第49話 育三、打たれ弱し
「くそぉ! 俺はなにを努力してもダメだったんだ~、ううっ」
その男は、気持ちをぶちまけるどころか、食べたものまでぶちまけていたので、大広間はひどい有様になっていた。
現在のその男は、涙と鼻水をぶちまけて、泣き上戸になっている。汚ねぇよ。
その男が言うには、宝くじがドーンと当たったその資金を元手に、ペンション経営で儲けを出し、林ランドというテーマパークを作る予定だったらしい。
だが、バブルの崩壊により、ペンションが落ちぶれて、それでもしばらく細々と営業していたのだが、資金難と暇で生活が逼迫する中、リカちゃん人形収集などの趣味をやめることが出来なかった男は、それまで支え合ってきた妻や子供に愛想を尽かされ、しまいに妻と子供はここを出ていってしまった。
その時点でペンションは閉館。
男、林 育三は、元々好きだった人形趣味へと傾倒していくことになった。
「こいつら……文句も言わずに俺の言うことだけを聞くんだぁ~」
そんな育三に、人一倍厳しい視線を向けていたミカゲは、シアンにこっそりと耳打ちする。
こくんと頷くシアン。そして、
「クズ」
シアンが育三に罵倒するような発言をする。
「だらしないよね」
あかねんもミカゲに言われ、どんどん女性2人は育三を罵倒する。
「カス」
「逃げられ男」
「ケシズミ」
「能無しっ!」
「ウンk……うっ」
シアンがひどい言葉を吐く前に、俺はシアンの口をふさいだ。
……女の子がそんなこと言っちゃいけません!!
そんな2人の罵声に、育三は立ち直れないほど、落ち込んでいた。非常に打たれ弱すぎるな……育三ちゃん。
「おい、おっさん、自分で自分がどうしようもねぇなら、なにか変えなきゃなんねーよな? わかってるか?」
ミカゲが育三に優しく問いかける。
厳しい絶望感を先に与え、そこに温かく救いの手を差し伸べるミカゲ。
……うん、ミカゲは飴と鞭で育三を説得してるんだな、これ。
「は、はいっ……でも、どうすれば……」
「最初っから根性叩き直さなっきゃ無理っしょ。女の子に罵倒されたぐらいで泣いてるようじゃ、男としてどうかと思うぜ?」
「そ、そうです……よね。自分を変えたいです!!」
目をキラキラと輝かせ、ミカゲを仰ぎ見る育三。
……あ、もうミカゲの手中だわこれ。堕ちたわ。
決意を述べる育三ちゃんの肩を、ミカゲが抱く。
ぱっと見た感じだと、おっさんに肩組みしている失礼な金髪若造だけどね。
育三が落ち着いたあと、ミカゲは恵奈ちゃんのパパへ、
「あ、社長、これから紹介するヤツ、ガンガンこき使って下さい。ええ、あそこの下水工事でもいいっすよ。なにさせてもオーケーなんで」
と電話していた。
ペンションHayashiから戻ったときには、もう夕方。
ミカゲは育三と一緒に、恵奈ちゃんのパパのところへ向かったらしい。
……手際がいいなあ。
今日のタローは最後までモゴモゴしていた。
……お前今日なにもやってないだろ。




