第53話 アジト
「和哉、そっち行ったぜ。あとはよろしく」
「りょーかい。面胴小手っ!!!」
単純極まりない攻撃を繰り返してくるサイクロプス。
最初は、大きさと単眼の気持ち悪さで怯んでしまった。
だが、攻撃をよく観察すると大振りで棍棒を振り回してくるだけのでくのぼうだったので、ミカゲが攻撃し、最後に俺が面胴小手をやるという連携で十分だった。
あかねんは手が空いたぶん、少年に冒険の話やオタク話をしているし、タローはシアンと何か話している。
たまにタローが落ち込むしぐさをしているので、シアンがクズとかカスとかをタローに言ってるんだろう。
手際よくサイクロプスを人間に戻し、その人をロープでふん縛って転がしていく。
お面はもちろん回収。
アジトに入って4時間。とうとう2階の一番奥の一部屋を残すだけとなった。
「ふーー、やっとボスだな和哉」
「うん、結構かかったねミカゲ」
総勢26匹のサイクロプスを脱モンスターした。これは人力ではハイスコアじゃないかな。
ペンションHayashiの大広間でのシアン開放はチートすぎるから、ノーカウントね。
「お、最近見てなかったけど、結構レベル上がってんな俺ら」
え、マジで!?
俺も急いでスマホを確認すると、レベル85まで上がっていた。
……ごめん大和田さん、レベル40から全然スマホ、みてなかったわ。
いろいろ技も追加されてたけど、オレダヨ詐欺のアジトも残す一部屋だけだし、ボスも単純バカだろう、と思い、新しい技を確認しないまま俺たちは最後の部屋の扉を開けた。
「ん? 誰もいねーぞ」
普通の部屋。
というか何も置いてないガランとした部屋。
トイレも風呂場もベランダもチェックするけど、ボスらしきものはどこにもいなかった。
「も、もしかして、雑魚が大きかったから、ボスは見えないぐらい小さい、とか」
タローが言う。
そうだとしたら、見えないぐらい小さい人間を脱モンスターするのは難しいぞ?
「ち、めんどくせーが、もう一度雑魚部屋を片っ端から調べるしかねーか」
ボス部屋をひとまず出よーぜ、とタロー、ミカゲ、俺そしてシアンの並びでふたたび探索するために玄関まで歩いていったとき、
「や、やめて……」
震えるあかねんの声がした。
俺たちは玄関へ続く狭い廊下に1列になっていた。
一番玄関に近い位置取りをしていたタローは、身長が高いミカゲが目の前に立っている形になり、部屋を見ることができずに騒いでいたが、それどころではなかった。
部屋の中央に立つ、あかねんの首元には……ナイフ。
そのナイフを突きつけているのは、先程の詰襟の少年であった。




