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第6話 王様との謁見

「おお勇者よ、この田舎村を立て直すために、きてくださったのだな」



 ……あかーん、村長もダメだ――。



 だけどロールプレイングゲーム……いやドッキリではイベントの鍵となる人物だろうから、俺は気を取り直して何度か村長に話しかけてみることにした。



「実はわしの娘が魔王にさらわれてしまってな、勇者にはその娘……姫を救ってほしいのだ」


 普通に村長デスクに村長チェア。

 そして何の変哲もないただの田舎の村長室。

 しかもピカピカで新しい村長室でもなく、築30年ぐらいの役場の2階のはしっこで西日が当たって照り照りになりそうな部屋。


 そこで、碇ゲンドウのような体勢で、王様語を話す村長。違和感がありすぎて、どう突っ込んでいいのかもわからないぐらいひどい。

 そして村長自身いろいろ混じっているので、なにか認識を間違っていないだろうか。村長の年齢的にも、ゲームやアニメなんてあまり見ない世代だろうから、それでも一生懸命やってます! みたいな雰囲気が感じ取れて、妙に哀れに見えた。



「あの村長……大丈夫ですか? むしろこれドッキリですよね? 地域協力隊員歓迎のドッキリとかいって、俺たちを馴染ませようと考えたものですよね」



 ……ついそんな言葉が出てしまった。その俺の言葉を聞いて、村長はふかーくため息をついた。



「そうだったらどれだけよかったものか。姫が魔王にさらわれたのも、お主が勇者なのも本当の話なのだ」

「はぁ……」


 俺はかなりドン引きした。

 だが、後ろの2人。キャー!! とかウオオオオオオ!! とかうるさいよ。


 ここは異世界じゃねぇっての。



「勇者よ、お主に姫を救ってもらうことと、モンスターを殲滅してもらうことを、ぜひとも頼みたいのだ。勇者しか魔王を倒せるものはおらん!」


 なんど見てもやっぱり碇ゲンドウチックな村長は、俺にそう懇願してきた。

 その俺は頭をかかえたのだが、タローはなにやら村長に向かってYESを即答していた。


「ああいや、君は勇者の仲間であろう? 君には聞いておらんよ」


 タローは村長の言葉を聞いて、一気にテンションがダウンしていた。


 どうやら話しかけるとかいう行動は、タローが心の中で勝手に俺を下僕認定し、その俺にタローが命じてやらせていたという認識のようだった。

 なんて尊大なヤツなんだ。


 ……でも、どうにも俺が返事しないと始まらないようなので、仕方なく村長に返答する。



「このふざけたお芝居が終わるのなら、さっさと魔王とやらを倒してきますよ」



 俺のその言葉になにかグサッとダメージを受けた村長は、3分ほど沈黙のあと再び姿勢を碇ゲンドウに戻し、


「無事、姫を助け出したあかつきには、勇者に姫を嫁がせよう。だから頑張ってくるのじゃ勇者よ」


 はぁ?

 そりゃ彼女いないけど、いきなり結婚っすかお義父さん。


 つい喉まで声が出かかっていたが、なんとか飲み込んだ。

 だが、その言葉に予想以上にダメージを受けていたのが、あかねんであった。


 俺の背中に突っ伏してうううううう、と声をあげている。そして次第に背中は冷たくなってくる。

 え? なにか涙とか鼻水とかよだれとかそういう液体が俺の買ったばかりのスーツについてない? これまだ一着しかないんだけど。


 タローに俺の背中を確認してもらうように頼んだら、ジトッとした目を俺に向けてくるだけだった。


 もう、めんどくさいな。こいつら。

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