冒険者ギルド
意外と苦戦しました。
おとなしい話のほうが、プロットから本文にしにくいです。
ギルドに入ると、長机が1つ、手前に椅子が1つ置いてあり、奥の椅子には俺より10歳以上年上に見えるおっさんが座っていた。
机に足を投げ出し、グレーのシャツにグレーのズボン。
体型は中年の代表たる中肉中背。
しかしさすがに冒険者ギルド、体は引締まっていた。
髪はだらしなく伸びたものを、申し訳程度に後ろにくくっている。
顔は無精ひげがまばらに生えていて、似合わないことはなはだしかった。
ひげを剃れば、案外いい男かもしれない。
気持ち良さそうに寝ていた。
「デトレフさん、また居眠りして!!お客さんだよ!!」
「おわっ!?」
デトレフと呼ばれた男は、驚いてひっくり返りそうになったが、うまくバランスを取って堪えた。
「なんだと!イレーネ、居眠りなんかしてねえし!!」
「はいはい、分かったから!いいから、ほら、お客さん!」
「おっ?こりゃ珍しいな、こんな辺鄙な冒険者ギルドに来るとは!何の用だい?兄ちゃん?」
「冒険者登録したいらしいよ!」
「ほう、普通はブルネルで登録するのに、こんな寂れたところで登録とはね・・・訳ありかい?」
「いや、ダウの森から来たからね。こちらの支部が一番近かっただけさ」
デトレフが訝しげな表情をした。
何か失言をしてしまったか?
「あの・・・何か?」
「ダウの森だって?森を抜けて来たって言うのか?あそこはこの2週間、森の植物系魔物が大移動する時期だ。お前さん運がいいな。大移動にぶち当たらないとはな」
「あー、あれが大移動だったのか?」
「「エッ?」」
イレーネとデトレフが同時に叫んだ。
「お前さん大移動に出くわして、無事だったのか?」
「おじさん、もしかして有名な冒険者なの?」
「死にかけましたよ」
「それで済んだら、運が良い」
なんでもこの時期はダウの森では、植物系のモンスターが生息地を大移動する時期らしい。
『そう言えば、そうだったわ、忘れていたわ!』
ノーマが小声で呟いた。
お前なあ・・・・
イレーネとデトレフが凄い、凄いと、詳細を聞きたがる。
「いえ、運が良かっただけですよ。それだけです!!」
面倒なので笑って誤魔化しておいた。
「それより、冒険者登録したいのですが」
「あ、ああ、すまん、すまん、ちょっと待って」
「えっ!?冒険者じゃないの?」
イレーネが不思議そうに、こっちを見ている。
会ったときに登録したい言っただろうが・・・と突っ込みたいが止めておいた。
デトレフのおっさんは後ろの棚にあった20センチ四方くらいの箱を下ろして蓋を開け、中から名刺大のカードを取り出した。
「これに名前書けるか?」
机の上に先ほどのカードと、羽ペンにインクを取りだし、デトレフは言った。
「字は書けないので、代筆お願い出来ますか?」
「分かった、名前は?」
「ヒデキ」
「ヒデキね」
「職業は?」
「魔術師」
「魔術師・・・魔法で大移動を抜けたのか・・大魔術師だな」
「そのトカゲは使い魔か?」
デトレフがエリーをチラリと見て聞いた。
使い魔で登録すると、後々面倒そうだ。
エリーはブルネルでは人の姿になる予定だからな。
「いいえ、懐いてくれているだけです」
「ほう!テイムした訳じゃなくて?」
「ご飯あげたら、懐かれました」
(ヒデキ様、ひどい><)
「今ではかけがえの無い相棒です」
(ヒデキ様!!)
「まあ使い魔じゃなければ登録しなくても良いな」
「そうですね」
デトレフはカードに書き込んで行く。
その後、先ほどの箱にカードを入れて蓋を閉め、蓋に描いてある魔方陣に魔力を込めた。
箱全体が蒼白く発光して、数秒で消えた。
「ほい、登録完了だ。これでどこのギルドでも冒険者として扱ってくれる。無くすなよ。再発行はペナルティがあるからな」
「ペナルティって?」
「金貨一枚だ」
高いのか安いのかわからないな。
「知っているだろうが、冒険者の説明をしておくぞ。これが俺の仕事だからな」
「冒険者は4つのランクに分けられている。下から初級、中級、上級、スペシャルだ。冒険者は初級から初めて、依頼をこなして行けば、自動的にランクが上がってゆく」
「自動的に?」
「そう勝手にカードのランクが上がって行くんだ」
便利に出来ている。
「特例で突発的なモンスターの発生とかを、依頼を受けないで討伐して、証明さえできれば、モンスターのランクによっては、飛び級で上がれる時もある。君がダウの森でモンスター大移動に遭遇して、抜けて来たことを証明できれば、一気に上級なんだがな・・・」
「どのように証明するのですか?」
「討伐したモンスターの部位をギルドに持っていくのさ。すると報奨金が支払われ、上手くいけば、ランクも上がるって言う寸法さ」
「全部燃えてしまいました、無理ですね」
「炎系の魔法を使ったのか・・・火事にならなかったかね?」
「その後、消火しておきました」
「そうか、水系の魔法も使えるのか、それなら、すぐに上級に上がれるさ。君のような魔術師は需要があるからね」
魔術師はこの世界でも貴重らしい。
これならやっていけそうだ。
まずは路銀を稼がねば・・・
「説明ありがとうございます、早速ですが買取りお願いできますか?」
「ああ、あまり高価なものはブルネル支部まで行ってくれよ」
「いえ、たいした物じゃありませんので」
俺はエリーが背負っていた剣2本とメイス、盾2個を机に置いた。
「たしかに、たいした物ではないな・・・買値で銅貨20枚ってところかな」
デトレフが一つ一つ手にとって値踏みした。
剣もメイスも錆びてぼろぼろ、盾にも穴があいているからな。
買い取ってもらえるだけありがたい。
「それで良いです、ところでここには宿屋とかありますか?」
「宿屋って名が付くものはないが、前の道を奥へ行って、すぐ右手に食堂が主な商売で、頼めば泊まらせてくれる所は、1つだけある」
「一泊いくらです?」
「夕食と朝食付きで、銅貨7枚だ」
2日しか泊まれないか・・・まず依頼を受けて金を稼ぐか。
街に行く前に、エリーの服を手に入れなければならない。
ここでなんとかしないと。
「ここで依頼って受けられますか?」
「ん?いいけど、ろくなの無いぞ。ほら、その壁に貼ってあるだろ」
「読めません!!」
きっぱり言う、恥ずかしくなんかないもんね!!
「ああ、そうだったな。えーとダウの森入り口で薬草の採集、近くの沼で薬草になる水草の採集、小川で薬になる水草の採集」
「して、いくらくらいになりますか?」
「どれも、銅貨2枚だな」
だめだ、これではお金が稼げない。
どうしよう?
「こういう開拓村じゃ、冒険者がやる仕事はないんだよ。この村の子供が小遣い稼ぎにやるようなものなんだ」
「そうですか・・・・」
今日はもう日が暮れる、宿屋で銅貨7枚払い一晩休んでから考えよう。
俺は冒険者ギルドを出て、日が暮れるまで村を見学する事にした。
イレーネは何故か冒険者ギルドを出てからもついて来て、村の事を色々説明してくれた。
助かるが、彼女の目的がさっぱりわからない?
こずかいはあげられないし・・・・
「この水車小屋で、小麦粉を作るんだよ」
「あ、ここの家が村長さんの家だよ」
「ここで村の子供達が、勉強教わるんだよ」
「イレーネは行かないのか?」
「私は13歳だから、もう行かなくて良いんだよ」
「そうか、では家か村の仕事を手伝わなくて良いのか?」
「おじさんの案内しているのが仕事だよ」
どう見てもサボりだと思うのだが・・・
「イレーネ!お前仕事しないで、何やってるんだ?」
声のする方を見たら、イレーネと同い年くらいの男の子が立っていた。
白い半そでシャツに焦げ茶色のズボンをズボン吊で吊っていた。
綺麗な金髪は適当に短く切ってあり、少しひょろ長い顔はそばかすがいっぱいだった。
いかにも開拓時代のアメリカの腕白小僧のような風貌だった。
「何よ、トムこそ、薬草の採集はどうしたのよ?」
おお!!名前まで!!これでソーヤーなら完璧だが、名字はないだろうな。
「俺はもう終わらせたよ、お前の仕事手伝ってやろうと思って、洗濯場へ行ったんだぞ。なのに、そんなおっさんに着いて歩いて!何やってるんだよ!」
トム君、君もおっさんと言いますか、ダブルで傷ついたぞ!
なかなか登場人物が増えません。
もう少しご辛抱下さい。




