第27話 紫色の光
俺たちが石に触れたとたん、石にまとわりついていた紫の光が、田舎村全体に広がった。
その光景は妙に神々しいような、禍々しいようなものであった。
そのとき、ヨネばあちゃんから、男の声が聞こえた。
「クックック、よくぞ封印を解いてくれた、勇者よ」
その声は地の底から響くような低音で、ヨネばあちゃんは誰かに操られるように、ひきつったニヤニヤ笑いをしている。
「どういうことだ、これは!」
俺がいち早く異変に気づき、ヨネばあちゃんを操っている男へ質問する。
「おまえ、鈴成の子孫だろ? あんたがここに来て石を触らないと俺の呪いは完成しないんだよ。フフフ、よくやってくれた」
そういうと、ヨネばあちゃんは、祠の脇に立つ。
「封印を解いたから、おまえらは俺を阻止するしかない。でないと田舎村が消えることになるぞ。せいぜい頑張ることだな、勇者」
ヨネばあちゃんは一歩下がる。
「だめだ、ばあさん!」
ミカゲがヨネばあちゃんを追って手を伸ばすが、するりとその手を抜け、ヨネばあちゃんはかき消えるように下へ落下した。
バキバキッと大きな音を立てて落下するヨネばあちゃん。
俺、あかねん、タローは蒼白になるが、ミカゲはヨネばあちゃんを追って崖を飛び降りる。
「おいっ、ミカゲ! 大丈夫か」
硬直していた俺は、ミカゲが飛び降りたと同時に硬直が解ける。
そして、ヨネばあちゃんとミカゲが落ちた場所へ駆け寄った。
下を見たら、崖はなだらかでヤブがかなり生い茂っており、そのヤブがクッション代わりになって、俺たちのいる見晴台から2mぐらい落ちたところに、ヨネばあちゃんとミカゲは引っかかっていた。
「いてっ! 棘があるぜ、このヤブ」
ヨネばあちゃんを抱えて、ミカゲは崖を這い上がってきた。
細かな傷はあるけど、ヨネばあちゃんもミカゲも無事だった。
ヨネばあちゃんを平らなところに寝かせ、あかねんがヒールをヨネばあちゃんとミカゲに施す。
「あれ~、わし落ちてたのか~」
ほぼ傷を治したとき、ヨネばあちゃんは気がついた。
そして、ここに俺たちを連れてきたことはすっかり記憶がないとのこと。
途中から魔王に乗っ取られて、操られていたのではないだろうか。
「でもまぁ~、こんなとこ、忘れとったなぁ」
キョロキョロと祠と景色を見回すヨネばあちゃん。
ヨネばあちゃんの連れ合い、旦那さんが亡くなる前まではここも手入れしていたが、ヨネばあちゃん1人になってからは、ずっと立ち入ってなかったそうだ。
俺たちはそのあと祠を調べてみたり、石に再び触ってみたりしたが、なにも起こらなかったので、山を降りることにした。
ヨネばあちゃんはミカゲが背負って降りてくれた。
「では、またなにかあったら来ますので」
ヨネばあちゃんに挨拶をして、家を去る。
途中にある山本商店までヨネばあちゃんが崖から落ちそうになったショックと魔王にうまく唆されたという事実で、みんな無言だった。
山本商店でジュースを買い、そこのベンチに座って、なんとなく一息ついた感じになったので、それからぽつりぽつりと、さっきの出来事をみんなは口にし始めた。




