異変
そろそろ敵に大きな動きが・・・
ゴーレムの右手がめり込んだモロクの顔面は、すぐさま変形し左掌になり、左手が貫いていた腹部はするりと抜けてしまい右掌となった。
「私の世界で見た映画に、全く同じようなシーンがありましたね。実に興味深い。上位魔族は不死身なのですか?」
ミタが感心したように尋ねる。
モロクはゴーレムに落雷を落とし、効果がないのを見届けながら言った。
「不死身ではないが、我々のような上位魔族になれば、めったに死なん。倒されても魔界に戻されて、しばらく人界に顕現できなくなるだけだ」
「鬱陶しいこと、この上ないですね。まあ良いでしょう。新ゴーレムの性能も実際に検証できましたから、これで終わりにしましょう」
「何を言っている?このゴーレムに私が倒せるとでも?思いあがりも・・・」
「それは私がお前を滅ぼすからだ」
「!?」
モロクが振り返ると、イシュタルが後に立っていた。
「貴様!!イシュタル!!何故ここに!?」
「そのセリフもさすがに聞き飽きてきたな。お前らの目的は最終戦争ではあるまい。我ら神々が介入できないと、高を括っていたな?そうそうお前達の思い通りにはならん」
イシュタルはモロクの顔面を鷲掴みにし、ぱちんと指を鳴らす。
簡単にモロクの頭が消し飛び、モロクは崩れ落ちた。
「ふむ・・・再生はしないようですね?」
「奇襲に近かったからな、再生の準備が間に合わなかったのだろう。暫くは煉獄の牢獄で悔しがるが良いわ」
「イシュタル殿、私の実験が終わるまで待機していただいて、感謝いたします」
ミタはイシュタルに感謝して臣下の礼をし、跪いた。
「良い、なかなか見ものだったぞ。上位魔族が攻めて来たら、また呼ぶが良い」
イシュタルは指を再び鳴らし、その姿を消した。
「女神を味方に引き入れてしまう強運・・・ヒデキ君は同郷である以上に、実に興味深い存在だな」
ミタはぼそりと呟いた。
― ― ―
商業都市ツーロン
ツーロンは、ダミアンの指揮下でガーゴイルとワイバーンを撃退し、上位魔族の攻撃に
備えていた。
「各自攻撃用魔法陣は、いつでも発動可能にしておけ!!防御結界も同様だ!!王都からの報告では、この後上位魔族の攻撃があるぞ!!ディリとの連絡も常に取れるようにしておけ!!」
ダミアンの命令を受けて、多数の魔術師がスクロールを取り出して、魔法陣の確認をし始める。
ダミアンの前にはモニターが3つ設置してあり、1つは監視用、1つはエバートンと、もう1つはディリと繋がっていた。
ダミアンはディリに繋がっているモニターに話しかけた。
「こちら、迎撃準備整いました。そちらはどうですか?」
「こちらもOKだ!!いつでも来いって感じだぜ!!」
モニターにパワーボムのセルゲイが現れ、自信満々に答えた。
「上位魔族の名がリストに載っていれば、すぐにエバートン殿に報告して、増援を要請して下さいよ!!少しだけ戦って見ようなどと、思わないように願いますよ」
「分かってるって!!俺も前回のダンジョン攻略で上位魔族の恐さは死ぬほど理解しているさ・・・だが、リストにない場合は戦っても良いんだよな?」
「その判断はおまかせしますが、少しでも敵わないと思ったら、即報告をして下さいよ!!バーサクはなしで願います」
「OK!!分かったよ、それじゃあな!!」
「御武運を!!」
「お前もな!!」
互いに励ましあい、モニターから離れる。
モニターのスイッチは入ったままだ。
2人の会話から数分後、両都市の連絡橋の中心に青白い光が現れて巨大な馬の姿が現れる。
その馬がひと声嘶いた瞬間に、とてつもない数の死霊が両都市を取り囲むように出現した。
「セルゲイ殿!!急ぎ防御結界を!!この魔族は死霊公爵のガミジンです!!エバートン殿に報告します!!」
「ただのでかい馬だろ?俺達でやれるんじゃないのか?」
「ダメです!!絶対に出ないで下さいよ!!」
「分かったよ、ほら結界も発動しているだろう!!」
ダミアンとセルゲイが会話している間にも、ガミジンは死霊を呼び出し続けている。
その数は前哨戦だったガーゴイルとワイバーンの数を遥かに上回り、両都市の周囲を完全に覆い尽くしていた。
少しでも結界が破れれば、両都市に侵入し、蹂躙を始めることだろう。
ガミジンも死霊を呼び出しながら、結界を破ろうと、強烈な体当たりを交互にぶつけている。
ディリに二度目の体当たりをしようとした時、イシュタルがガミジンの眼前に現れ、その巨体を弾き飛ばした。
「ガミジンではないか・・・こいつは話せん・・・さっさと片付けてしまうか。だが先にこの鬱陶しい死霊を掃除するか」
ガミジンがイシュタルをその前肢で踏み潰そうとするが、イシュタルは右手で簡単に受け止め、左手で指をはじく。
その瞬間に全ての死霊が消滅した。
ガミジンは再び死霊を呼び出そうと嘶くが、イシュタルの身体から発せられる聖なるオーラは死霊の出現を完全に封印している。
体制を立て直そうと、距離を取ろうとしたガミジンだったが、それも敵わなかった。
イシュタルの右手がガミジンの前肢を離さなかったのだ。
「愚か者が!!」
イシュタルは指を弾くことをせず、右手に左手を添えて、そのまま振り上げる。
が、その手は離されることなく、ガミジンの巨体には上空に放り投げられる衝撃が走った。
そのまま下に叩き付けられ、ガミジンは苦痛の悲鳴を上げる。
「やかましい!!もう去ね!!」
ここでイシュタルの指が鳴る。
ガミジンは消滅し、静寂が残った。
「あれが女神イシュタルの実力か・・・凄いな・・・」
「全くです」
「あの女神様がいれば、無敵じゃないのか?」
「そうあって欲しいものです」
モニター越しにセルゲイとダミアンが驚愕を隠しきれず、会話をしている。
その中、イシュタルはにやりと笑い、姿を消した。
― ― ―
ブルネル エバートン邸モニタールーム
イシュタルが帰還し、エバートンに尋ねた。
「どうだ?他に応援要請はないか?」
「今のところありませんね。各都市に出現した上位魔族も真祖とか、私の魔法陣とミタの技術で撃退可能な相手ばかりです」
100以上もあるモニターを複数のメイドと共に監視しつつ、エバートンはイシュタルに答える。
「ふむ・・・ルシファーめ・・・何を考えているのやら・・・」
イシュタルがそう言った瞬間だった。
一部にモニターを除き画面が真暗になったのだ。
モニターのスイッチが切れたわけではない。
外を監視しているモニター全てが闇に覆われて、真暗になっていたのだ。
「一体何が!?」
エバートンが画面を見ながら、言う。
「何だ!?外が見えなくなったぞ!!」
「こちらも同様です!!」
「こちら王都、ムカイです!!外を映す監視モニターが見えなくなりました!!」
「こちら帝都、ミタ。見えなくなったのではありません!!外が漆黒の闇に包まれているのです。月灯りや街灯、星灯りも通さない漆黒の闇です!!」
セルゲイやダミアン、ムカイ、ミタから報告があった。
「全員落ち着いて、襲撃に備えるように!!防御結界を最大に!!」
エバートンが落ち着きを取り戻し、全員に声を掛ける。
「これは・・・ルシファーの仕業だ!!」
イシュタルが叫ぶ。
「ルシファー!?」
俺の声が震える。
エリーが不安そうに、俺の腕に縋り付いた。
「気を抜くな!!ルシファーならば、このような防御結界でも、簡単に突破して来るぞ!!」
イシュタルの声がモニターを通して、各都市に伝わる。
同時に、各都市からの無言の緊張が伝わって来た。
数分間の沈黙が流れる。
「来たぞ!!」
各都市のモニターから同時に声が上がった!!
次回は10月12日投稿予定です。




