真相
少しだけこの物語の真相に迫ります
「よく来た人間よ。待っていた、えーと」
「ヒデキです。こっちはエリー」
イシュタルは呼び出すなり、切り出した。
「ヒデキか、よく来てくれた。今回の件、神界の決定を伝えるよう・・・」
イシュタルは一拍置いて、淡々と言った。
「神々は介入しない」
「・・・」
5分ぐらいの沈黙の後、エリーがイシュタルに尋ねた。
「どうして神々は介入しないのですか?」
エリーが沈黙を破った。
「エリーと言ったか、人でない者よ。答えよう。神々が介入してしまえば、最終戦争が始まってしまうからだ」
「最終戦争?」
俺の世界では有名な単語だ。
だが、この世界ではどうなのだ?
以前から疑問に思っていた質問をしてみよう。
「イシュタル様!!」
「イシュタルで良い!何だ?」
「この世界の神々と、俺のいた世界の神々・・・いや、魔族も、同じものなのですか?」
「何故そう思う?」
「名前が一致しすぎているからです。リリス、ベリアル、アスモデウス、ルシファー、それにあなたも・・・イシュタル!!偶然にしては出来すぎている。このような一致が起きる確率はほぼ0だ」
イシュタルは少し考え、ため息をつき、
「そうか、ルシファー以外は知らない人間が多いと思っていたが・・・知っている者が
こちらへ来た一人だとは・・・」
中学の頃にオカルトに凝っていたことが、初めて役に立った。
「それは肯定と取って良いのですね」
「そうだ、神界、魔界、二つの世界は唯一無二だ。全ての世界へと繋がっている」
やはりそうだったか。
ダンジョンで、カーリーの石像を見た時から、疑ってはいたのだ。
「平行世界理論」
「それは何ですか?」
エリーが不思議そうに尋ねる。
「この世界の他にも、いくつもの似たような世界が存在すると考え方だ。その証明は俺や、ミタ、ムカイが、こちらの世界に来たことで証明されている。俺達の世界は科学が発達しているが、魔法や魔力は存在しない。逆にこの世界は魔法が発達しているが、科学技術は存在しない」
「では、他にも世界があるのですか?」
「それは・・・」
エリーの鋭い質問に、俺はイシュタルを見た。
「そうだ無数の世界が存在する。今回の神々の不介入は、それが原因でもある」
「原因?最終戦争が起きるからでは?」
「うむ、そして無数にある世界のいくつかは最終戦争が起こってしまい、世界が滅びている」
「最終戦争が起きると世界が滅びるのですか?」
「そうだ、今のままではそうなる。我々神々は、それを防ぐための世界・・・公正世界の誕生を目指しているのだ」
公正世界か・・・どこかで聞いたような・・・
「この世界は、お前達が来たことで公正世界になる可能性が高い。ここで滅ぼすわけにはいかんのだ」
「ですが、神々が介入しなければ、人々が滅びてしまうのでは?」
「いや、ネオローマ帝国が勝利しても人が全滅するわけではない」
確かにそうか・・・魔族が人類を滅ぼそうとしているわけではない。
神々にとっては、世界が滅びなければ、それで良いわけだ。
「そんな・・・」
エリーが落胆した声を出した。
「お前達には理不尽な結論だ。気持ちは分かる。私も納得してはいない。だから、私はこの戦いに介入しようと思う」
「介入を!?」
「もちろんヒデキ側だ。魔族の介入を出来るだけ邪魔してやろう」
「そ、それは助かります」
「そうと決めたら、行こうか!」
イシュタルはパチンと指を弾く。
「えっ!?」
一瞬で、広間に戻っていた。
イシュタルはすたすたと出口に向って歩いて行って、低い出口をくぐらずに、すり抜けて表へ出てしまった。
俺とエリーは慌てて屈んで表に出る。
「イシュタル様、その体はおいて行かなくても良いのですか?」
「ん?心配するな、すぐに代わりの物が座るようになっている。それと様はいらん!イシュタルと呼べ!!」
「さすがに呼び捨ては勘弁して下さい。せめてイシュタルさんと・・・」
「・・・まあ良いか。許す」
表に出て改めて見ると、完璧な美人だった。
「イシュタルさん、そのドレスは目立ちすぎます。屋敷に戻って着替えを用意しますね」
「これか・・・目立つか・・・それでは着替えよう」
イシュタルは再び指をパチンと鳴らす。
一瞬で全裸となり、見事な胸が露になる。
不敬だと思われるのが恐くて、すぐに目を逸らした。
もう一度指が鳴る音が聞こえ、イシュタルを見ると、エリーと同じローブを纏い魔術師姿になっていた。
「これでよかろう」
「はい、問題ありません!!」
「よし、ヒデキの屋敷に行くぞ。よいな?」
「あっ!はい!翼竜を呼び出しますので・・・」
「必要ない、屋敷を思い浮かべろ!!」
「えっ!?」
再びイシュタルが指を鳴らすと、一瞬で俺の屋敷の前だった。
どうやら、この完璧美人の女神様は、力を発動させる時、指を鳴らす癖があるみたいだ。
屋敷に入り、イシュタルを客間に案内させた。
俺とエリーも客間に行って、クロエにお茶を用意してもらう。
お茶を飲みながら、王国と帝国の対魔族の軍備を進めている事を伝えた。
「イシュタルさんの事、神々が不介入を決めた事、皆に知らせた方が良いでしょうか?」
「止めておけ、今のままの気持ちで魔族と戦わせよう。頑張って踏みとどまれば、神々が助けに来る!そう思って戦わせたほうが良いだろう。いざとなれば、私が姿を見せてやる!!」
「では、エバートン参謀にだけ他言無用で、伝えても?」
「構わない。なんなら会うか?」
「そうですね、ちょっと待って下さい」
俺はすぐにエバートンにホットラインを繋ぐ。
「どうしました?ヒデキ殿?」
「忙しいところすみません。参謀に会わせたい人がいるのです。今から伺ってよろしいでしょうか?」
「勿論です。ヒデキ殿が私に会わせたいと思われる人物。最優先でお会いします」
「では、すぐに参ります」
俺はホットラインを切るや否や、イシュタルの指が鳴る。
エバートンが作業している実験室に移動していた。
「これはっ!?一体?」
俺とイシュタルがいきなり実験室に現れたのには、さすがにエバートンも驚いたようだ。
だが、それも一瞬だった。
「その方の転移魔法ですか?凄い!!魔法陣なしで転移できるならば、戦略にどれほどの幅が広がる事か!!??」
エバートンはイシュタルのやった事を瞬時に理解したのだ。
そしてイシュタルに貴族の礼をした。
「私はこの屋敷の主、エバートンと申します。私の実験室へようこそ!!」
「エバートン参謀、こちらは女神イシュタルさんです」
「イシュタルだ、久しぶりだな、エバートン。見事にダンジョンを攻略したらしいな」
再びエバートンが驚いた顔をしたが、すぐに表情を戻した。
「お久しぶりです!イシュタル様!!リリスの件では、本当に助かりました!!改めて感謝を!!」
エバートンは跪き、臣下の礼をした。
「ああ、気にするな。リリスに一泡吹かせられて、実に痛快だった。それと様は要らん」
「それでは、イシュタル殿とお呼びしましょう」
「それで良い」
「イシュタル殿、本日のご用向きは?」
「ん?ヒデキがエバートンには伝えておいた方が良いと言うのでな。すまん、此度のネオローマ帝国の一件、神々は介入を見送った。他言無用に頼む」
エバートンは無表情にイシュタルの言葉を聞いていた。
「やはりそうなりましたか」
「ほう、予想していたのか?」
「魔界の介入に対して、神界の介入があれば、もはや世界を滅ぼす戦に発展しかねません。ですから、神々の介入の可能性は薄いと思っておりました。その想定で戦略も練っております」
イシュタルの表情が和らぎ、
「そうか、さすがはエバートンだ。では、戦略に私も加えてもらおう。私個人として、魔族に介入しようと思っている。最も効果的な方法で、私を使ってくれ」
「なんと!!これで、この度の戦、かなり有利に進めることが出来ます」
エバートンが嬉しそうに言った。
次回は10月6日投稿予定です。




