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開戦

プロットからの書き起こし、かなり苦戦しましたが、なんとか投稿できました。

イシュタルが人界にやって来て、3週間が過ぎた。

この3週間で、エバートンはイシュタルの戦力分析をして、様々な作戦を立てた。

そしてこの日、ネオローマ王国に入り込んでいる密偵から、明日開戦の報告が入る。


俺とエリー、イシュタルはエバートン邸に行って、明日に備える。

100以上のモニターが設置してあるエバートンの研究室で最終作戦会議をするのだ。


「私の予想ですが、王国、帝国、各都市一斉に魔族が攻撃を始めるでしょう。こちらは大量生産したゴーレムで対抗します。そのゴーレムの防衛ラインが破られたら、すぐに連絡が入ります。破られた都市にイシュタル殿が飛び、魔族を滅ぼしていただく。その間に別の都市で同じ事が起これば、ヒデキ殿に援軍をお願いします」


エバートンが確認のために、俺とイシュタルを交互に見た。

俺は黙って頷く。

イシュタルは指に嵌めている指輪を見ながら、ぐっと拳を握り締め言った。


「承知した、エバートン殿の指輪のおかげで、私の力はかなり増強されている。たいていの魔族は簡単に撃退できる」

「イシュタル殿の転移能力を最大限に生かした作戦です。ここで全ての都市と連絡が取れます。優先順は王都、帝都、王国都市、帝国都市の順になりますが、王都、帝都の防衛ラインが簡単に破られるとは思えません。実質王国都市、帝国都市の援護になることでしょう」


帝国は帝国でミタが完璧な防衛網を構築しているし、援護体制も充実している。こちらが援護に行くことは、あまりないだろう。

この3週間でそれだけのことは、お互いにしてきた自信があった。

魔力回復ポーションも万全。

秘策も用意した、俺は後の椅子に座ってじっとしている人物をちらりと見る。


後は開戦を待つばかりだ。



― ― ―


イーゼルト帝国 帝都内 ミタ研究室


「防衛準備は万全。帝都は魔王が来ない限り、防衛できるでしょう。」


ミタの研究室にもエバートンの研究室と同様のモニターが設置されている。


「さすがに全ての都市を防衛できるとは思いませんが、かなり消耗は少なくて済むのではないでしょうか?」


ミタはエバートンが映っているモニターに話しかけた。

即座にエバートンが返答する。


「相手の戦力が我々の予想を大幅に上回っていなければ、そのとおりでしょう。ですが、予想を遥かに上回る戦力で攻めてこられることも考えて、退路も用意しておかねばなりません。いざという時は・・・」

「もちろん、万全の体制で臨んでいます」

「では、連絡員を置いて、防衛に向いましょう。ご武運を!!」

「ご武運を!!」


モニターは切られることなく、エバートンは視界から去り、ミタもまたモニターから離れた。



― ― ―


ブルネル城砦都市


魔族の攻撃が近いとの触れは行きわたっていて、いつもは賑わう中央通り、いや、街の全ての通りから、人々の姿は消えていた。

通りには、多数のゴーレムが5体編成で巡回し、そこに暮す人々は息を潜めて自らの家屋の地下室に隠れている。

地下室のない者達は、教会などの施設に避難していた。

それはブルネルに限らず、王都や帝都、全ての都市でも同様だ。


そして陽が沈み、複数の月が天空にさしかかる頃、突然、襲撃は開始された。


「攻撃が開始されました!!」


監視役から、エバートンにホットラインが入る。

待機していた部屋から、屋敷の外へ出ると、上空はガーゴイルとワイバーンの群れで覆い尽くされていた。


「予想通りですね。ヒデキ殿、サンダーレインで一掃して下さい」

「了解です!!」


エリーが横に就き、俺は直ぐに『サンダーレイン』を呼び出す。

魔力を込めると、俺たちを発見して襲いかかろうとしていたガーゴイルやワイバーンを巻き込んで、天空全域に雷の雨が降り注いだ。

轟音と共に稲妻が走り、上空のガーゴイルとワイバーンを焼き尽くした。

この『サンダーレイン』俺が視認できる敵全部に落雷できるようにエバートンが改良しているのだ。

魔力の消耗は6大魔法並みに多いが、エリーがしっかりと補ってくれている。

ガーゴイルとワイバーンの混成軍は、一瞬で壊滅していた。

死体は黒こげになり、往来や民家の屋根に落ちて骸をさらしている。

これだけ焦げていれば、アンデッドになる心配も皆無だろう。


「これは驚いた!!一瞬であの数のガーゴイルとワイバーンを全滅させるとは!?」


上空に魔族が浮かんでいた。

醸し出す雰囲気は、明らかに上位魔族だった。

ここからが本番だ。


― ― ―


王都


「ムカイ殿!お願いする!!」

「了解した!!」


ブルネルと同じようにガーゴイルとワイバーンが上空を埋め尽くしている。


「サンダーレイン!」


ムカイの叫び声と共に、落雷が敵に降り注いだ。

黒焦げになった、ガーゴイルとワイバーンが王都に堕ちてゆく。だが、改良型のサンダーレインではないため、撃ち漏らしが発生していた。

魔力をほぼ使った、ムカイに残ったガーゴイルとワイバーンが襲い掛かる。

そこに横から、業火が放たれた。

ムカイに防御結界が発動し、業火はムカイには届かない。

だがガーゴイルとワイバーンには直撃している。

ムカイのサンダーレインから漏れたガーゴイルとワイバーンは、全て焼かれて黒焦げになっていた。


業火を放ったのは、アイアンゴーレムだった。

アイアンゴーレムの両掌から炎が迸っている。

ミタが改造したアイアンゴーレムが5体編成で10組が集結していた。


「なかなか良い連携だ・・・まさか一瞬で前座が消されるとは思わなかったよ」


ムカイやアイアンゴーレムの前方の地面から、魔族がせりあがり、姿を表した。


「上位魔族・・・」


― ― ―


帝都


「予想通り過ぎて、拍子抜けしますね」


ミタが上空を見上げて呟いた。


上空を覆うガーゴイルとワイバーンの群。

さらに上空からメカドラゴンが襲い掛かかる。

その口からは、炎、目からレーザービームが放たれ、次々に敵を落としてゆく。

ミタを発見し、襲いかかって来る敵は、100体を超えるアイアンゴーレムが迎撃していた。

数分後、全てのガーゴイルとワイバーンは全て消し炭に変わっていた。


「どこから情報が漏れたのやら・・・準備万端か・・・」


白い影が浮かび上がり徐々に姿がはっきりしてゆく。


「上位魔族のお出ましですか・・・」


― ― ―


ブルネル、王都、帝都と同様のことが各都市に起こっていたが、予想されていた襲撃だったので、全ての都市が魔族の攻撃を迎撃していた。


徐々にガーゴイルやワイバーンは駆逐されてゆき、時間差で全滅していった。

そしてその後には、各都市にも真打が登場していく。

上位魔族である。


― ― ―


ブルネル 


空中に浮いている魔族がゆっくりと降りてきた。

降りた瞬間に、『奈落』を発動させたが、足元にあいた穴に落ちることなく、丁度地面の位置に立っている。

学者のような風貌に右手に分厚い本を持っていた。


「自己紹介をさせて頂こう。私の名はダンタリオン。我々の襲撃を予想していたみたいだね。見事な迎撃だったよ」


ベリアル、アスモデウスと同格かそれ以上の大物だ。

だが、それも予想済み、俺の後からイシュタルがローブ姿で出てくる。


「ん?誰です?魔術師ですか?」

「そういう事にしておこうか・・・」


イシュタルはゆっくりとダンタリオンに近付いて行った。

ダンタリオンは右手に持っている本を開いて、驚愕の表情を浮かべる。


「何ぃ!?何故、お前がここにいるんだ!?」

「お前がここにいるのと同じ理由だ。何も不思議ではあるまい!!」


未だ驚愕の顔をしているダンタリオンの目の前に立ったイシュタルは、指をパチンと鳴らした。


「ぐわあっ!!??」


ダンタリオンはガクンと両膝をつくように崩れ落ちる。


「貴様ぁ!?」

「やかましい!!」


イシュタルがダンタリオンの頭に左手を置き、再び右手でパチンと指をならす。

ダンタリオンは何の抵抗も出来ず、チリとなって消え去った。


「力が5割増すと、戦うのは楽だな。エバートン殿、感謝する」


イシュタルは俺たちに振り返り、にっこりと微笑んだ。


次回は10月8日投稿予定です。

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