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謁見①

プロットを全面書き直すと、矛盾点とか見つけ出すのに苦労します。

待つ事数分、ラスタと俺達は謁見の間へと案内される。

城の中に入ると、見事な装飾品が廊下に多数飾られ、高価なシャンデリアがいくつも天井を飾っていた。

ドラゴンはこの世界でも光物が好きなのか?

そうなんだろうな。

案内してくれるのは、メイド姿の女性だ。

いやいや、ドラゴンのメイドとか、漫画じゃあるまいし・・・

と思っていたが、


「ああ、人間のメイドさんがいるのですね」


エリーが俺にこっそりと囁いた。

どうやら普通に雇われた人間だったようだ。

突き当りを右に曲がり、すぐ左の扉に案内され、メイドが中に声をかける。


「ラスタ様とお客人3名様をお連れしました」

「入れ!!」


中から少し高めの声がして、メイドがドアを開ける。


「ラスタ入室いたします」


ラスタが入室し、俺達に振り返り招き入れた。


「異国よりの訪問者の3名です」


ラスタの紹介に合わせて、事前に教わっていた礼をする。

貴族の礼とほぼ同じだ、右手を開き胸にあて、左ひざを折って跪く。


「ヒデキです」「エルです」「従者のクロエでございます」

「「「宰相閣下にお会いできて、光栄に存じます」」」

「ドラゴニア帝国宰相 ブルツである」


謁見のため正面に座るブルツは、おれの想像と違い、ひょろりとした体躯に面長で病弱そうな中年の相貌をした男だった。

襟が立った貴族用の礼服を着こなしている。

好色な宰相と聞かされていたから、もっとでっぷりとしたおっさんをイメージしていたのだが・・・


「本日はこの3名より皇帝陛下への謁見の許可を賜りたいとの申し出があり、お連れ申した次第です」


ラスタが色々詮索されぬうちに本題へと入った。


「皇帝陛下との謁見とは・・・また身分不相応な願いだな」

「それは重々承知の上で、我が国危急存亡の為、こちらへ参った次第です」


俺はブルツに訴えかける。

それを聞いたブルツがにやりと笑う。

ああ、やはり何か企んでいる。


「ヒデキ殿と言ったか・・・そう慌てるな。まずは客人達にお茶だ」


その声を合図に扉が開かれ、メイドがワゴンに乗せたお茶を運んで来た。

礼を言い、ブルツの正面に並んでテーブルにつき、目の前に置かれたお茶を一口すすると、なんともいえない味が口に広がった。

舌にピリッとした刺激と、酸味が残り、鼻にミントのような清涼感が抜けてゆく。

ミントティーが一番近いかもしれない。

再びカップを口に運び、カップ半分ほど飲んでしまった。


「ヒデキ殿はお気に召したようだな?」

「ええ、なかなか刺激的で気に入りました」

「それは良かった。わが国自慢のライカ茶なので、気に入ってもらえて嬉しい」

「良いお茶をありがとうございます。それでお願いした件は・・・」


俺は強引に話を戻す。

ブルツの片眉があがり、目つきが怪しく光る。


「皇帝陛下との謁見が望みとか・・・それで私に支払われる対価は何かな?まさか何もなしに皇帝陛下との仲介を頼めるとは思っているのではなかろう。なんなら、その娘でも良いぞ」


ブルツはそう言いながら、クロエを見る。

この好色家!と思ったが・・・


「その娘、人間ではないな。かと言って、そちらのようにドラゴンでもない」


エリーの方を見ながら続けた。

やはりただの好色家ではなかったようだ。


「ふむ・・・魔力を使って・・・いや・・・ホムンクルスでもないか・・・面白い!どうだ?その娘を研究対象として差し出すなら、すぐにでも皇帝陛下との謁見の手はずを整えよう」


そう来たか。

エリーがドラゴンと見抜くのは同族だから当然として、クロエの正体を正確に見抜き分析して来たのは、予想外だった。

しかしここまで頭が切れて鋭い観察眼を持ち、探究心旺盛ならば、当初の予定通りでいける!!

俺はショルダーバッグから、レポート用紙を1枚取り出しながら


「クロエは私達の大事な仲間、差し出すわけにはまいりません。その代わり、これでいかがですか?」

「ん?何だ?そのような紙切れなど・・・何か重要なことでも書いてあるのか?いや・・・この紙・・・どうやって・・・製紙の行程が分からん・・・うーむ」


俺からレポート用紙を受け取ったブルツは、驚きの声を上げた後、うんうん唸ったままだ。

ラスタの方を見たら、にやにやと笑いながら、サムアップしてきた。

ドラゴンもサムアップするのか?


「ヒデキ殿!この紙の製法は?教えてくれるなら、いくらでも報酬を支払うぞ!!」


ブルツはレポート用紙を手に持ち、ぶるぶると肩を震わせている。

やはり製法を聞いて来たか。


「詳しい製法を私は知りません」

「そうか・・・貴殿は製法を知らぬか・・・残念だ。」


ブルツは露骨に落胆した顔になる。


「ですが、私の知人で知っている者がおります。皇帝陛下との謁見が叶い、危急の用事が終わりましたら、紹介をいたします。それでいかがですか?」


ブルツの瞳にギラリとした輝きが宿る。


「知人で製法を知っている者がいるのだな?よかろう!!それで手を打とう!!」

「ありがとうございます。その紙は約束の証にお受け取り下さい」

「うむ。では早速、皇帝陛下との謁見の段取りを取ろう。危急と言うならば、今夜にでも謁見できるように取り計ろう。それまで、ゆっくりとして行くが良い」

「重ね重ね感謝いたします」


こうして無事に皇帝陛下と謁見できることになった。

ブルツは早々に退席し、残った俺達はラスタと雑談をしていた。

その間にメイドは3度お茶を入れ、今は夕食の準備をしている。


「皇帝陛下はどのようなお方なのでしょう?何かアドバイスはありますか?」

「そうだな。エリー殿は皇帝陛下に会う時は、女に戻って良いよ。というか戻ったほうが良いね」

「えっ!?ですが、宰相閣下も同席されるのでは?」

「同席するけど、もう大丈夫だ。宰相閣下の頭はヒデキ殿の献上した紙の製造法に心が捕らわれている。ああなれば、好色の気は一切出ない。下手にエリー殿に手を出して、製紙の技術を知る機会を逃すような真似は絶対にしない」

「そう・・・ですか?わかりました。それで、皇帝陛下にどのように助力を申し出ればよいでしょう?」


エリーは真剣にラスタに尋ねる。

対してラスタは気楽そうに


「嘘をつかなければ問題ない。ドラゴンはドラゴンを決して見捨てない」

「ですが・・・」

「大丈夫だ。皇帝陛下は嘘を見破る心眼を持っている」

「分かりました。嘘偽り無く現状を訴え、助力を願うことにします」

「それで言い」


ラスタは謁見さえ出来れば、全てうまく行くと思って疑っていないらしい。

ここに来てあまりにも話がうまく転がり過ぎている気がする。

なにかとんでもない落とし穴があるのではないだろうか?

段々と不安になって来て、おれも思わず聞いてしまった。


「少し楽観的過ぎる気がするのだが、本当に大丈夫か?」

「何だ?ヒデキ殿も心配か?」

「あまりにも話がうまく行き過ぎているから、なにか落とし穴があるような気がして仕方ない」

「まあヒデキ殿の心配も分からないではないが・・・最大の難関は宰相閣下だったのだから、もう心配することはない。あまりにも宰相閣下が簡単に篭絡されたために、そう思えるだけだ。1つ教えておくが、よそ者が皇帝陛下に謁見を願い出て、その願いがかなえられたのは50年ぶりだぞ」

「何ぃ!?」


俺は驚愕の声を上げる。

そんなにブルツ宰相閣下は難敵だったのか?


「それだけ用心深いんだ。最初にクロエ殿を要求していたが、あれもクロエ殿が普通の従者ならば、要求してこなかったろう」

「しかし、50年ぶりの謁見とか・・・いくらなんでも不味いんじゃないのか?政治的にも・・・」

「たいていの政は宰相閣下が処理して、皇帝陛下に報告するだけで済むのさ」


確かに、いちいちドラゴンの皇帝が顔を見せるのも威厳がなさ過ぎるか。

とりあえず、地球の製紙技術に感謝しておこう。

ザナ大陸では敵にしてやられて、ついてなかったんだから、こっちでは多少ついていても良いだろう。


メイドが夕食を運んで来たので、ラスタとの会話は終了となる。

夕食は何の肉か分からないステーキとスープだったが、非常に旨かった。

食事が終り、お茶を飲んでいるとブルツが帰って来た。


「謁見の準備が整った。ついて来るが良い」


宰相閣下は厳粛な口調で俺達を促す。

いよいよ皇帝陛下との謁見だ。



次回も1週間後くらいに投稿します。

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