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第95話 お着替え

 シアンと2人で龍脈を出ると、心配そうなミカゲと育三ちゃんがいた。



「うお――! シアン!! 生きてたのかよ」


 ミカゲが嬉しそうに、シアンの頭をものすごい勢いで撫でる。

 シアンはミカゲに撫でられて、髪の毛をぐしゃぐしゃにされることを以前は嫌がっていたのだが、今回はミカゲのされるがままになっている。

 育三ちゃんはシアンを見てビクついていたので、シアンはミカゲに頭を撫でられながら、育三ちゃんにクズとかカスとか言っていた。

 ……やっぱり龍族特有のドS気質なんだろうな。



「シアン、今日は恵奈に頼んでごちそうにしてもらうか?」


 機嫌よくミカゲが言う。だけど、シアンは首を横に振る。


「今日はカレー。明日ごちそう……よろしくって恵奈に伝えて。そのあとのネギ味噌ラーメンも、ミカゲがおごり」

「わかったぜ! ったく、良いこと起きたじゃないか、和哉ぁ!」


 うん、とミカゲに返事をする。そして、シアンが俺の顔を覗き込んで、言った。


「これからもよろしく、マスター」

「おう、うちの親には交換留学でまた来たっていうよ」



 シアンは折ノ下鍾乳洞を抜けたあとのジリジリの炎天下の中で分厚めのコートを着込んでいたので、


「シアンさ、暑くないの? コート脱いだほうがいいかも」


 と促してみた。真冬用のコートが悪目立ちしていて、ミカゲの会社の人たちがシアンをみて驚いていたからだ。


「特に脱ぐ必要もないが……」


 シアンはそう言いながらも俺やミカゲの夏着を見てなんとなく場違いだということが解ったらしく、コートを脱いでその下に着ていた真っ白の白いワンピースというか入院着にも見える服になろうとした。


「ちょ! ちょっと待った――!」


 かなり薄い生地だったので、透き通る……いやぶっちゃけスケスケのワンピース一枚になってしまっては、こんな衆人環視の中ではかなりヤバい。

 俺は急いであかねんに連絡をする。今日は役場内待機なのですぐ来てくれるだろう。



 お昼すぎにあかねんが、1週間前に買った自分の赤い軽ワゴンに乗ってやってきた。


「うわー! シアンちゃんが帰ってきた!」


 ぎゅうとあかねんはシアンを抱っこする。シアンもそんなあかねんに会えて嬉しそうだった。タローはどうなんだろう? と思ってあかねんに抱っこされているシアンにタローのことをインタビューするが、心底嫌そうな顔で


「クズだから会わなくていい」


 と即答していた。


 あかねんはシアンとの再会に喜んだあと、シアンを車に載せ、


「ちょっと着替えさせてきますね! あと役場に一回連れて行くので、すずくんはここが終わったら役場に来てください」


 とあかねんとシアンは山を降りてどこかに行ってしまった。

 俺たちはそのあとに手早くご飯を食べ、看板立ての作業をこなす。


「よし、しっかり立てたな? 育三と佐藤さんで確認してきてもらっていいすか?」


 ミカゲに指名された2人は、手際よく看板のチェックを行っている。その間残りの従業員さんと俺とミカゲで作業に使った道具を片付ける。


「いやまあ、和哉がシアンを失ったときの落ち込みようはハンパなかったからなぁ」

「え? 俺は仕事しまくってそれで忘れようとしてたんだけど……」

「バカ、それが悪いんだよ。あのまま突っ走ってたら過労死だ、過労死」


 いやあ、よかったよかったとミカゲに背中をバンバンされる。


 ……まあよかったし嬉しいけどね!



 役場によってシアンと改めて対面する。あっさりとした白いポロシャツワンピースをシアンはあかねんから買ってもらっていた。


「レシートがありますので、すずくんがあとでお代くださいね」


 ちゃっかりしてやがる……。レシートを見ると2,980円のワンピースだったので、3,000円をあかねんに渡す。


「お釣りはいらねーぜ、ですよね? すずくん?」

「はいはい」


 ニコッとするとあかねんはシアンの手を引いて、


「このお金でそのうちスイーツを食べに行こう!」

「スペシャリテ抹茶あんみつが食べたい」


 シアンはまたまた即答であった。

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