龍皇帝
なんとかペースを保てそうです。
ブルツに案内されて皇帝陛下との謁見の間に向う。
相変わらず廊下の左右には高価そうな装飾品、天井には豪華なシャンデリアが続く。
暫く行くと、ひときわ立派な扉の左右に、2人の執事が立っていた。
(この方達はドラゴンですね)
エリーが俺に念話で語りかけた。
エリーは皇帝に謁見する時に、元にもどる事になっているので、今は男装のままだ。
「ブルツです!!謁見を望む者達を連れて参りました!!」
細身の身体の何処からそのような声が?と思うほど大きく太い声でブルツが言った。
「入れ!!」
中から静かな、しかし響き渡る声がした。
その声を聞いた途端にエリーが身を震わせた。
俺も同時に、背筋から冷汗が流れる。
なんという威圧感のある声なのだろう。
声と同時に2人の執事が扉を開けた。
廊下の何倍もの明るい光が部屋の中から零れ出す。
部屋全体が荘厳な光を放っていた。
「失礼いたします!!」
ブルツが入り、続いてラスタ、その後に俺達が続く。
ブルツが礼をして、玉座の横に立った。
奥に豪奢な玉座がある、そこには体格の良い中年の男が座っていた。
少し角ばった顔立ちだが、威厳のある皺と長い顎鬚を携えている。
目つきは鋭く、只者ではない雰囲気を全身から醸し出していた。
そして先ほどの声・・・
俺達は一歩中へ入り、すぐさま跪き、家臣の礼をした。
「ドラゴニア皇帝ダリウス・レッド・ガレリアである。その後に5つほど家名がつくのだが、ダリウスで覚えてもらえば、それで良い」
力のある声が部屋に響き渡る。
エリーが身体をびくっと震えわせた。
クロエも震えている。
さすがにドラゴンの帝国の頂点に立つ存在と言ったところか。
「皇帝陛下・・・こちらに控えさせておりますのは、ヒデキ、エリー、クロエです」
「エリー?」
ラスタの言葉に、ブルツが反応する。
エルをエリーと紹介したからな。
「ブルツ殿、申し訳ないが関門の1つを越えるため、エリー殿にはエルと名乗ってもらった。エリー殿!」
「はい!!」
ラスタの声にエリーが変身を解いた。(というか、いつものエリーになった)
皇帝はそれを見てにやりとして言った。
「なるほどなあ・・・関門の1つか・・・面白い!!ははは・・・」
「陛下!!」
いきなり笑い始めた皇帝に、ブルツが苦虫を噛み潰したような声をかける。
「ははは・・・いや、すまん、すまん・・・ブルツよ。お前は有能だが、弱みを知られ過ぎだ。ラスタにしてやられたようだな」
「はっ!!汗顔の至りであります」
「まあ良い。人間にドラゴンにホムンクルスの変異体とは、面白い組み合わせだな。ああ、挨拶は無用だ。危急の用事と聞いている。話を聞こう。誰が話を聞かせてくれるのだ?」
俺達の正体を簡単に見抜いた皇帝が言った。
ここで失敗するわけには行かない。
エリーが一歩前に出て、再び跪き頭を垂れた。
「私が・・・」
「うむ、聞こう」
「私、そして夫のヒデキ様、従者のクロエは、隣の大陸ザナにあるアリベリ王国より参りました。ザナ大陸は全土に渡り、魔族の侵攻を受け、アリベリ王国、同盟を結んだイーゼルト帝国ともに敗北。転移魔法陣を使用しこちらの大陸に救援を求めに来た次第です」
「かの地はザナ大陸と言うのか・・・魔族が大陸全土を侵略したか・・・魔族め小賢しい・・・何を考えている?」
エリーの嘆願に皇帝は独りごちる。
重苦しい空気が玉座の間を支配した。
誰も口をきかない。
皆、皇帝の次の言葉を待っているのだ。
「ブルツ!!」
「はっ!!」
「大陸を占領している魔族を退けるには、どれぐらいの戦力が必要だ?」
ブルツは暫く黙考した後に答えた。
「かの地の広さを、我々の大陸と同じへ広さで、同数の国家があると仮定すれば、我々上級ドラゴンを50、各上級ドラゴンが下級ドラゴンを10従えれば、充分かと・・・」
「ふむ、我帝国の戦力の2割弱か。魔族がこの地を攻めても、防衛は可能だな・・・」
「その通りでございます」
「よし、救援を出そう!!ドラゴンはドラゴンを見捨てない。例え違う地のドラゴンであってもだ!!」
「「「有難うございます」」」
エリー共々頭を下げて礼を言う。
対して皇帝はエリーに言った。
「良い!だが、質問が1つある」
「何でございましょう?」
「夫と言ったが、ドラゴンが人間と番になった理由はなんだ?ドラゴンから見れば人間は劣等種のひとつに過ぎない。寿命も全く違う。それでも番になる価値があったのか?」
エリーはちらりと俺の方を見て頬を赤く染めながら言った。
「ヒデキ様は私の命の恩人です。見知らぬ土地で私が死にかけている所を救って下さいました。その後、ずっと一緒に旅をして苦楽を共にして来たのです」
「お前が庇護していたのではないのか?」
「いいえ、ヒデキ様はザナ大陸で最も強力な魔法使いです」
エリーは皇帝に向って、強く反論をした。
皇帝の瞳がギラリと光り
「ほう!ドラゴンと並び立ち、共に戦える人間か・・・面白い!!ヒデキと言ったな!お前の力を余に見せよ。エリーの言葉が真実であるならば、今回の援軍、余が率いてやろう」
皇帝は俺の方を睨み、唇の片側を吊り上げ、にやりと笑った。
いかにも悪役っぽい笑いだが、どうやら俺の力を試したいだけらしい。
笑いがおさまると、いかにも興味津々の顔つきになって、俺の返事を待っている。
「どのように力を示せば、よろしいでしょうか?」
「簡単だ。余と戦え!」
「陛下!!戦うのはなりませんぞ!!」
皇帝の無茶な命令にブルツが諌めるように声を荒げた。
「皇帝陛下に対して戦うなぞ、不敬な真似は出来ません」
俺も追随して言った。
「ブルツは一々口うるさいぞ。余が人間ごときに遅れを取ると思っているのか?」
「いいえ!そうではありません。ドラゴニアの皇帝である陛下が、人間ごときと対峙するなど、そのご威光に傷がつきます!!」
散々な言われようだが、その通りである。
ブルツの諫言を素直に聞き入れて欲しい。
皇帝は苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、やれやれと言うように首を左右に振り、
「では、貴様の持っている最大の魔法を余に見せよ。それならば余の威光は関係あるまい」
「皇帝陛下!!最大の魔法は、私一人では発動できません、エリーの協力で発動させるものです!それにここで発動してしまうと・・・」
「城を破壊してしまうか?」
「その通りでございます」
「そうか、では闘技場にまいろう。そこで余が召還する眷属に使うが良い。闘技場へ行くぞ!!」
皇帝はそう言うなり立ち上がり、俺達の横を通り玉座の間を出た。
「陛下!お待ちを!!」
ブルツが慌てて皇帝を追いかける。
俺達も後を続いた。
「ヒデキ殿、すまないな。もう少しだけ陛下の気まぐれに付き合ってくれ。陛下は援軍の約束を口にした。決して約束を違えることはない」
「わかりました。もうひと仕事しましょう」
クロエに言って魔力回復ポーションを用意させ、エリーにも持たせる。
城を出て、裏手に回りこむと、見事なコロセウムが見えて来た。
「この広さは・・・」
「誰もが最初は驚く。ドラゴン同士が戦っても周辺に被害が出ないようになっている」
通常の倍以上の広さの闘技場を見て、呆然としていた俺にラスタが説明をしてくれた。
先に来ていた皇帝がブルツと共に、闘技場の中央に仁王立ちしていた。
「今から我眷属を召還する。少し待て」
少し待て・・・などと言うから、何か特殊な呪文でも唱えるのかと思ったら、皇帝は指をパチンと鳴らしただけだった。
皇帝と俺との丁度中間地点に落雷が起き、でかい影が出現する。
その影はすぐに実体化した。
「ヒュドラ・・・」
ダンジョン攻略で苦戦したボスの一角だ。
こいつを倒すとなると、通常の攻撃魔法では、何の役にも立たない。
皇帝が最大の攻撃魔法を見せろと言った意味を理解した。
「エリー、準備は?」
「いつでもいけます!!」
俺とエリーは魔力回復ポーションを取り出した。
「余の眷属だ、人間ごときに無理だとは思うが、遠慮せずに思い切りやれ!!」
皇帝は、最初から無理だと決め付けているようだった。
その言葉にエリーが反応した。
「ヒデキ様、皇帝陛下を驚かせて、援軍に加わっていただきましょう!!」
エリーはキッと皇帝を睨みつける。
俺を軽んじられたのが、よほど気に障ったようだ。
エリーの期待に応えるとしよう。
『サンダーレイン』とかでお茶を濁そうと思っていたが、今の俺に使える最強の呪文で、ヒュドラを攻撃する事にした。
「ヒュドラに攻撃命令は出さん!!安心して攻めよ!!」
「承知いたしました!!それでは参ります!!」
俺はスマホを取り出し、Ο(オミクロン)のフォルダを呼び出し、魔力を込める。
エリーが俺の左を取り、腕を組んだ。
次回も7日前後で投稿します。




