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第144話 復旧

 俺たちが忍成村に滞在したのは、おおよそ2週間。

 龍脈から戻り、からくり屋敷を出たところで待ち構えていたのは、紫さんだった。



「ねぇ、早く田舎村につれていってよ。もう待ちきれないわ」


 紫さんはそのあと俺たちを招いて、からくり屋敷のばあちゃんのところで食事を出してくれた。そんな紫さんの腕前は恵奈ちゃんレベルで美味しい料理だった。疲れきった俺たちの胃を、美味い料理で癒やしてくれたのだ。


「そりゃやるときはキメるわよ。学生時代はレディースで番、張ってたしさぁ。……でもね、オンラインゲームだと可愛い女の子とかエルフを演じられるのよね。あの快感が辞められなくてでこんな歳になっちゃったけどさ、これから育三様の元に嫁ぐから結果良しよ!」


 通りでヤンキーっぽいところが抜けきっていないのか。


 そのとき、ミカゲが小さなメモ紙を紫さんに渡す。


「わりいな。まだ車が直ってねーからよ。先に行っててくれ。それ、育三ちゃんちの住所と電話番号な。一応俺から連絡しとっけど、途中で連絡をいれてくれ」


 わ、わかりましたわっ! と、元気よく紫さんは去っていく。

 アレはもう、今すぐ育三ちゃんちに押しかけるだろうな。



 俺たちが紫さんの料理をごちそうになって、からくり屋敷から帰ってきた頃には忍成村の電話も復旧し、俺たちもやっと田舎村の人たちに連絡が取れた。



「え! もう忍成村の異変の原因を突き止めて治しちゃったの!? 鈴成くんは仕事が出来るなぁ。それでさ実はまた別のところからも依頼が来てるん……」


 と大和田課長がなにやら話している最中に、電話を切ってやった。

 少し休みぐらいくれよな。



 青年団が戻ってきたことにより、閉まっていた整備工場が開いたので、そこでミカゲの車のパンクを直してもらった。

 それにより、俺たちの帰る目処がついたのだった。



「よし、決めた!!」


 彩友香はダダっと診察中の源蔵じいさんに駆け寄り、そしてお願いをする。

 ちなみに患者はハンター会長で、腰を痛めて診察に来ていたらしい。



「じいちゃん! お願いがある! あたしも和ちんたちと一緒に田舎村に行く!」


 その直後、ハンター会長からごきり、というすごい音と、若干遅れて会長の悲鳴が聞こえた。


「ば、ばか! 診察中に私事を話すな! ……あとで聞くわ、んなもん」



 *



「そうか、明日帰るんじゃな? いろいろと世話になったが、まだなにも返しておらんのになぁ。ありがとうな」


 乾杯しながら、源蔵じいさんが言う。

 ついでに今日はハンター会長と玉三郎さんも同席して、ちょっとした飲み会になっていた。


「そう言えばホッホッホッって笑う方もハンター協会に入っていませんでした?」

「む、それは佐助じいさんだな」


 ハンター会長が源蔵じいちゃんを小突く。


「……わしの父親じゃ。つまり彩友香のひいじいちゃんじゃな」



 懐かしい目をして源蔵じいさんは話す。


「昼間は医者、そして影の稼業で忍者をやってたとか、好き勝手なことを言いおったじいちゃんだったなぁ。そういや勝ち気なところが彩友香とよう似とったわ」

「え、あたし佐助じいちゃんの顔、知らない」


 結構長老っぽかったよ。おだやかそうだったし。

 と俺は心の中で思う。


 でも、2014カレンダーにはくどい顔で、体毛がもっさりな男性が載っていたのだった。あれぇ?



「忍法:毛遁の術、なんて冗談を言ってたからなぁ。面白いじいちゃんだったわ」


 そしてしばらくみんなでわいわいと飲む。

 今日の彩友香は飲むとすぐに酔ってしまうので、お酒を控えているようだった。



 ハンター会長と玉三郎さんが帰って、源蔵じいさんと俺たちで再び飲み直す。俺も今日こそは記憶がなくならないよう、ちょびちょびお酒を舐めている程度だ。



「彩友香、ここに座りなさい」


 片付けをあらかた終えた彩友香は、源蔵じいさんの前に黙って座る。

 源蔵じいさんはぐいっとどぶろくを飲み干し、意を決して話す。


「よかろう。ずっとこの村に居ても勉強にはならないからな。それにもしもまたストッカーにあってもその者たちが護ってくれるんじゃろう? わしじゃもう彩友香のことは守れんからな」


 そう言って、源蔵じいさんは俺の目を見る。

 俺はその視線に対し、しっかりと頷いた。


 ……まぁ、この場合こうするしかないよね。正直、半分以上ノリだったけど。



「あ、ありがとう。じいちゃん」


 そして彩友香は明日、出発するための準備をするのに、自分の部屋へと戻った。その彩友香に桔梗も「お手伝いしますっ!」とついていった。



 そんな彩友香を見て、源蔵じいさんは「寂しくなるなぁ」とつぶやいていた。

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