奮したからではない!!
ベッドに腰掛けて思い悩んでいた。
冒険者登録しても、危険なところに行かなければ良い・・・
イレーネが、おとなしく安全な場所での依頼しか受けないとは思えない。
ルーラを説得するのは、無理じゃないか?
思考がここでストップしていた。
しかし、俺の思考停止はまったく無意味になってしまった。
いきなり村中に半鐘の音が鳴り響いたのだ。
「ゴブリンだー!ブリンが村に侵入したぞー!!」
村人の声が聞こえた。
俺は上着を着て、スマホを持ち、外に飛び出した。
ノーマが胸ポケットに入っている。
「エリー、続け!!」
(はい!!)
外を見ると、ゴブリンがざっと100匹ほどだろうか、村に侵入していた。
ゴブリン単体の力は、子供ぐらいの力しかない。
ダウの森では少数のゴブリンにしか遭遇しなかったから、エリーが瞬殺していた。
ゴブリンの本当の恐さは、その数だ。
ゴブリンは仲間が殺されようが、数にものを言わせて襲いかかって来るからだ。
村の男たちが剣や農具の鍬を持ち戦っている、女達は当然家に隠れている。
ゴブリンは女と見れば年齢に関係なく、攫って犯し、子供を産ませる。
雌は存在しない種族なのだ。
異種交配で生まれる子供は必ずゴブリンになる、おぞましい種族だ。
デトレフさんが、ロングソードを持って先頭に立って戦っていた。
素早い動きで、ゴブリンを切り捨てて行く。
かなりの腕だ!
「デトレフさんは剣士だったのか、俺はデトレフさんの横につく、エリーは危なそうな村人を助け、ゴブリンを蹴散らして行ってくれ!!」
(承知しました!!)
エリーが飛び出し、混戦の中に入って行く。
早速ゴブリンを数匹なぎ倒していた。
倒されたゴブリンに村人が止めを刺してゆく。
「ヒデキ、これ以上ゴブリンが入って来ないように、いつもの結界を張るわ!!」
ノーマがポケットから声を掛けてくる。
「村は広いぞ、大丈夫なのか?」
「これぐらいの広さなら、関係ないわ。いつもと同じよ」
「頼む!!」
「任せて!!」
ノーマは両手だけポケットから出し、魔力を込めて結界を張った。
頭は完全にポケットの中だ、これなら周りは俺が魔法を使っていると思うだろう。
俺はすぐにデトレフさんの横についた。
スマホの写真から既に魔法陣を読み込み済みだ。
訓練でスマホに触れなくても魔方陣を画面に出していれば、魔法は発動できるようになっていた。
「ファイヤー・キャノン!!」
無詠唱でもいけるが、左手にスマホを隠し魔力を込めて、わざと右手をゴブリンの方に向ける。
炎の塊が5匹のゴブリンにぶつかり、燃え上がる。
ゴブリン達は、あっと言う間に消し炭になり、その後ろのゴブリンも火傷を負って倒れている。
「やるなあヒデキ殿!!」
俺に声をかけながらも、すかさずゴブリンにロングソードで止めを刺すデトレフさん。
「この調子で、一気に片づけてしまいましょう!」
「おうさ!!」
エリーは?と見れば、ゴブリンを各個撃破している。
村人達もゴブリンを圧倒し始めた。
「ファイヤー・キャノン!!」
「ウラー」
「も一つファイヤー・キャノン!」
「トリャー!!」
剣士と魔術師の連携って凄いな!
あっという間にゴブリンが殲滅されて行く。
これなら被害なく終わらせる事が出来る!!
ゴブリンも残り10匹を切った。
これなら被害なく終わらせる事が出来る!!
と思った時、結界アラームがけたたましく鳴り響いた!!
「何だ?」
「何の音だ!!」
丁度ゴブリンをほぼ殲滅した時だった。
ゴブリンを倒し、ほっとした村人達がきょろきょろしながら、騒然としている。
「俺のアラーム結界です、手ごわいのが来ます!!」
「戦いながら、結界を張っていたのか?たいしたものだ!!」
俺の説明に、デトレフさんが警戒していると、ダウの森のほうからでかい複数の大きな影が迫って来ていた。
「トロール・・・だと?」
またもファンタジー世界の定番、邪悪な存在。
再生能力が高く、剣で腕を切り落としてもすぐに再生してしまう。
倒すには首を落とすか、焼き払うしかない。
しかも動きは鈍いが、尋常ではない怪力だ。
地球のファンタジー通りなら、とてつもなくやっかいな存在だ。
そして間違いなく、邪悪な意思が感じられた。
3メートルはあるだろう邪悪な巨人が8体、結界を超えて村に侵入して来た。
「馬鹿な?ダウの森でトロールが確認されたことなどない!!しかも8体だと!!」
「そうだとしても、現実にトロールがいるのは事実です、村人を避難させましょう!!幸いゴブリンは殲滅しています。」
驚くデトレフさんに、俺は提案した。
「分かった!みんなー!!ブルネルの方へ逃げろ!荷物は最低限必要なものだけだ!!みんな急げ!!それと馬を使って、ブルネルの冒険者ギルドに魔物の異常発生を報告してくれ!トロール8体が村へ侵入した!と!!」
デトレフさんの決断は早かった。
そして、さすがは開拓村、と言うかこの世界だからか?
危機管理能力は地球とは、段違いだった。
魔物がいるこの世界では。日常は常に死と隣あわせなのだろう。
全員すぐに自宅へ戻り、必要なものを持ち出して、整然と村から退避してゆく。
開拓村なので、老人はいない。
皆、日常茶飯事のように、列を作って行動している。
馬やロバに荷物を乗せる者、リヤカーのようなもので運ぶ者、風呂敷のような包みを持つ者、様々だ。
すると、イレーネとトムが俺達の方に駆け寄って来た。
「ヒデキさんとデトレフさんはどうするの?」
「儂とヒデキさんは冒険者だ。お前たちが無事に逃げるまで、ここで奴らを食い止める」
「無茶だよ、トロールが8体なんて、Sランクの冒険者のパーティか騎士団でもいなければ・・」
「何も倒すとは言ってはいない!足止めするだけならどうとでもなる!!いいから早く行け!」
「でも、でも、ヒデキさんは、まだ冒険者になったばかり・・」
「大丈夫だ!ヒデキ殿は上級の魔術師の実力がある!!さっきのゴブリンとの戦闘で、よく分かった!」
「でも、でも・・・」
それでも逡巡するイレーネに、トムが言った。
「イレーネ、行こう!ルーラおばさんが待っている」
「でも、でも、」
「イレーネ!早く行け、すぐに追いつくから!トム!早くイレーネを連れて行け!お前がイレーネとルーラさんを守るんだ!!」
「イレーネ、行こう!」
トムが無理やりイレーネを引きずって行く。
その迫力に負けたのか、イレーネもついて行った。
「ヒデキさん、無事に戻って来てね、お母さんと話す約束が残っているんだから!」
「分かったから、早く行け!!!」
「話って、何だよ?」
「うるさいわね、あんたには関係ないの!!」
ブルネルに行ったら、話しも何もない気がするのだが・・・
きっと、イレーネなりの俺への励ましだろう。
二人が遠ざかり、トロール達が、のろのろと近づいてきた。
まだ息のあったゴブリン達に止めを刺し焼き払ってから、エリーが俺の横に走ってやって来た。
(ヒデキ様、ゴブリンは全部片付きました)
「やれやれ、時間稼ぎするにしても、数が多いな」
「ファイヤー・キャノン!」
試に撃ってみるが、燃え上がった所から再生が始まり、やがて炎を再生速度が上回って,鎮火してしまった。
「噂にたがわぬ・・いや、それ以上の再生力だな」
「これがトロールって奴だ、ヒデキ殿も冒険者になったのなら、覚えておいたほうが良い」
できれば、倒し方も教えて欲しいものだ。
この時、俺にはまだ余裕があった。
ダウの森での経験があったからだ。
しかし、この後俺の予想を超える事が待ち構えていたのだ。
いよいよ話が転がり始めました。
ここからが、本番です!!




