神との会話
そろそろ真相に迫りましょう。
俺が止める間もなく、ノーマが魔法陣に魔力を込めてしまった。
当然のように、魔法陣は発動する。
ノーは、何かの鍵のようだ・・・と言ったが、どうやら当たっていたらしい。
魔法陣を中心に、ちょうど岩肌が露出していた部分が、光を放ち、それが治まった時には、岩肌が1メートル四方の扉に変貌していた。
「ほら、鍵だったでしょ!!」
ノーマが誇らしげに言う。
胸を突き出しての、得意のセクシーポーズだ。
「お前なあ・・・」
「まあまあ、結果オーライよ!結果オーライ!!」
俺も発動させる気満々だったから、まあ良いけどな。
「ヒデキ君、それより、この扉の先が気になるよ。どうする?」
ムカイが冷静に意見を言った。
「ここまで来たのです、行くしかないでしょう」
数日前に何者かが、この扉の先へ入って行ったのだ。
確かめないと、不味いことになる・・・そういう気がした。
扉は観音開きになっていて、簡単に開けることが出来た。
中を覗いて見る。
屈んでくぐってしまえば、その先は広くなっていて、天井も高くて普通に立てる。
「エリー、ノーマ!中に魔物や魔族の気配はあるか?」
「いえ、ありません」
「魔族どころか、精霊の気配もないわね」
エリーとノーマの探査には、何もひっかからなかった。
予想に反して、中は完全に何者もいないようだ。
だが、用心するには越したことはない。
全員(ノーマを除いて)指輪の効果を全開させ、即死以外復活するスクロールも出して、魔法陣をスタンバイさせる。
「よし、行こう!!」
よく考えれば、俺が『不可視』を発動させて、中を見てくればいいのでは?
そう思ったが、『不可視』では、何者も入っていかないことと同じだ。
何かを認識して、起こる事があるような気がしたのだ。
俺を先頭に、屈んで扉をくぐる。
次にエリー、ムカイ、ノーマが最後に入って来た。
入るなり、何かセンサーのようなものがあったのだろう、ライトの魔法が作動し、辺りが明るくなった。
中は玉座の間くらいの空間が広がっている。
かなり広い。
しかし、誰もいない・・・いや、何もない。
そう、例えるなら、無菌室だ。
玉座でもあるのかと思ったが、それもなかった。
何もない空間が広がっているだけ・・・
「ヒデキ様、何か寒気がします」
エリーが不安そうに身を縮めて言った。
確かに寒々としている。
「何もないかも知れないが、ここに立っていても仕方がない、探索を始めよう」
ムカイの言葉に、皆、我に返り部屋を調べる事にした。
まずは壁に沿って魔法陣や文字が刻まれていないかを調べる。
だが、期待していた魔法陣や文字は、一切見つからなかった。
「何もないな。アイテムとかが必要なのかな?」
「こういう時は、部屋の真ん中が怪しいのよ。行ってみようよ」
ノーマが俺の肩に腰掛けながら言った。
他に考えもなかったので、警戒しながら、広間の中央まで進む。
と、突然20メートルの高さはあるだろう天井全面に魔法陣が出現し、光り始めた。
この感覚は・・・
「まずい!!転移魔法陣だ!!強制的に転移させられるぞ!!皆、防御結界を最大に!!」
俺が叫んだと同時に、転移魔法陣は俺たちを別の場所へと運んでいた。
― ― ―
「あれ?この前、1500年ぶりの訪問があったと思ったら、また?珍しいこともあるもんだ」
転移した先は、先ほどの空間と同じぐらいの広間だったが、全てがクリスタルで出来ていた。
そして、玉座ではないが、そこには簡単な造りのクリスタル製の椅子に腰掛けている者がいた。
者?物?腰掛けているモノは、人間ではない。
そいつは、全身がクリスタルで出来ていた。
一番近いのは、ダンジョン攻略の時のナナシだろうか・・・
「魔族?」
「失礼な!!神罰が欲しいのか!」
「神罰?神様なのか?」
俺は驚いて聞いた。
「いや、正確には神様との中継役だね」
「中継?」
なんとなく分かって来たぞ。
この軽い奴が、スマホの中継基地のようなものだろう。
「えーと、神と話せるのかな?」
「ああ、誰と話したい?ちなみに神様限定ではないよ。魔族でもOKだ」
「魔族とも?」
「そう、僕は神界、魔界を繋ぐために作られた道具なのさ」
「誰が作った?」
「それは言えない。というか言えるように作られていない。さあ、誰を呼びたい?」
どこまでも軽い奴だな。
神様を指名しろと言われてもなあ・・・
こっちの神様知らないし、魔族は呼び出したくもない。
ああ、1人心当たりがあった。
「女神イシュタルを!!」
「何?女神?お前女神を口説く気か?」
「いや、唯一会った事がある神様だから!!」
「女神に会った事あるんだ!こりゃ凄いね。分かった、今から女神イシュタルを呼び出すよ!!」
前置きなしで、呼び出すのかよ!?
儀式とか呪文とかないの?
中継屋(俺が勝手に名付けた)は、椅子から立ち上がり光り始める。
すぐに部屋全体が光に包まれ、何も見えなくなった。
先ほどの明るさに戻った時、そこには絶世の美女が立っていた。
前回は憑依での顕現だったから、本当の姿は分からなかったが、今回の姿がそうなのだろう。
身長は190センチほど、プロポーションは完璧、軽くウエーブがかかり、少しライトグリーンが混じった金髪を腰まで伸ばしている。
顔立ちは瓜実顔、鼻筋は綺麗に通り、高くも無く低くも無く、唇はやや薄く、薄いピンクだ。
瞳は青と金のオッドアイ(猫っぽい)。
そして、純白のロングドレスを身に纏っていた。
「私を呼んだのは・・・ん?お主・・・いつぞやの・・・」
「リリスの時は、助かりました」
「おお、やはりそうか!!あの後も無事に生きておったか?」
「おかげさまで」
世間話のように話しているが、相手は女神だ。
「それで、私を呼びだした理由は?」
「私がイシュタル様を呼び出す数日前、誰が誰を呼び出したか分かりますか?」
「勿論だ。何故なら、この身体を使って降臨しているからな。記憶はそのまま残っている」
「と、言うことは・・・イシュタル様を呼び出す必要はなかったのですか?」
「いや、こいつは、天界から人間界へ顕現して会話するための入れ物に過ぎない。記憶を話すことは出来ない」
つまり、録画は出来ても再生は出来ない、壊れたレコーダーのようなものか?
まあいいか・・・
「分かりました。教えていただけますか?」
「呼びだした者はネオローマ王国のアンジェリーナ。呼び出されたのは、ルシファーだ」
「なっ!?ルシファー!?」
「ルシファー!?」
俺とムカイは同時に叫んでしまった。
俺達の世界でのルシファーは魔王だ。
「イシュタル様!ルシファーって?」
「魔王だ!!」
やはりそうか。
それにしても、魔王と対極にあるはずのネオローマ王国、カトリック教が魔王に何の用があると言うのだ?
「イシュタル様、アンジェリーナとルシファーの会話を再現できませんか?」
「ちょっと待て・・・ダメだ!ルシファーの奴めが、記憶にロックをかけておる・・・最初と最後の挨拶だけは残っているが、聞くか?」
「聞きます、あっ、少し待って下さい!!」
俺は急いでスマホを取り出し、ボイスレコーダーをセットした。
「どうぞ!!」
「うむ!!・・・ルシファー様、お久しぶりでございます」
急にイシュタルの声音が変わった。
これがアンジェリーナの声か?
「ネオローマ王国の支配完了いたしました。・・・そうか、良くやった」
いきなり野太い男の声に変わる。
地の底から響いて来るような声・・・エリーが身震いし、ノーマの頬から汗が一筋流れた。
「作戦は以上だ。うまくやれ!!・・・はっ!!必ず!!」
男の声音からアンジェリーナの声に変わり、会話は終わった。
「以上だ・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
全員が暫く押し黙ったままだった。
いつもは軽口を叩くノーマまでが深刻そうな顔をしていた。
次回は10月2日投稿予定です。




