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第11話 フィールド

 のどかな田舎道を、3人でとぼとぼと田舎の爺様が散歩をしているような速度で歩いている。


 いやまあ、現在、俺たちは勤務中なんだけれどね。



 役場を一通りぐるっと回っても、叱責すらする人がいなかったので、外に出ることにした。

 役場の職員たちは、慎重に全ての職員と会話している俺たちを見て、いいからさっさとここから出て問題を解決してこい、という目線でみてくるようになったから、という理由もある。


 たしかにそうだろう。

 俺たちがずっといたら職員は業務に関係のないことを無理やりしなきゃいけなくなる。しかも同じ言葉しか話せないんだから厳しいだろう。


 つまり、俺たちがいなくなれば、通常業務に戻れる。


 「朝だけ顔出せばあとは何をしても自由だから。地域協力隊員だし!」みたいな証言も取れたので、俺たちの勤務はそんなものでいいのだろう。


 出るときにアイテムとしてもらった、役場の身分証を付け、俺たち3人は農道を歩いていた。

 途中、トラクターで田んぼを耕している人にも話しかけてみようかと思ったが、忙しそうなのでやめておくことにした。



「そうだ、以前に行ったコンビニにアイテムらしきものが売っていたんだ。あそこならなにかわかるかもしれない」


 以前、たけのヤリを売っていたコンビニへ行こうと、俺が提案する。

 あかねんとタローは手がかりがないため、俺の意見に賛成した。


 そして、俺たちはしばらく農道を歩く。

 途中、向かい側から、スライムのお面をかぶった人が歩いてきた。


「え? なんですか、あのお面……」


 最初に見つけたのはあかねんだった。

 30代と思われる、そこそこの身長の中肉中背の男が、妙なスライムのお面を頭に斜めがけにしていた。

 それはまるで屋台で買った戦隊モノお面や魔法少女お面的クオリティであった。お祭りならまだしも、普段の真っ昼間からそのお面とか、ないでしょ。


 そのスライムさんは俺たちを見つけたら、急に走って一目散に向かってきた。


「おいてめぇらーーー!」


 いきなりタローに殴り掛かるスライムさん。

 スライムさんは俺より身長が低いし、女子のあかねんをいきなり殴るのは30代の男性には厳しそうだし。だからタローに行ったんだろう。


「い、いたいいたいいたいたいたいいいいっ!」


 ぽかっと頭を殴られ、ものすごく大騒ぎするタロー。

 いや多分スライムさん本気じゃないし。

 いきり立ってきてはみたものの、人を殴るということと罪悪感の狭間で罪悪感が勝ってしまった、そんな様子の拳だった。


「すみません。事情はお察しします。早く魔王とやらを見つけて呪いを解きますので、耳鳴り、我慢してください」


 俺はペコっと頭を下げ、スライムさんにデコピンをかます。

 衝撃で耳鳴りが取れるかも? と思ったとっさの行動である。


 そうしたら、それまでいきり立っていたスライムさんは、すっとおとなしくなった。


「いや……こちらこそいきなり殴りかかってすまない。耳鳴りのおかげで、仕事をここ2日休んでいてな。仕事はたまるし、耳鳴りで気が狂いそうだったんだ。でも、デコピンを受けたら、なにかスッとして耳鳴りがなくなったよ。ありがとう」


 そしてスライムさんは、来た道を戻っていった。

 なんだ、スライムさんいい人じゃないか。


 そしてわかったことは、原因を作ったのは俺たちじゃないのに、こんなふうに逆恨み的なことをされるという事実。まるで苦情係じゃんこれ。


「でも役場ってこんな感じのこと、多いですよね。窓口で理不尽に怒鳴ってる人とか見たことありますもん」


 あかねんがそう話した。



 ……もしも、この冒険が終わっても、こんな仕事をしなきゃいけなくなるのか。

 うっすらと将来を考えて、ちょっとへこんだ気分になった。

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