異変
プロットを少しずつ書き溜めています。
現在40話まで、書き溜めました。
しばらくは毎日更新できそうです。
午前2時半、けたたましくアラームが鳴り響いた!
ご丁寧に丑三つ時だ。
エリーが飛び起きて、臨戦態勢に入った。
二重に張っていたアラーム結界が両方鳴り響いたため、ノーマもさすがに起きて、上着の胸ポケットから顔を出している。
結界を越えてくるのは、危険な魔物だ。
前回のウンディーネ並みかそれ以上に危険な敵の可能性が高い。
何だか分からないが、かなりの数の魔物がうごめいている。
(かなりの魔力を感じます、ヒデキ様お気をつけ下さい)
エリーの声にも緊張が走る。
「焚き火じゃあ、よく見えない。明るくするわよ!少し目を細めて、絶対直接見ちゃだめよ!!・・・」
ノーマは右手を挙げ、真上を人差し指で指差す。
指先にソフトボール大の丸い光の玉が浮かんだ。
「ソーラーライト!!」
ノーマの声と同時に、それが指先に集まるように小さくなり、指先からレーザービームのような細い光線が上空に走った。
その後すぐ、目を細めた視界に強い光が入って来た。
徐々に目が慣れてきたので、目を開くと樹木の上部に小さな太陽のような光があった。
普段は惰眠を貪り、だらしない妖精なのだが、いざと言う時のノーマの魔法は凄まじい。
「何だ?こいつら?」
ノーマの創り出した光に照らされて、俺達を多数の魔物が取り囲んでいた。
「木、キノコ、花?どうして動いているんだ?」
(エルダートレント、アサシンマッシュ、アルラウネ、みんな植物系の上位モンスター、基本動作は遅いけど、これだけ数がいると逃げ出せないわ、戦うしかありません。捕まったらそのまま養分にされてしまいます)
「俺の剣は役にたちそうもないな」
「私の魔法だと、風系が一番通用しそうね。、かなり厳しいけど頑張ろう!!」
いつも怠惰なノーマが気合を入れている、それだけヤバイって事だ。
それにしてもこの数は異常だ。
何がこれだけの数の魔物を引き寄せたのか?
まさか俺のせいではないだろうな?
(ノーマ!私が最大火力で焼き払います。木々に飛び火したら、消火をよろしくお願いします!)
「了解!!まかせて!!」
(ヒデキ様少しお下がり下さい、ファイヤー・ブレスに炎の魔術も乗せますので、熱気がすごいと思います!)
「分かった!!」
情けないが、今の所、俺は何もできない。
いつもなら速攻でファイヤー・ブレスを使うエリーが、力を溜めるように少し膝を曲げる。
エリーの体が褐色に変わってゆく。
するとエリーを中心に大きな魔方陣が浮かび上がった。
(ファイヤー・ブレス!行きます!!)
気合と共にエリーは、今まで見たことも無いファイヤー・ブレスを放った。
「凄い!!」
青白い炎が、まるで消防車の放水のように魔物目掛けて走った。
炎は魔物にぶつかると、爆発するように燃え広がった。
その爆発は前方の魔物達を一斉に焼き払い、そのまま後方の魔物にも飛び火して燃え上がった。
当然周りの樹木にも飛び火して、燃え始める。
凄まじい火力だ。
「ノーマ、樹木だけ鎮火できるか?」
「無理だから、後で一挙に消す!!」
「分かった、後で頼む」
一番前の列は完全に燃え尽きている。
しかし、魔物の数は減ったように見えず、火が燃え移っても、のろのろと近付いて来る。
後ろはノーマがウインドウォールを使い、魔物の前進を妨げている。
「エリー!こっちにもブレスお願い、ウインドウォールじゃ足止めになっても倒せない」
(分かりました、今行きます!!)
踵を返したエリーはノーマの前に立ち、再び魔方陣を展開させた。
再び、凄まじい威力のファイヤー・ブレスが放たれる。
前回同様、一斉に前列の魔物達が焼き払われた。
前後にファイヤー・ブレスを放ったために、周りは炎で囲まれる形だ。
しかもこのまま放置すると、鎮火できない規模になってしまう。
火災死は避けたい。
「ノーマ、一旦消火してくれ!このままでは取り返しが付かないことになる!!」
「了解!!」
ノーマは両手を真上に上げた。
その両手から、蒼白い丸い光が浮かび上がる。
「ヘヴィ・レイン・フォールダウン!!」
ノーマの呪文と共に、光は上空へ飛び去り弾けた。
あっと言う間に大粒の雨が降り出し、炎を消して行く。
やがて、視界さえも遮る豪雨となった。
その中、エリーは魔物に飛び掛り、倒してゆく。
俺も燃えかけて弱っている魔物を、剣で切り払う。
ノーマが両手を下ろすと、ぴたっと豪雨が止んだ。
消火の名残の煙と水蒸気が凄まじく、もうもうとしている。
(ノーマ、まだ魔法は使えますか?)
「大丈夫、出し惜しみなしで行くから!!」
(分かりました!ファイヤー・ブレス行きます!!)
一向に減る様子のない魔物は、また包囲を狭めて来ていた。
どれだけの数の魔物が集まって来ているのだろう?
エリーの周囲に大きな魔方陣が浮かび上がる。
エリーのファイヤー・ブレスは前方180度の敵を焼き払った。
そのまま反転してもう180度を焼き払う。
燻っていた木々が再び燃え上がった。
当然魔物も巻き込まれ、消し炭の山と化していく。
ノーマが再び両手を真上に上げた。
「ヘビィ・レイン・フォールダウン!!」
ノーマが豪雨を降らし、消火してゆく。
これを15回繰返した。
もはや周辺に木々はない、全て消し炭となり豪雨で流されていた。
恐らく半径50メートルはある大きな広場が、俺達の周りに出来ていた。
しかし、魔物は未だに俺達に迫って来ている。
倒した魔物の数は、数百になるだろう。
異常事態だった。
エリーもノーマも粗く息をして、辛うじて立っている状態だ。
魔力もあまり残っていないのだろう。
植物系の魔物ばかりなので、じりじりと迫って来ている。
あれだけの数の魔物を倒したのに、終わりが見えなかった。
「このままじゃ不味い、包囲を抜けて逃げるしかない」
(でもこの数では、途中で捕まってしまいます)
「私やエリーは逃げられる可能性はあるけど、ヒデキは無理よ」
(ヒデキ様を見捨てるなんて、ありえませんからね!!)
有難いが、異邦人の俺にそこまで義理立てする必要はない。
ここで死ぬならそこまでの運命だったのだろう。
エリーとノーマに出会わなければ、もっと早くに、くたばっていたはずだ。
なんとか、エリーとノーマだけでも逃げて欲しい!!
「ノーマにエリー、力がまだ残っているなら、俺を見捨てて逃げろ!」
(嫌です、私はヒデキ様とずっと一緒です!!)
「私もここまで一緒に来た仲間を見捨てるほど、低級な精霊じゃないからね!」
そうか、一連卓上と言ってくれるのか、知り合ってからまだひと月も経っていないのに。
種族も違うのに。
俺なんか見捨ててくれていいのに。
ならば、俺も限界まで最大限の努力をしよう。
死力を尽くそうではないか!!
「エリー、ノーマ、あと一度でいい、同じようにやれるか?」
(出来ます、でもその後は・・・)
「私も出来るけど、後は倒れると思うけど」
「試して見たい事があるんだ、頼む!!やってくれ!!」
(分かりました!ヒデキ様を信じます!)
「付き合ってあげるわ」
エリーが身構える、魔方陣が浮かび上がった瞬間、俺は素早くスマホで写真を撮った。
エリーが前180度を焼き払う。
樹木がないので消火の必要はない。
(ヒデキ様・・私は・・もう・・・)
「エリー、よくやった!休んでいろ!!」
エリーは膝から崩れ落ち、どうっと倒れた。
「ノーマはそのまま待っていてくれ」
「何する気?」
「これが成功しなけりゃ、あきらめてくれ、できればノーマだけでも逃げてくれ」
「嫌よ!!今更、何を言ってるのよ?いいからやりさい」
「じゃあ、やってみるか」
俺はエリーのブレスと逆方向に向いた。
一世一代の賭けだ。
今回と次回がお話のターニングポイントになります。




