第32話 空の谷ニュータウン
村の中でもまだ活気があると言われる、新興住宅地がある空の谷ニュータウン。
文字通り、高台にある住宅地でキャッチフレーズは「空に住もう」である。
いやこれ、単に山を開発して住宅地にしただけだろ。
その、空の谷ニュータウンは100棟の家が立ち並ぶ……10年前には人気だった住宅地である。
そんな空の谷ニュータウンの中に、石田さんちはあった。
建ててそんなに年数が経っていない、真新しそうな白い壁の家ではあるが、庭も玄関も荒れ果てていて、なにかもったいない家であった。
ピンポーン!
玄関の手前に乱雑に投げ捨ててある三輪車や、子供用スコップなどを避け、玄関チャイムを押す。
スッと静かに玄関が開き、中からおどおどした感じの顔色の悪い母親がでてきた。
「な、なんの用でしょうか?」
「あ、あの俺……勇者でして、みよちゃんにこちらのことを伺ってきたのですが」
「………そう、入って」
外は明るいのに、この家は雨戸を落としてあるみたいで、真っ暗である。
「中ボス、いるんですよね……ここ」
こわごわとあかねんがあたりを見回す。
掃除もしていないらしく、家の中はホコリまみれである。
今回ばかりは、雰囲気がまったくもって、幽霊のソレである。
「ふ、ファントム系の敵出ますよね、ここは。そ、そんな雰囲気です」
タローがデカい声でいきなり話し出す。
母親も含めてタロー以外の俺たちは、びっくりして多分30cmは飛び上がったかと思う。
さらに2階から、ズズーン! という鈍い音が聞こえる。
「こら、バカ! タロー。咲ちゃん寝てるんだから、静かにしなよ」
「あっ、ご、ごめんなさい」
きっとあの鈍い音は咲ちゃんなんだろう。
もうすでにコスプレ完了してるのかな。
今回も恵奈ちゃんみたいに本格的な演出が見られると思うと、すこしワクワクする。
「あ、あの……やっぱり帰ってもらってもいいですか? 咲も、そのほうがいいんでしょうし」
母親が2階に上がる途中で、なにか躊躇した様子になった。
これは深い事情がありそうだぞ。
だが、ここは俺たちが行って、解決しなければならないのだ!
「俺らにまかせてください。では、始めるぞっ!」




